Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

鉄火場の後始末

 私は現在の株式市場を過剰流動性が生み出したバブルだと考えているが、そう考えない人も少なからず存在する(すばらしい経済がやってくる:ジェレミー・シーゲル – The Financial Pointer®)。安全性の高い債券投資が歴史的な低パフォーマンスとなっているため、市中に溢れた資金の行き場所は株式市場しかないというのが根拠である。実際、その通りだから株価はアメリカでは連日株価は過去最高を更新しているし、日本もバブル期の跳びぬけた高値に近づきつつある。強気の根拠は、資金は効率的な投資先がないため結局のところ株式市場を求めるようになり、バリュエーションとしてはまだ上昇の余地ありという訳である。シラー指数で有名なロバート・シラー教授(ロバート・シラー - Wikipedia)も、金利等を考慮すれば現在のバリュエーションはある程度正当化されるという見方の様だ(CAPEレシオによる将来の株式リターン予想:ロバート・シラー – The Financial  Pointer®)。燃やすものは減りつつあるが、ガソリンをどんどんと加えて燃やしているように見える。本来は、燃やすものと燃料のバランスが取れていなければならないのだが。

 長期的に見れば、今後も株価が上昇していく可能性はかなり高い。世界の株式市場の長期チャートを見れば、一目瞭然である。上下動を繰り返しながらも株式市場は上昇を続ける。それは本来インフレ率と横並びであるのだが、市中資金の増加によりブーストしている側面はあろう。あるいは日本市場の場合には日銀がETFを買い続けている(なぜ日銀はETFを買いまくるのか? 「政策の問題点」を点検する(ビジネス+IT) - Yahoo!ニュース)のだから、お上には歯向かえないという理屈も成り立つ。ただ、リーマンショック後のアメリカにおけるGDP成長率やFRBの供給した資金と比べて、株式市場は過大に増加しているという側面はあるが(Sven Henrich on Twitter: "One inconvenient fact that keeps eluding the 2009 analog proponents is that market cap to GDP was recovering from 50% going into 75% in 2010 versus the 193.3% clown show we got going now. https://t.co/ZHlr6I6zqr… https://t.co/CdCIeVCTsR")。

 諸条件を勘案して私は目先一旦下落するだろうと考え、昨年末より徐々にショート側での投資を中心に始めた。正直に言えば、現状では若干踏みあげられている(1月中旬から2月初旬が天井としているので、ある程度の含み損は想定内であるが、あまり気持ちはよくない)。ちなみに、以前より投資してきた貴金属の大部分を10日ほど前に売却した。本来、貴金属は株式と異なる動きをすることが多く、安全資産と位置付けられるが、ここ数年は連動性が非常に高いように見える。おそらく同種の資金が投入されているのではないかと判断している。とすれば、株式市場が大きく下げれば貴金属もある程度下落するだろう。その時点で再度買い直す予定である。個人的には貴金属は今後も長期的に上げ続けると考えている。

 

 現状、株式市場の一部の狂乱を見る限り市場心理はかなり過熱しており、今が歴史的な大暴落のきっかけになるかはわからないが、一定の下落(20~25%程度)の可能性は少なくないと見立てている。その狂乱の一つには、ロビンフッターと呼ばれる投資家たちの活躍(シタデルとポイント72、メルビン支援-ゲームストップ空売りで損失か - Bloomberg)がある。活躍という言葉は正しい使い方ではないが、ヘッジファンドを追い落とすほどの過熱は正直異様である。心理面で見れば、まさしくバブルの賜物と言えよう。また、株式指数は大きく上昇しているにも関わらず、手持ちの株はその恩恵にあずかれていないという人も少なくない。というのも、今回の株価上昇が特定の株式に集中しているというのが特徴だからである。典型はテック株と呼ばれる一群であり、今広がっているのはペニーストック(日本で言えばボロ株:ペニー・ストックとは? | 証券取引用語集)の爆発である。資金循環の一つと言えなくはないが、資金がハイパフォーマンスを当然のように追い求め始めた結果でもあろう。だが、実際の社会はそんな成長を成し遂げていない。あくまで、政府や中央銀行による資金提供に踊っているに過ぎない。

 問題は、それがいつ終息に向かうのか。FRBは経済的影響を考え当面金利を上げないと宣言しているが、テーパリング(テーパリング|証券用語解説集|野村證券)については今年度後半から来年度初めに開始されるというのがコンセンサス(Shen on Twitter: "テーパリングの開始時期アンケート。今のペースでもネット供給超になるのにだいぶ前のめりですね… ")となっている。インフレ率についても、様々な予想が為されているが、年末には2%弱に到達するのではないかと予想されている(Shen on Twitter: "GS 10年金利雑予想… ")。金利上昇は政府財政支出の紐を固くする。FRBの自由度も奪うだろう。株価が正常なら問題はないが、過剰なら調整せざるを得ない。その上で株価は半年から1年先を読む。ワクチン効果が高まるほどに、市場に流される資金は少なくなっていくのだから、それに反応することもあろう(社会や経済が正常化するほどに株価が下落する)。あとは、日々の感覚的なものではあるがそろそろ高値追いが苦しくなってきたようにも見える。まあ、下落というものは高いから落ちるのだ(アングル:急激な株高に「異常」の声も、米で広がるバブル警戒 | ロイター)。

 これが大幅な下落に転じた時には、ロビンフッターたちが今度は売りに回って暴れだすことも想定していた方が良い。過剰流動性は、上にも下にも行き過ぎを生み出すだろう。アメリカ株の下落の流れを予想するとすれば、最初に中傷株のRussell2000の下落から始まり、次にNASDAQ、そしてS&P500という流れだろうか。日本でもMothersからJASDAQそしてTOPIXにつながると思う。日経平均は、日銀ETF買いの程度によっては若干遅れるかもしれない。現状は銃のトリガーに指がかかり、きっかけを待っている状態であると認識している。

(1/28追記:昨晩アメリカ株が大きく下げた。まだ今後の動きがどうなるかはわからないが、トリガーをロビンフッターたちが引いたとすれば、それもまた新鮮で面白いのかもしれない。早速、個人的には一部の売りに利が乗り始めた。あくまで当たらない予想だが、今後は株式市場も含め様々な市場でのボラティリティがかなり高くなるだろう。そんな中、気づけば徐々に下がっていくのではないだろうか:ショートスクイーズが株式市場を下落させる:デニス・ガートマン – The Financial Pointer®