Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

小国家存続危機と中国覇権阻止

 コロナウイルスは先進国でのエピデミックを経て、今後は途上国に広がっていくことになる(国連事務総長「強力な国際協力必要」途上国の感染拡大に危機感 | NHKニュース)。既にいくつかの国では感染者や死亡者が拡大しつつあるが、医療衛生条件が劣悪な途上国では、感染の広がりを抑制することは困難であると予測される。特に人口が少ない国々は、国家存続すらが危ぶまれる状態に陥る可能性は高い。例えば、イタリア北部に位置するサンマリノサンマリノ - Wikipedia)は人口が3万人強の小国家。実質的にはイタリア経済に依存しているが、既に32名の方が亡くなり、感染者も266名に達する。人口比で言えば死者はおおよそ0.1%(日本で言えば12万人程度に相当)、感染者は0.8%(日本で言えば100万人相当)となる。日本でそれだけの感染者が出ると、おそらく経済は麻痺してしまい、再開にも大きな困難と長い時間がかかるだろう。イタリアの支援を受ければ再建可能だろうが、イタリアやスペインはこの状態に近づきつつあることが大きな問題である。同様のケースでは、モナコ公国モナコ - Wikipedia)もある。感染状況や死者数サンマリノほどではないが、既に国王が感染するという状況に陥っている(モナコ国家元首 新型コロナウイルスに感染 | NHKニュース)。

 それ以外、太平洋やインド洋には数多くの小国が存在する。大陸から隔離されているが故に、まだ感染者が出ていない国家(例えばナウルナウル - Wikipediaなど)もある(新型ウイルス、世界で最後に到達するのはどの国? - BBCニュース)が、逆に言えば一度感染者が出ると対応しきれない可能性が高い。そうした国々は、元々中国から軍事拠点を得るために援助を受けていることが多い(南太平洋と中国の海洋進出/黒崎岳大・太平洋諸島センター副所長に聞く:朝日新聞GLOBE+)。もちろん、その関係を構築しなかったパラオのような国もある(パラオの新型コロナウイルス感染者ゼロと、背景に見える「中国」との関係(宮路秀作) - 個人 - Yahoo!ニュース)が、現状をいつまで維持できるかと言われれば難しいのではないか。特に、政治中枢に感染者が増加すると国家の体制維持すらが困難になるケースも想定できる。

 

 おそらくはこの状態が続けば中国が救済の名目で動き出す(すでに動いている)ことは間違いないだろう(ファーウェイ、新型コロナと闘うガーナにビデオ会議設備寄贈 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。途上国だけではなくイタリアやフランスにもマスク外交を仕掛けたり(中国のイタリア支援は「マスク外交」か、中国紙が反発「ならば中国が提供したマスクを使わなければ良い」 (2020年3月13日) - エキサイトニュース)、既に露骨に見えるほどいろいろな手を打ち始めている。ただ、その結末は最終的に実質的な属国化につながる道であり、中国による世界覇権のための拠点づくりであるのは明白だろう。だからこそ、その前に日本やアメリカなどが協力して予防救援に出向くことが重要となる。

 中国はそろそろ徹底的な人民管理により、社会活動や生産施設等の再開(新型コロナウイルスの影響が残るなか、中国は徐々に日常を取り戻そうとしている|WIRED.jp)を始めた。共産党政府の予定通りに進む復旧はある意味驚くべきことだが、欧米諸国が混乱の極みにある間に手を打とうという狡猾さを持ち、独裁国家だからこそできる強引さを最大限生かしている。人民の命が安いからこそ可能な方法と見る。そして、ロシアも同じような道を進み始めている(ロシア、「コロナ対策」で進む監視強化…スマホで位置把握 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン)。だが、日本や欧米の人たちは一部を除きそんな社会を望まないし許容もできない。

 

 欧米が非常に大きなダメージを受けているからこそ、日本は世界において重要なポジションにいる。今後、権力拡大の誘惑に囚われた中国は間違いなく、世界中に手を伸ばし始める。それは、内実国内景気が危ない状況にあるからこそ行われる問題でもあり、国内の不満を外にそらすための方策でもある。すなわち、小競り合い(局地的な紛争)は想定内だと考える。もちろん、中国内も一枚岩ではないため、それが完遂されるかと言えば絶対ではないが、チャンスとなれば大きく歩みを進めるだろう。

 本当は、国会でつまらぬ揚げ足取りに終始するよりも、こうした世界的な問題の議論をこそを行ってほしい。まあ、中国から様々な利便を図ってもらっている人たち(政治家、メディア、民間企業等)の暗躍により、それが容易でないのは承知している。

 欧米が再び力と秩序を取り戻せば、中国は容易には動けなくなる。特に、アメリカからの金融を用いた攻撃には耐えきれない。だからこそ、リーマンショックの時と同じように世界復活の原動力となることで、実質的な利益を享受しようとなるだろう。そしてその中に様々な戦略が紛れ込んでいる。金と恩義と篭絡により。

 

 その全てを日本が防げるはずもない。ただ、小国を応援することは可能である。だからこそ、小国の実質的な存続を守るための取り組みを、日本が主体的に進めてもらいたいと願うのだ。

否定から入る人

 社会に出れば本当に多種多様な性格や考え方の人たちと出会う。大金持ちで余裕があるとか作家や芸術家で成功して家に引き籠らない限り、私たちは収入を得るためにどこかで誰かと会い仕事をしなければならない。接客業のように不特定多数と会うケースもあれば、社内の人間との頻繁な打ち合わせを行う人もいる。そして、多くの人と会う中には「この人と一緒に働きたくない」と思わせる人もいる。高に専門性と能力を持っていながらも、他者から敬遠される人である。パターンとしてはいろいろとあるだろう。他者を見下すような人や、責任を負わない人、面倒な仕事を人に押し付ける人、飲んで暴れて迷惑をかける人、セクハラ大好き人間、考え出せばいくらでも思いつく。許せる迷惑と許せない迷惑の境界は曖昧だが、「#イケメンに限る」だけではないボーダーラインがありそうだ。

 そんな中、私が注目しているのは「否定から入る人」。もちろん、他者を無条件に肯定すれば良いというつもりはない。そんな付和雷同型、あるいは太鼓持ちのような人を私は尊敬しないし、できればあまり近づきたくない。仕事でも勉強でも、間違った行動や考えを行っている人に対して、特に上司や教師はそれを注意し、修正を促すことが求められるし、時には同僚であっても同じ。だが、同じ注意するにしても妥当なコミュニケーションの取り方は存在する。その個人が取るスタンスの一つとして、「否定から入る人」が一定数存在している。

 

 この「否定から入る人」。論理的には、あるいは筋としては正しいケースが少なくない(その論理自体が不十分なこともある)。ところが、本来は正しいことを言っているにも関わらず嫌われがちになる。だから、本人は自分が間違っているとは決して思っていない。そういえば、立場が上の人から強く否定された人は、その衝撃により意気消沈する、あるいは強い反発をするケースをよく見る。その後のコミュニケーションで誤解により生じたわだかまりを解消する、ショック療法的な方法論を取る人もいるが、私が知る限り「否定から入る人」は事後のフォローをあまりしないように見える。

 要するに、自分の考え方は正しいのだからそれに従うべきだ。という強い信念のもとに行動している。信念の正当性を自分の行動で証明できる人はまだいい。例えば、会社の方針に従わないが、自分の信念に従い行動して最終的に結果を残すケース。テレビドラマや小説などによくあるタイプの物語。痛快であるし、自分の信念を貫く姿は格好良く、その行動や態度は尊敬に値することもある。ただ、その物語に登場するヒーローたちは他者(あるいは弱者)を辱めない。自分の考えを披露し他者を説得しようとし、力で押さえ込もうとする的に抵抗はするが、他者を「否定し」、力で従わせようとはしないのである。

 

 社会において、こうした状況を見るにつけ思うのだが、これはマウンティング行動の一種ではないかと。自分の優位さ、正当性を示すための示威的行動という訳だ。本人にはおそらくその自覚はない。正しい事を指導しているつもりなのは、多くの会話からもなんとなく想像がつく。周囲で見ている誰もがそれを肯定していなくても。ただ、第三者から眺めていると、本人の視野の狭さが気になってくる。局所においては正しいかもしれないが、全体で見た時には正しいとは言い切れない。さらに、他者に対して自分の正しさを理により説得できていない。

 むしろ、自分の意見に賛同する人が少ないことで、逆に自分の正しさを証明しようとより一層部下の行動を否定したりもする。また、自分が一生懸命努力していることを会話の中でアピールしたりもする。同意を取ろうという感じであろうか。絶対的な命令が必要な軍隊ならいざ知らず、現代の社会においてそれが通用する場所はそれほど多くはない。むしろ、パワハラとして訴えられる可能性が低くない。

 

 こうした人たちも、全ての行動が否定されるものでないことも、多くの人は知っているだろう。大部分の場面ではおおむね問題なく行動する。ただ、他者を否定する行動が無自覚に起こされる自分の存在感をアピールするための動きであると、その匂いが通常の行動においても嗅ぎ取れることは多い。おそらくではあるが、自己承認欲求が非常に高い人たちなのだろうと思う。私も承認されたいという欲求は間違ないなく持っているが、それは他者と自分を直接比較して得ようとは思わない。承認は、自分が行ってきた結果について代謝が下すものであるのだから。

 承認欲求に飢えている人は少なからず存在する。子どものころは先生や親から褒められることは素に嬉しかった。だが、相対的な評価で褒められるのではなく、絶対的な評価を求めるようになったのはいつからだろうか。私たちの承認欲求は一つではなく様々な要素により複雑に構成される。仕事における評価、人間性における評価、優しさにおける評価、家庭における評価、区分しようと思えば無数にあるが、その大部分は相対的な価値判断で評価される。「隣の旦那さんよりも・・」、「同期の誰々よりも・・」といった具合だ。受験戦争も出世レースもマクロでは絶対的な戦いだが、ミクロにおいては相対的である。

 そして、その相対評価に自分自身の評価の軸を置いてしまった瞬間、私たちは自己顕示欲に囚われ誰かを貶めようとしてしまう。特に、それが可能な相手(部下など)は格好の標的なのだ。

 

 議論において、否定から入ることもある。それはディベートのテクニックとしてもあるだろうし、明らかな相手の間違いをしてくするものであることもあると思う。だが、日々の生活においてそうならないように、常に注意しておきたいと思う。

危機対応と民族の本性

 マスクの強奪合戦が世界中で起きている(東京新聞:米、ドイツのマスク「強奪」か タイの空港で20万枚:社会(TOKYO Web)Turquía retiene un avión con respiradores para España)。ほんの少し前は、中国国内で起きたそれ(修羅場の中国、新型コロナで仁義なきマスク徴用合戦 地方政府が他の都市からマスクを「強奪」する異常事態(1/4) | JBpress(Japan Business Press))を笑っていた国々での出来事である。私自身も、中国に今回の世界的なパンデミックの責任がいくらか(ウイルス研究を漏らしたなら根源的かつ重大な責任)あると考えているが、目の前で起こっている危機的事態に対処して国民を守る義務は本質的に各国にある。問題が落ち着いた後にどれだけ中国を追求しようが構わないが、いま国民を守るのは国家の責務である。グローバル化経済的利益に目がくらみ、その準備を怠ってきたツケを先進国も今払っているところなのだ。

 現段階で、中国を揶揄したからと言って現在進行形の問題を解決などできやしないが(「ポケモン埋めている」と軽口 中国追悼式に仏TV記者―新型コロナ:時事ドットコム)、欧米人による東洋人蔑視の本性も徐々に見えてきた(ダルビッシュ、アジア系差別「怖い」コロナ拡大で不安吐露…今後も米国に残る方針)。一方で、中国がお礼に日本にマスクを送っているという報道がちらほらとあったが、実際は日本に輸出するマスクを接収(中国からマスクを出荷できない 中国側「規制なし」)しているのが実態である。さらには、世界中から医療関係物資を中国に送っていた(Chinese Company Sent Millions of Australia's Coronavirus Supplies to China - National File)。

 

 食糧危機についても、既にFAO(国連食糧農業機関)がアナウンスしている(新型コロナに続き「世界的食料危機」の恐れ、国連とWTOが警告:時事ドットコム)。更には、こんな情報も飛び込んできた(中国・雲南省、干ばつで100万人以上被害 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。元々、蝗害により東アフリカや中東、パキスタンでは食糧危機が生じているところ(バッタ大量発生、数千万人に食料危機の恐れ、東アフリカ | ナショナルジオグラフィック日本版サイト)に悲観的な情報が引き続き入ってきている。こんな状況のため、世界各国では食糧輸出を制限し始めた(日本農業新聞 - 新型コロナ拡大で食料生産国 自国優先し輸出制限)。いずれも国家の生存本能といえば良いが、本性を現した泥沼の争いと言えなくもない。それは国家単位でも、民族単位でも発生している。

 日本の食料自給率が低い(日本の食料自給率:農林水産省)のは既知のことだが、今後生じるであろう世界的な貿易の停滞は日本にも大きなダメージを与えることが予想される。コロナ禍が半年ほどで収まれば大問題には至らないかもしれないが、それ以上継続するといかに国民を生かすかという深刻な問題に広がりかねない。特に米中が経済戦争以上の反目をする中では、航行の安全性さえ担保できないかもしれないのだから。

 

 この感染症が収まるのかに関する私の考えは、治療薬が開発されない限り一貫して否定的なものである。中国のような徹底的な隔離(それに準ずるドイツや韓国のような検査と隔離)により一時的な時間稼ぎはできるだろう(「感染爆発は避けられない」...韓国・京畿道知事が「心の準備」を求める(徐台教) - 個人 - Yahoo!ニュース)が、おそらく経済がそれには耐えられない。時間稼ぎにも効果はあるが、最終的に治療法が確立されなければ延々続く経済消耗戦になる。そんな中、日本は経済と感染症対策の両立という難しい道を目指そうとした。これまでは検査が少ないこともあり世界的に少ない患者数(死者数)だったが、今後は難しいかもしれない(Hironori Funabiki on Twitter: "日本は第2波が各地に襲いかかっている状況。欧米から3月初旬に入ってきたのが広がっているということか?Second waves are hitting at multiple locations in Japan.… ")。これまで日本(韓国も含め)で広がっていたものと、欧米で広がっているウイルスの感染力が異なるのではという意見は一定の説得力を持っている。

 PCR検査増大については、検査員の充実と隔離政策がセットで賄わなければならないが、おそらくそれが日本では容易にできなかったのであろう。東京都の検査能力が340体/日という情報(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tosei/news/documents/20200324_01.pdf)があった。検査体制が不十分だという指摘はまさにその通りだが、今指摘しても体制の急な改善は難しいだろう(特に、質のいい検査員をどれだけ確保できるかの問題)。検査体制拡充の努力は最大限行いながら、限られた感染症対策のリソースを保持し、最も良い結果を導いてもらいたい。

 

 世界では国家をかけた生存競争が始まった。ウイルスとの闘いも重要な戦争ではあるが、国家同士の戦いも一種の戦争である。もちろん、国家の存続をかけたゼロサムの全面的なサバイバルではないが、間違いなく世界は大きくが混乱する。そんな時期だからこそできる謀略が存在する。諜報戦、恩売り、情報操作、デマによる混乱拡大、内部スパイづくり等々。最後には、世界の政治首脳へのウイルスによる攻撃。それで高齢の政治指導者たちがダウンすれば、野望を持つ国にすれば最高のチャンスを手にすることになる。目の前のウイルスだけではなく、世界は弱いところを突いてくるのだ。

 できることなら、日本政府と国会は下手な政局などに囚われず、しっかりとした危機対応をしてもらいたいと願っている。

コロナが変える社会

 コロナが変えたり、明らかにしたことを徒然に書いてみる。

 

〇引きこもりが社会カーストの上位に位置付けられたこと

 (大貧民の革命の様だ)

 

〇外で遊ぶより、家でゲームをするように社会から推奨されるようになったこと

 (子供たちは、そのうち飽きてゲームが嫌いになるかもしれない)

 

〇家にいる時間が長くなって、離婚・DV、その他の家庭不和が増えたこと

 (Social Distance[社会的離隔]は夫婦にこそ必要だと証明された)

 

〇政府が、どれだけ圧力団体・組織に雁字搦めにされているかが透けて見えたこと

 (優柔不断と言うより、皆が勝手なことを言い出したため収拾できていない)

 

〇欧米の先進性はまやかしだったこと

 (そして、隠れていた東洋人蔑視も露わになった)

 

〇在宅勤務やリモートワークが、それほど大規模にかつ自由に使えないこと

 (人[自分]はアナログな存在であると再認識できた)

 

〇ポリコレはマナーと同じで、緊急時には何の役にも立たないこと

 (知るのはよいが、依存すれば軽く死ねる ポリコレっておいしいの?)

 

〇経済に特化した戦略は脆弱だと分かったこと

 (EUは分裂かな? 日本も食糧・エネルギー安保を今以上に重要視すべき)

 

〇役所(大組織)が最大の正常性バイアスを持っていること

 (学校再開や転勤実施で感染拡散、入社式等で三密[集近閉]を構成)

 

自民党幹部が役に立たないこと、野党がそもそも政治に向いてすらないこと

 (これは前から分かっていたかも)

 

〇知性のないマスコミは害悪でしかないこと

 (結局、責任を取らない地位を認めていることが諸悪の根源)

 

〇テレビに何度も出る専門家が、暇な素人と大して変わらないこと

 (暇じゃなければ、テレビ局掛け持ちはできないよね)

 

SNSは思っていた以上に使えること

 (取捨選択は必要だが、想像以上に様々な知見に触れられたことに吃驚)

 

〇中国が冗談抜きで世界の敵に認定されそうなこと

 (戦争にならなければいいな)

 

〇権力批判のアーチストたちが、政府に補償を求めていること

 (安定した地位から政府を叩くのは楽しいよね)

 

〇芸能人やスポーツ選手の報酬が、今後激減しそうなこと

 (バブル崩壊かな)

 

〇社会が激変する時こそ、成功への最大のチャンスであること

 (それをつかめる人は少ないだろうが)

 

(追記)

〇政府に批判的な人ほど、政府に独裁的な強い施策を期待する傾向があること

 (気持ちはわからなくないが、危機には英雄を求めるのかな)

コロナ禍が示す中小企業の重要性

  コロナウイルスの蔓延による経済活動の停滞は、中国や一部欧米諸国のようなシャットダウン(他国に構っていられない~新型コロナ爆発的拡大で「鎖国状態」のEU(ニッポン放送) - Yahoo!ニュース)ではないものの、日本企業に対しても真綿で首を締める様に影響を与え始めている。観光業や特定のサービス業、イベント・ホテル、そして航空・クルーズ業界などは既にかなり大きなダメージを受けている。アメリカはいち早く2兆ドルの経済支援策を議決した(トランプ氏、2兆ドル規模の経済対策法案に署名 新型ウイルス - BBCニュース)が、日本は様子見と裏調整をしていて具体策はなかなか決まらない(新型コロナ「長期戦覚悟を」 状況悪化なら学校再開見直しも―安倍首相会見:時事ドットコム)。これは民族性もあろうが、感染状況のシビアさが異なっていることも背景にあるだろう。

 

 社会的混乱を収拾するための政策立案と遂行が第一ではあるが、今回のような感染症に対する社会システムの脆弱さについても同時に検討が進められている。この問題に対する認識はアメリカも日本も同じであろう。一つには公衆衛生や薬等については、基本的に自国で賄えるようにという考え(中国依存品、国内生産で補助金 マスクや半導体関連 :日本経済新聞)である。既にマスクや人工呼吸器については報道も出ているが、真面目に考えればかなりの生産拠点を自国に移す必要がある(焦点:医療用手袋が世界で不足、最大の生産国マレーシア封鎖 - ロイター)。これは、様々な投資を受け入れてきた新興国にとっても打撃と言える。

 同様の議論して食糧安保食料安全保障 - Wikipedia)もあるが、議論はされても対策にまで進まないのがこれまでの出来事であった。だが、今回の災厄を経て国民の理解も大きく進むであろう。加えて、いざというときの同盟国とのつながりを深めるブロック経済的な活動(環太平洋パートナーシップ協定 - Wikipedia)も活発化すると見る。アメリカのように鎖国の可能な国ならともかく、日本の場合にはエネルギーと食糧が100%賄えない国家はこうしたグループ化は不可欠である。

 問題は、どこと組むのかということ。価格や便利さで中国への投資を行ってきたが、そのリスクをまざまざと見せつけられた形である。更には、経済的な効率化のみを追求するグローバル化に対する反省も、今後に活かされると思う。

 

  さて、内製をする場合にはそれが大企業のみで賄えるのかという問題がある。大企業は効率化(生産性)追求のため、コストをギリギリまで切り詰め余裕のないシステムを求めてきた(「日本は生産性が低い」最大の原因は中小企業だ | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。一方の中小企業は、社会構造的な位置づけからコストを切り詰めることが難しい。もちろんIT化の推進等により、今よりも効率化が進めらえないわけではないが、それで日本の労働生産性が飛躍的に伸びるとは思えない。私は労働生産性を追求することの全てを否定しないが、それが社会の豊かさや生活する人の豊かさを代弁しているとは思わない。

 効率化の権化であるアメリカには、社会福祉に浴することができない人(よくある質問 - 健康保険USA)が数多くいるのを今回目の当たりにした人も多いだろう。すぐに首を切られ(米企業、人員削減に着手 航空・観光関連―新型コロナ影響:時事ドットコム)、路頭に迷うシステム(米国で新規失業保険申請件数が3月第2週に急増、今後さらに増える可能性(米国) | ビジネス短信 - ジェトロ)を効率的と言えなくもない。だが、それをその国に住む人々が好むのかはまた別の話。加えて、日本でも余分と言われたCT機器がコロナ検査に生きるなど、人間社会という歯車には多少の遊びが必要である。普段は無駄と思われるものでも、遊び(バックラッシュ (機械) - Wikipedia)を無視(削除)することの怖さを思い知ったのではないか。

 

 確かに、大部分の中小企業は技術革新にも寄与せず、独自技術開発にも不熱心かもしれない。後継者不足で消えていく企業も少なくないし、後継者がないのは利益が出ないためであるというのも理解しやすい。だが、そういう企業が培ってきたノウハウも生きる時がある。あるいは社会の緩衝材として機能するケースがある。更には、地域社会を構成する一要素であったりもする。全てを救えと言うつもりはないが、国としてどの様な中小企業を保護するかと言う議論はあってもよい。成長視線のみではなく、ディフェンシブな視点も含めて幅広く。ただ、こうした内容は護送船団方式などと、これまで散々批判されてきた政策手法でもある。日本の産業・社会安保という視点である。

 グローバル化という経済効率化一筋の社会ほど、イレギュラーに弱いものはない。今回のコロナ禍でも、社会的に受ける損害は日本よりもアメリカの方が多いのではないかと個人的には感じている。特に、目に見えるものだけではなく心理的なものも含めて。何度かここで書いてきたが、「進化」という言葉は言い換えると「特化」でもある。特定の環境に最適化していくのが進化と呼ばれ、その環境が続く限りは最も効率的な姿に変わっているが、環境が変わった瞬間に最適ではなくなる。ギャンブルの一点賭けのようなもので、そのスタイルが通用する限りの運命である。超長期のスパンでの視点を社会構成のベースに据えなければならない。かつての社会はそれを行っていた。

 

 日本の不況は、大企業中心の国際間競争を行う体系の中で進んできた。これは、ある意味やむを得ない流れだったかもしれないが、現在アメリカが取り組んでいるような産業の国内回帰を政策として掲げれば、少しは防げたかもしれないという気がしている。

 小さく、立ち回りが容易な企業だからこそできるチャレンジがある。ベンチャー系企業かもしれないし、歴史ある企業かもしれない。時には大企業により買収されることもあろうし、地元に根付いて生き続けるかもしれない。だが、大きな利益はなくとも続ける企業があることで日本社会の柔軟性が担保できるとすれば、その方向性を日本政府が定めて活かすことも考えなければならない。何も、全て新しい産業を生み出すだけではないのだ。

 逆に、中小企業にも頭を使うことで生き延びられるという道筋や、可能性が広がることを期待したい。結果として、それが中小企業の競争力や社会的価値を再認識させる。現在のサプライチェーンが大企業中心に組み立てられ、中小企業が追いやられてきた。繰り返しになるが、世界的な競争を考えるとある程度やむを得ないが、国家が最も栄えると感じられるのは中小企業が元気な時であると私は思う。それが国民に好況感を実感させる。

 今回のコロナ危機は、全ての産業を過度の競争にさらしてはいけないという明らかな証拠になったのではないか。全ての中小企業を救えと言うつもりはないが、何らかの新たな国家戦略としてのスクリーニングを確立すべきだろう。

現時点での政府支援について

 現金給付に対する声が大きいが、資金繰り支援については政府は既に様々な手を打っている(経済産業省 新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ:https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf)が、問題はメディアがそれをほとんど報道していないことがある。これらを見ると既存の制度を大幅に緩和したものが多い。また、ワンストップではないため自分に適した融資・補助制度がどれかわからないというのもあるだろう。また、貸付しかないと敬遠する向きもあると思う。ただ、支援制度自体は欧米のそれよりも充実しているようにも見える。マスク2枚と叩いている人は、きちんとホームページを見たほうが良い。

 PDFのページ数が44ページもあり、読み込むのが容易ではないと思ったので、私なりに個人事業腫やフリーランス、あるいは零細事業に該当しそうな部分を抜き出して書いてみたい。なお、税金やしゃきあ保険、電気代やガス代の猶予制度もある。ただし、ここに含まれない制度もいろいろとあると思う。まずは、何が可能かを調べてみるとよいだろう。

 

〇資金繰り支援(売上高5%以上減少)

 一般保証(2.8億)+セーフティネット保証(2.8億)+危機関連保証(2.8億)

 

〇無利子・無担保融資(直近1か月の売上高5%以上減少)

 運転資金・設備資金(中小事業:3億円、国民事業:6000万円まで)

 据置期間:5年、貸付期間:15年(運転資金の場合)

  金利は国民事業で1.36%→0.46%に引き下げ、他の制度を組み合わせて実質無利子

   ・・・ただし、無利子の場合の国民事業の限度額は3000万円(無利子期間3年)

   ・・・その他さまざまな貸し付けあり

 

〇補助

 ・ものづくり・商業・サービス補助(設備系の投資等)

   ・・・補助上限 1000万、補助率(小規模)2/3

 ・持続化補助(販路開拓、ビジネスモデル転換等)

   ・・・補助上限 50万、補助率 2/3

 ・IT導入補助(テレワーク対応等)

   ・・・補助上限 450万、補助率 1/2

 

雇用調整助成金

 ・労働者の雇用維持を図った場合の賃金補助等

   ・・・100日分(1年)、中小企業の場合助成率90%:欧米よりも高率

 

〇個人向け緊急小口資金

 ・個人事業主 20万円以内(据置 1年、返済期間 2年、無利子)

 ・生活支援 20万/月以内(単身は15万/月)、ただしトータル3か月以内

   ・・・(据置 1年、返済期間 10年、無利子)

 

 これで十分かと言えばそうではないかもしれないが、これにより一時的に事業継続が可能になるケースも多いだろう。数日前に書いた考えは、これをバラバラした制度で行うのではなくワンストップで実施し、その上でダメージの程度に応じて返済免除があることを明示したほうが良いというものであった。

 事業は、一度止めてしまうと復活が容易ではない。繰り返しになるが、将来的にこうした借り入れの一部を免除する方向で検討しているとコメントできれば良いのだが、それには財務省が徹底的に反対するであろうことは想像に難くない。事業によって受けるダメージがかなり変わってくるだろう。それを事前に予測するのは大変困難である。だからこそ、まずは貸付、そしてその一部(場合によれば全部)を返済免除する仕組みが重要ではないかと思う。

コロナウイルスを巡るいくつかの嫌な情報

 世界中がコロナウイルスと戦争をしている。現在、イタリアとスペイン、そしてアメリカが最もホットな戦争地域である(3/31現在で一日当たりの死者数が700人を超えている)が、そのすぐ後にはフランスとイギリスが追いかけており、さらにベルギー、オランダ、ドイツが追走する状況にある。この状況は、これまで築いてきた社会秩序や経済を壊しながら未だ進展している。実質的な鎖国に始まり都市封鎖や外出禁止により、ある程度のところで増加速度が鈍るのは想定できるが、それを緩めるのが難しいのは中国の状況を見ていればわかる。

 このウイルスには、まだわからないことが非常に多い。だが、世界の英知を集めればワクチンや治療薬が開発できると誰もが信じている。今最も大切なものの一つは希望であると私も思う。だが、だからこそ悪い情報には目を背けずに相対したい。ただ、ここで示す情報はいずれもまだ可能性の段階で、検証されたものでないことは強く言及しておきたい。

 

(1)コロナウイルスは、17日間空気中(正確にはモノの表面)で生存する可能性が示された(新型コロナ ウイルス17日生存の可能性 クルーズ船客室内 米CDC報告(毎日新聞) - Yahoo!ニュース)。これまでは、数時間から長くても数日と言う情報だったように思うが、一気にそれが増加した様に思う。

 ノロウイルスが、おおよそ2~3週間ほど生存する(最大では1か月条)とされているが、それとそん色ない生存期間である。必要なこととは、徹底的な除菌(正確には除ウイルスだが)と手洗いしかない。

 ただ、飛沫どころか呼気による感染があるとすれば、満員電車でもっと早く感染拡大が生じていてもおかしくなかった。三密の条件が揃えば飛沫や会話等でも感染することもあるが、最大の感染源は接触によるものではないかと個人的には感じている。ちなみに言うと、三密ではわかりにくいので、ネット上では次のような標語が良いとも言われている(https://anonymous-post.mobi/archives/22209)。

やってはいけない事はシューキンペイと覚えよう
集:多数が集まるのは危険
近:近くで話したり歌うのは危険
閉:閉鎖された換気の悪い場所は危険

  繰り返しになるが、感染拡大に対応するためにはマスクと小まめな手洗いが最適である。

 

(2)コロナウイルスは再発する(中共ウイルス 陽性反応がぶり返す理由)。以前から一旦発病した後、回復してPCR検査で陰性になった人が再陽性になったという情報は、世界中で報告されてきた。その理由として最も考えられるのは、PCR検査で測定できる感度以下のウイルス量にまで減少するが、その後再び増加して陽性反応が出るというもの。もちろん、再度他者から感染するという可能性はある。だが、いずれの場合にしても十分な抗体ができていないことを意味する(新型コロナ再発を調査=「抗体効かないなら非常に重要」―加藤厚労相|最新ニュース|時事メディカル)。サルによる動物実験では抗体ができたと中国のレポートがある(「感染で抗体できると再感染せず」 中国のチーム、サルで確認 新型コロナ - 毎日新聞)が、十分な抗体ができない段階で一旦症状が収束する可能性が考えられる。この場合、免疫力が低下すると再度発症することになる。

 また、アイスランドでは2種類の新型コロナウイルスに同時感染していたという報告もある(<中共ウイルス>アイスランドで二重感染者が確認 ウイルスが突然変異)。いくつかのソースは大紀元なのでどれだけ信ぴょう性があるかは不明だが、トータルとしては少ないが再発のニュースをたまに耳にするようになってきた。インフルエンザウイルスのようにいくつかの型が生まれ、それぞれ免疫が異なるため複数の型に感染する危険性もある。だが、現状ではそれほど大きな変化が生じているという報告はほとんどない。

 最後に以前にも書いたが、ヘルペスウイルスのように神経細胞内に入り込み根治が不可能になるのかどうかは現状では何とも言えないが、あまり楽観視はしない方が良い。未知のウイルスなのだから。

 

(3)コロナウイルスは精巣にダメージを与える(湖北省政府、中共ウイルスが男性の生殖機能に影響の恐れ 検査呼びかけ)。コロナウイルスが人間の細胞に侵入するために細胞にあるACE2受容体とCD147に取り付く(新型コロナウイルスの感染のしくみとお薬などについて書いてみた - 生物学博士いいなのぶっちゃけていいっすか?)とされているが、このACE2は精巣にもたくさんあるとされている。

 コロナウイルスがどのようにして精巣まで到達するかは今のことろ不明だが、それにより精巣に炎症が生じてしまうことは予想できる。感染者全てでこの影響が出るのか、回復後に修復可能なのかは今後の検証を待たなければならないが、最悪を考えると精巣に致命的なダメージを受け、子供を設けるのが難しくなるということも考えなければならない。

 若い人は感染しても軽症だと甘く見ている(【速報】感染者7割近くが50歳未満 東京78人の内訳判明|FNNプライムオンライン)と、将来的に後悔しそうな不味い状況だろう。

 

(4)現在出ている治療薬にも、様々な悪影響がある()。現在、効果があるのではないかと考えられている薬がいくつか存在する。そのうちのいくつかは、臨床試験済みのもので副作用についてもある程度把握されてはいるが、新型コロナへの使用は目的外であるため、想定するものとは異なる悪い結果が出ることも想定される。

〇ヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル)は元々抗マラリヤ薬であるが、現在アメリカ政府が緊急使用に向けて進み出した(抗マラリア薬緊急使用、米当局が認める-コロナ治療でトランプ氏期待 - Bloomberg)。だが、この薬は免疫を抑制する薬のため早期に使用するとかえって抵抗力を弱めてしまう可能性があるようだ(新型コロナウイルスの感染のしくみとお薬などについて書いてみた - 生物学博士いいなのぶっちゃけていいっすか?)。実際、欧州で使用したがかえって副作用により悪化したという報告も出ている(「深刻な副作用も」 新型コロナ、期待の治療法に警告 仏薬事監視当局 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News)。一方で、効果があるという報告も多数出ており(マラリア治療薬で症状改善 国内の新型コロナ患者に投与 - 産経ニュース)、適切な処方について手探りで調べている最中である。おそらくは、重症化した患者への使用ということになるのだろう。

〇ナファモスタット(商品名:フサン)は膵炎用の薬であるが、東京大学の報告でコロナウイルスにも効果があるとされている(新型コロナに急性膵炎治療薬=感染阻止、臨床研究へ―東大|最新ニュース|時事メディカル)。感染阻止を行うための薬のため、これにより改善するものではない。改善を図る薬との併用が求められる。

〇ファビピラビル(商品名:アビガン)は新型インフルエンザに対抗するための薬として開発された。薬効は、ウイルスのRNA(リボ核酸)が増殖するのを阻止するものであり、早期の使用が効果的である。これは既に日本政府が企業に増産(富士フイルム、承認目指し新型コロナに「アビガン」の国内治験開始へ:日経バイオテクONLINE)を依頼している。ウイルスの増殖を抑制するという意味でおそらく高い効果があるが、逆に人体のRNAを用いた通常の活動にも影響を与える可能性がある。その最大のポイントが子供への影響だが、それ以外にも副作用が生まれないとは限らない。

シクレソニド(商品名:オルベスコ)はステロイド系の喘息薬である(コロナ治療薬「ぜんそく薬」に期待が高まる根拠 | コロナショックの大波紋 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。効果を発揮するメカニズムはよくわからないが、既存薬の中でも最も副作用が発生する危険性が低いとされている。今後の治験結果に期待が高まるが、どのような状況で効果を発揮するかが確認されるまでには時間がかかる。

 

(4/2 9:00追記)

〇ワクチンは有効な対処法とされるが、それが社会に普及するには通常1年以上かかるとされる。さらに、不完全なワクチンが用いられた場合には症状が劇症化する危険性もある(ADE[抗体依存性感染増強]:ワクチンが効かない? 新型コロナで浮上する抗体問題 (写真=ロイター) :日本経済新聞)ので、急いで使用するわけにもいかない。

PCR積極派と抑制派の議論を整理する

 ネット上では、PCR検査を韓国やドイツのように積極的に行ったほうが良いとする意見があると同時に、現状日本政府が進めている感染者との濃密接触者や肺炎等の症状が明確な人に絞るのが良いという意見が出ている。

 両者の間では感情的であると思えるほどの対立がみられるが、双方の意見を見ていると私には基本的に違いがないようにも思える。双方とも、最終的な狙いは新型コロナウイルスによる死亡者を最小に抑制することである。一部、メディアに登場する自称専門家が言うような検査のための検査(例えば感染していないことを確かめるための検査)まで主張しているわけではない。そして、方法論として積極派は、軽症時(あるいは無自覚時)に早期隔離をすることにより感染の拡大が防げると主張している。誠に正しい方法論だと思う。これを推進する人は、研究者タイプの人が多いように感じている(生物学者や物理学者等)。一方の抑制派は現場で担当している救急医等が多いように思うが、医療崩壊を起こさないようにするためには、重症者のみを検査したほうが良いというものである。私は、医療崩壊を何よりも防ぐべきだと考えているので、その趣旨もよくわかる。

 

 例えば、韓国やドイツでは多くの検査を行うことで、必ずしも医療崩壊していないのも事実である。韓国の場合には、徴兵制度に基づく軍関係の医官および非常時に強制的に招集される医療関係者(公衆保険医)の制度があり、大邱の感染爆発では1000人近くが招集されたとされる(韓国でコロナ検査「世界最大級」のウラで医師が「動員」されていた!(崔 碩栄) | マネー現代 | 講談社(1/5))。日本で言えば、東京に2000人レベルの新たな医者が呼ばれたということであり、非常事態でもなければ考えられないほどの人員を投入していることがわかる、ちなみに、未だに大邱の酷い状況は改善されておらず、医師たちからは疲労等と精神的なダメージによる医療崩壊の話が出ているようだ(【時論】「最前線」大邱で新型コロナと戦ったこの1カ月=韓国 | Joongang Ilbo | 中央日報)。もちろん、日本でコロナウイルスに直面する多くの医療関係者の疲労も近いものがあるだろう。MERSのエピデミック時に構築したシステムがうまく機能したのではないかと思う。日本には、残念ながらそれはない。

 ただ、現在の韓国のPCR検査方法が日本と同様に重症者のみに限定されていることはあまり大きく報道されていない(新型コロナウイルスに対する韓国の検査方針の経緯について|yota8|note)。日本ほど厳密かどうかはわからないが、基本は4日間の自宅安静を経て受けられるという状況なので、3/1以降は日本のスタイルと現在は変わらない。また、感染爆発した新天地の信者の大部分が若者だったため、死亡者が少ないのではないかという意見もある(「日本はPCR検査を積極的に行わないので、新型肺炎の致死率が高い」は大間違い。 | 五本木クリニック)。どちらにしても、検査方法を変えてから韓国の感染者数の増加は一気に落ちた。もちろん、その後再び感染爆発が生じたという話はない。死亡者数は日本よりも多いが、感染者数は安定している(人口あたりで考えると増加しつつある日本と同じくらい)。

 

 むしろ、今積極的にPCR検査を行っているのは世界中で、アメリカとドイツ(新型コロナ死亡率低いドイツ 徹底検査と医療体制奏功 (写真=AP) :日本経済新聞)であろうか。確かにドイツの致死率は低く抑えられているが、日本でも積極的なPCR検査を行えば同様の傾向が出てくると思う。重要なのはPCR検査を行った後の隔離であり、それが機能して更なる感染拡大や死者数が抑えられているとすれば、ドイツの方法が優れているという証拠になるだろう。ただ、ドイツで発見される感染者数は毎日4000人以上のレベルで歯止めがかかっているかどうかはわからない。また、死者数も3/30現在で645人と他の欧州諸国よりは低いものの数としては少なくない。

 だからこそ、今後の推移を見ないとPCR検査を徹底したことが良かったのかは判断できないと考えている。検査数が多いために検査数あたりの死者数(これが死亡率として使われる)は少ないが、総人口あたりの死者数は日本と比べると、現時点では人口当たりでは日本の15倍以上とかなり多い。日本で死者数の大幅な隠ぺいを信じている人はいないと思うが、本当に日本で発表数の15倍以上のコロナによる死者がいると思うのだろうか。もちろん、今後どうなるかはわからないが。

 アメリカの場合にはニューヨーク州を中心に感染もどんどんと広がり、死者数の増加にも歯止めがかかっていない。これはPCR検査を行っても、適切な隔離ができていないか、感染爆発してしまった後なのでPCR検査と隔離の効果がなかったということになるだろう。実は、イタリアも当初全ての人にPCR検査を実施しようとして、却って感染を広げてしまった(韓国・イタリアで医療“崩壊”地獄 無防備なPCR検査で医療従事者の感染招く 医師・村中璃子氏寄稿:イザ!)と反省し、途中より重症者のみの検査に変更している。もっとも、イタリアでは医療崩壊が進みそれどころではない状況にある。フランス等も重症者のみにPCR検査を絞るという報道があった(フランスで新型コロナウイルス感染拡大:「過剰に恐れず、重症者を守る」対策方針 日本との違いは?(市川衛) - 個人 - Yahoo!ニュース)。スウェーデンも日本と同じような対処をしているらしい(Corona in Schweden: Das umstrittene Krisen-Konzept ohne Verbote)。

 

 さて、一昨日あたりのエントリでPCR検査の精度は低くないという情報(RTPCRをしたことのない人の勘違いについて書いてみた - 生物学博士いいなのぶっちゃけていいっすか?)を取り上げたが、これが現場にいる医師との体感がすごく異なっていることが気になっている。最初にも触れたように、検査技師側からすれば完ぺきに近いはずのPCR検査が、なぜか現場で働いている医師からはそれほど信用されていない(今日から新型コロナPCR検査が保険適用に PCRの限界を知っておこう(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース)。専門家ではない私個人の印象としては、偽陽性がそれほど高く出るとは思わないが、偽陰性がある程度は出てくるのではないかと思っている。というか、現場の医者の感覚を信じたい。PCR検査を専門家が研究室で行えば99%になるはずのものが、臨床では扱い方や検体の取り方等で精度が落ちる(体感で70%)。きちんとできていないからと言うことになるが、それができない現実があるとすれば現実に合わせて判断すべきだと思う。ラボでの精度が出せないのがおかしいと言っても意味がない。また、回復後の再陽性の話がちらほら出ている(韓国、新型肺炎完治者5000人超えたが相次ぐ再陽性 | Joongang Ilbo | 中央日報)。PCR検査の精度に由来するのかわからないが、少し不気味ではある。

 また、PCR検査は誰にでも扱えるものではない(医師でも知らなければ扱えない)。そのための人員がどれだけいるのかと言う問題もある(お律 on Twitter: "コロナ報道とPCRと検査技師の動画作った… ")。行政がそういう人員を削ってきたという問題もあるだろうが、何がネックになっているのか早急に確かめて、増強する必要がある。民間企業等の参入も図ることが重要だろうが、それでもさすがにいくらでもできるというのは今の日本では難しそうな気がする。今のままで単純に行えば医療関係者が疲弊するのは目に見えている。もっとも、理化学研究所が開発したスマートアンプ法(神奈川県衛⽣研究所と理化学研究所が開発したSmartAmp(スマートアンプ)法を利⽤した新型コロナウイルスの迅速検出法が、本日から⾏政検査で使⽤でき、近日、保険適⽤される⾒込みです。 - 神奈川県ホームページ)が広まればもっと検査可能だと思うので、そろそろ検査数を増やした方が良いと思うことについては少し前に書いた。

 また、一部で出されているPCR検査を大量に行えば医療崩壊するという意見については、直接的にはPCR検査が医療崩壊につながるとは思わない。検査技師が過労でダウンするとか、検体採取に割ける医師の数が限られるとか、ドライブスルー検査を行うのは東京都心部では難しいとかはあるだろうが、いずれも決定的ではないと思う。だが、限定されている医療リソースをどこにどの程度配分すべきかと言う問題を考えた時、間接的には医療崩壊の引き金にはなるかもしれない。この際だから、それをどのように増強するかの議論は必要だろう。

 

 もう一つ、隔離施設の件がある。先日、小池都知事がオリンピック選手村の活用を発表した(患者滞在施設に選手村活用も コロナ対策で小池知事 :日本経済新聞)が、民間の施設借り上げに要する時間は非常に大変なものである。その時間を稼ぐためにやむなく、クラスターつぶしに勤しんでいるという可能性も捨てきれない。こうした重大なオペレーションでは様々な要素が絡み合うため、部分的な最適行動が容易に取れないということはしばしば見かける。場所が確保できても、医療関係者の配置、生活物資の運搬方法、行動規制のルール作り、緊急搬送体制(基幹病院から離れては重症時に対応できない)などすぐにはできないことが山のようにある。

 早くPCR検査をしたくても、それを実施した時の対応策なしには突っ走れない。これは私の推測に過ぎないが、そのための準備を今しているのではないかと想像する。大量のPCR検査実施だけなら、おそらく今でも無理(動員)をすれば可能だろう。だが、本当に東京に全国の技師や医療関係者を集められるかと言えば若干疑問が残る。自衛隊を投入すれば可能かもしれない。

 

 また、無自覚・軽症の感染者がどれだけ感染を広げているのかと言う情報は馬鹿にできない。名古屋市長の河村氏の情報によると、名古屋市では80%ほどは家族にも感染させていない(河村 たかし(本人) on Twitter: "自力入力 コロナ お知らせだがね。… ")とある。もちろん、あくまで一部のケースなのでこれですべてを網羅できるとは思わないが、政府の下で感染症対策の指揮を取る押谷教授(新型インフルエンザに立ち向かう =押谷仁教授からのメッセージ= | 特集・インタビュー|東北大学大学院医学系研究科・医学部)もNHKで同様の話をしていた(4/1 14:00追記 COVID-19への対策の概念:https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf)。何らかの情報を得ているのだと思う。

 ただ、あくまでクラスターをある程度追えている段階での話でもある。それが難しくなった場合には、もう少し踏み込んだ検査体制と新たな隔離体制(軽症者を隔離する施設の準備)にシフトチェンジしたほうが良いというのが私のイメージである。今後投薬されるであろう治療薬についても、早期に用いたほうが良いのは明らかなのだから。

 

 勝手にPCR推進派と抑制派と分けて、自分なりに整理してみた。論理的には推進派の言うことはよくわかるが、現場のことを考えると抑制派がこれまで行ってきたことが間違いであるとは思えない。オペレーションはPCR検査のみにより決定されるとは限らないからだ。だが、全体像に関する情報を私は持っておあらず、あくまで推測するしかないこと。だから、そこに政治的な忖度がないことも証明しようもない。無いことを祈りたい。それが私の結論である。

 

 最後に、人工呼吸器やECMO(人工心肺)の増産に向けて日本政府が積極的ではないという話も上がっているが、どちらの機器も専門の医師や看護師が扱わなければ危険なものである(人工呼吸器って難しいの?)。特に人工心肺は複数の医療関係者が関与しなかればならない。現在の医療リソースで扱える範囲の増産は既に動いている(人工呼吸器の増産や輸入働きかけ 経産相 新型コロナウイルス | NHKニュース)と思うが、それ以上を増産(確保)しなければならないということは、レベルの落ちる医療体制(不慣れな扱い、専門外の医者の投入)でもないよりはましという状況の想定になる。

 もちろん最悪を常に頭に入れておく必要があるが、今の医療リソースで処理可能な状態に抑えるのが何より重要だとは思う。何故だかわからないが、日本の感染者(というよりは死亡者)の伸びが欧米よりも緩やかである。この幸運を、最大限生かしてほしいと願っている。

現金給付より無利子貸付+一部返済免除はダメなの?

 メディアやネット界隈では、政府の経済対策に対する不満が数多く出ている(遅すぎ、ショボすぎ…安倍政権のコロナ対策は、まるで話にならない(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース)。もっと規模を拡大し、減税も行い、スピードも早めるべきだと。確かに、アメリカは早々に2兆ドル規模の経済対策を打ち出した(トランプ氏、2兆ドル規模の経済対策法案に署名 新型ウイルス - BBCニュース)。その動きから見れば、日本政府の動きは確かに遅い。更には、実際には行われないだろうアドバルーン的なものとして「和牛券」や「寿司券」などがリークされて失笑を買っている(「和牛商品券」という愚策が提案されてしまった理由 - 山下一仁|論座 - 朝日新聞社の言論サイト)。だが実のところ、私は政府が今どれだけ大胆な対策を打ち出しても大幅な経済の落ち込みは不可避であり、拙速すぎる対応はその後の打ち手を失う危険性があると感じている。もちろん、私は経済政策の専門家ではないので素人の適当な戯言と思って読んでいただいて結構。

 

 アメリカは日本と異なり社会のセーフティーネットーネットが充実していない。いや正確に言えば、良いところも悪いところもあるが、基本的に弱肉強食の社会体系により構成されている。成功者とそれ以外の間に大きな差があるのが当然という共通認識がある。だからこそ、弱者救済に見える日本のような皆保険を導入することができないでいる(「オバマケア」が機能不全に陥っている理由 | アメリカ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。

 その点、日本はかつて「国民総中流」と名付けられたように、比較的貧富の差は小さい。最近、総体的な貧困が増えたという話があるのは事実だろうし、改善すべき点も少なくないとは思うが、それでも世界を見れば比較的バランスの取れた状態を維持していると考えている。それは海外に行ってみれば実感するのではないか。もちろん、人によっては印象が異なるのは理解しているが。

 

 さて、経済政策で言われている現金給付額は、様々な額があるもののアメリカと同程度とすれば10万円/人程度である。仮に家族4人とすれば一時金として40万円。これで1か月から2か月は生活を維持できる可能性は高い。貯蓄があれば1年以上と言うことにもなるが、厳しい人たちは貯蓄がほとんどないと考えた方が良い。こうした現金給付は2度目3度目は簡単に行えない。

 だから、私は最初に行うべきは無利子貸し付けではないかと考える。実際既に打ち出されてはいる(新型コロナウイルス感染症特別貸付|日本政策金融公庫)が手続きが難しいのと事業に限定されていることが問題だと考える。家庭への貸し付けも含めて、事業規模、家族構成に応じた無利子貸し付けが、マイナンバーや企業番号により一定額まで可能となる仕組みを導入する。政策金融公庫は受付のみで基本は無審査。加えて、特別な理由があれば追加審査によりもう少し大きな規模の貸し付けが可能となる仕組み。半年から1年は返済が猶予される。新しく設立したばかりの企業は怪しいため除外される(あるいは一定の審査を受ける)。その上で、経済的な損失状況が明らかになった段階で、状況に応じて返済の一部が免除される。初期免除額は決めておいても良いし、さらに免除額は今後の被害状況に応じて拡大される。要するに、それが現金給付と同じ役割を果たす。

 ウイルスによる社会的損害の全容は、現時点で専門家でも把握しがたい。インパクトある対策を最初に打つというのも一つの考え方だが、それは最初の対策で十分にカバーできることが前提になる。全体の戦局を見定められれば、逐次戦力投入ではなく最大戦力による殲滅作戦もとれる。だが、今回のそれは非常に困難ではないかと思うのだ。

 

 無制限とは言わないが、事業規模、家庭規模に応じた貸付なら、今後の収入状況を来年度の申告により把握できるので、現時点では貸し出した上で状況に応じて返済を求めることが可能となる。今は不安が大きいため、大きめの金額を手元に確保したいが、将来の予測がつくようになってきた段階で一括の返済も可能にする。

 申請さえすれば、確定申告(決算申告)で登録されている口座に振り込まれ、その後にその申告が妥当であるかどうかを確認していく。中には踏み倒す人もいるだろうが、そうした人たちはどのみち同じような運命になっていく。

 初期設定の金額をどう設定するかは専門家により決めればよいが、例えば4人家族なら50万円としておき、企業や個人事業なら昨年の決算額から推定する。特殊事情がある人だけは、別途申告の上で認められれば積み増される。

 

 あくまで貸付なので、余裕のある人たちは借りない。無利子なら借りるかもしれないが、次の年の決算で利益が上がっているようならば利子を取るという制度を組み入れてもよい。安心料として余裕のある人や企業はその程度は払ってもいいのではないか。

 申告ベースでそれぞれの状況を後で確認できるため、不公平感が無くなり、その上で早期の支給を可能にする。これ以外に、減税をしてもよいし、その他の施策を考えてもよい。今求められているのは何よりも速さであり、それが難しいと策を練っているのであろうが、まずは貸し出してあとで調整できる仕組みが良いのではないか。

 

 まあ、私は素人なので抜けや間違いもあるかもしれない。と言うか、多分あるだろうと思うので、おかしければ指摘していただきたい。でも、今求められる速さと公平さを両立させるにはこのような方法があると思うのだ。その上で、経済に及ぼす被害状況に応じてあとで調整もできる。詳細は専門家が考えればよいと思うが、変な「お米券」とか「和牛券」とか考えるよりは、必要な場所に必要な金額を早期に届けることができると思うのだが、いかがだろうか。(3/31 20:00タイトル一部変更)

疑心暗鬼が生み出す社会崩壊

 本日二本目のエントリ。

 

 欧州がウイルスとの戦争状態になっているのは、ニュースをチェックしている人なら理解しているだろうが、現時点で最も患者が多いのはアメリカとなっている。死亡者数ではイタリアが最悪(イタリア 死者1万人超え 事態さらに深刻化 新型コロナ | NHKニュース)だが、今の傾向を見るとアメリカも後に続く可能性は高い。そんな中で、アメリカでも社会を騒がせるような話題が出た(健康保険未加入で病院から門前払い…新型コロナ感染で米国の17歳少年が死亡とNY紙が報じる(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース)。都市封鎖(サウジ、都市封鎖を拡大 新型コロナの死者増加 - ロイター)や医療崩壊という極限状況では、このような行為が騒乱を引き起こさないとも限らない。誰もがこの先の状況に大きな不安を抱いており(独ヘッセン州財務相が自殺 新型コロナ危機で「絶望」:時事ドットコム)、心理面で破裂寸前の風船のようになっているからである(タイ刑務所で暴動発生、一部囚人が脱走 新型肺炎発生のうわさで - ロイター)。

 日本人が東日本大震災でも整然とした行動を取ったことは、多くの国から賞賛されたが(【世界を驚かせた日本人】東日本大震災の被災者たち 暴動・略奪なく「助け合いの精神」発揮 (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK)、細部で見ると窃盗を始めとした様々な犯罪や買占め等の社会不安を煽るような行為があったのも事実。外国人によるものもあっただろうが、大部分は日本人が関与している。それでも全体で見れば欧米やそれ以外の外国と比べて大人しいのも事実である。最も大きな問題と考えられるのが、移民国家であるアメリカの社会秩序が守られるのかであり、次に移民を引き受けた欧州のそれであろう。欧米で都市封鎖が長期化すれば(英国の外出禁止は半年以上続く可能性、当局者が見解 - ロイター)、どこかで爆発が生じてもおかしくない。何せコロナ騒動が生じて、アメリカで最初に無くなったのは銃や弾なのだから(新型コロナウイルスの影響で、アメリカで弾薬の買い占めが勃発!オンラインショップで売上倍増も(FINDERS) - Yahoo!ニュース)。仮に暴動があちこちで発生し、それが長期化するようなことがあれば、これまでの社会秩序が大きく変わることも想定できる。軍によう鎮圧となるだろうが、それが残す社会的しこりは小さくない。一種のパラダイムシフトだが、それが歓迎すべき変化かどうかは疑問も残る。 

 

 同様のことは、日本でも少しずつ話題に上がっている。厚生労働省が毎日発表する新型コロナウイルスの国内発生状況報告に、陽性患者の全体数と日本国籍の者という記載願されている(新型コロナウイルス感染症について)。例えば、3月29日12時時点の報告では、「感染者数」は1,693例とされ、「日本国籍の者」が1,035人とされている(クルーズ船は除く)。ただし、「日本国籍の者」の後に括弧書きで(これ以外に国籍確認中の者がいる)とされている。

 国籍確認中の者が何人かは書かれていない。「感染者数」から「日本国籍の者」を減じた数が658人となり、これが全て外国人なのか、あるいはその大部分は日本人だが、何らかの理由で国籍を確定できないのかが不明なのだ。仮に全てが外国人だとすれば、日本の貴重な医療リソースがそこに食われていることになる。数字上だけだが、38.8%が日本人以外という計算である。さらに、それを過去にさかのぼって確認した人がいるので、次のサイトを参照してほしい(厚労省・新型コロナ陽性者データに内在する不可解な矛盾|ishtarist|note)。ただし、読み進めると厚生労働省の公表するデータが正確な判断を行うのに適していないこともわかる。

 私が危惧するのは、現状ネット上では「日本国籍の者」以外は全て外国人と言う前提で話が進んでいることであろう。さらに、ここ半月ほどで「日本国籍以外の者」の数が大きく増えていることが問題となる。単純に考えれば、外国人の感染率が非常に高い、あるいは日本に検査を受けるために来ているという可能性を導き出してしまう。

 だが、実際には外国から日本に入ってくるのは数週間前からかなり困難である。全体的な入国拒否は3/29に検討していることが公表された(米中韓からの外国人を入国拒否へ 政府、欧州ほぼ全域も [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)が、それ以前よりビザの停止など実質的な締め出しは3/9から始まっていた(新型コロナに関する水際対策の抜本的見直し-ビザの効力停止など強力な措置も採用 | ニッセイ基礎研究所)。すり抜けてくる手口もあるのかもしれないが、基本は中国や韓国のパスポートを持っていれば入国は拒否されていたはずである。3/21からは欧州からも待機要請が為されていた(日本政府、欧州など38か国からの入国者に14日間の待機要請。3月21日0時から - トラベル Watch)。待機要請に留めていたのは、帰国する日本人を想定してであると思う。

 すなわち、「日本国籍の者」以外が日本人でないとすれば、それは少なくとも3/9以前から日本にいた中国人・韓国人、あるいは3/21以前に日本に来た欧州人、そしてそれ以前・以降を含めたアメリカ人、東南アジア人等となる(東南アジア7か国など 発給済みビザの効力停止 新型コロナ | NHKニュース)。以前のエントリで、日本の医療リソースを求めて韓国人が来ることに警告を発したことがあるが、韓国もいろいろとあるとは思うが予想以上に踏ん張っているというのが正直な感想。すなわち、彼らが日本に来る必要はそこまでない。

 個人的には、当初の中国人観光客等を除けば大部分の「日本国籍の者」以外は地方自治体で国籍確認されなかったが日本人ではないかと想像する。都道府県からの報告に国籍条項がないために、厚生労働省が確認できていないだけではないか。さらに言えば、既に回復している人もかなりの数いるので、医療リソースが外国人に占拠されていると考えるのはまずいと思う。もちろんゼロとは言わないが、程度は多くの人が感じるほどには高くないだろう。フィリピンパブで自暴自棄な親父に感染させられた人もいるのだから。できれば厚生労働省のサイトも、誤解を招かないような記述に変更してほしいと思う。

 

 比較的寛容で粘り強い日本ではあるが、疑心暗鬼が広がればとんでもない事態を引き起こすことも考えられる。更には、不安な時にこそ付け込む勢力があることも知っておいた方が良い。それは日本人の顔をしていても日本人のために働く人ではないかもしれない。感染者の外国人率を考えるよりも、そこに付け込まれる方がずっと怖い。十分、デマ等には注意しておきたい。