Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

アメリカ株価動向

 3/4のアメリカ株式市場は大幅な上昇をした。理由としてメディアは、バイデン氏が大統領予備選のスーパーチューズデースーパー・チューズデー - Wikipedia)で勝利したこと(米株市場はダウとS&Pが4%超急伸、民主予備選のバイデン氏躍進で - ロイター)を取り上げるところもあれば、アメリカ政府が大型のコロナウイルス対策を打ち出したこと(【米国株・国債・商品】株が急反発、ウイルス対策の米法案を好感 - Bloomberg)を持ち出すところもある。もちろんこうした理由は実際にはどちらも後付けにすぎず、真の意味では関係ないといってもよい(動意付けには関係あっても)。ちなみに、大きな上昇後は二日続けて下げている。世界的な広がりを受けて、さらに下落しそうな雰囲気になっている(米国株先物急落、S&P500種先物5%下落しCMEの取引制限発動 - Bloomberg)。

 現在、世界は過剰にあふれた資金が行き場を求めて浮遊している。もちろん、より高い金利や利益を得られる場所を探しながら彷徨っている状態である。だから、何か少しでもお金を増やせるチャンスがあると考えるとそこに資金が殺到する土壌が出来上がっている。企業が持つ資金も含め、多くは低利で借り入れたものや一定の利益が出ることを見込み集められたお金であるあるが故、これらは一定の儲けを出すことを義務付けられている。

 こうした状態が長らく続くと危機感知度が下がり、危なっかしい橋であっても儲けられるとなればお金が向かいはじめ、繰り返し続けられるとバブルへと成長する。人はいろいろな理由で都合の良い現状を肯定しようとする。同時に、自分に都合の悪い現実は否定されやすい。さて、利益を上げ続けなければならない資金運用者はどう考えるだろうか。とにかく株価はマインドに左右される。市場参加者のマインドが揺れ動く間は乱高下が続くだろう。

 

 だが、今回のコロナ騒動は容易に収まる気配はない。株価というものは先行指標として評価されており、皆が事実に気づいたときには織り込み済みとされることが多い。だが、一方で未来が確定的ではない時には判断を誤ることも少なくない。コロナウイルスから始まった経済へのダメージは、世界中を見渡しても相当のものになるだろう。日本でも企業の資金繰りに対する融資制度の話は出ている(安倍首相、中小企業に無利子・無担保融資の方針 打撃緩和 - ロイター)が、とてもではないがその程度では収まらない。一部の識者が既に提唱しているように、消費減税や法人税社会保険費用の減免+還付など即効性のある給付策が求められることになると考える。

 アメリカの株価だが、最高値からは10%強の下落となっている。ただし、中期的な目で見れば少し前にも書いたようにこの下落は序の口であると考える。元々かなり強引な株価上昇が生じていたこともあり、トランプ大統領就任時と比べて株価は50%以上上昇していたのだ(【トランプ大統領就任】初日の株高はケネディ以来 相場の勢いには陰りも - SankeiBiz(サンケイビズ))。もちろん、アメリカでは企業収益の上昇や雇用の拡充など経済的な安定も進んでいたが、それ以上に過剰流動性の効果が本格化したのだと私は理解している。コロナ問題はこの両者を根本から脅かす。経済は停滞し、国家間の移動も一時的にはかなり制限されるだろう。

 その先にあるのは、これまでの有り余る資金を背景にして進展した正のスパイラルが逆転して生まれる、信用収縮の負のスパイラルである。これまで生じた信用拡大が大きいほど反発力も大きくなる。株価の動向を示すPERやPBRも、収益が悪化すれば一気に上昇し、資産を切り売りするようになっても同じである。

 

 この感染症がいつ終息するかは現時点では誰にもわからない。夏季に一旦収まるかもしれないし、あるいは画期的な特効薬が生み出されるかもしれない。だが、どちらにしてもまだ数か月はかかる。その効果が表れるころには、相当の経済的なダメージが蓄積しているだろう。現状の株価下落は、コロナウイルスという新たな脅威に対して市場が驚いて過激な反応をしている状況。もちろん、そこには様々な思惑が飛び交っている。更に世界中への広がりを受けて、もう少し下げるのではないだろうか(当たらない私の感想では、ダウ平均株価指数で22,000~24,000ドルあたり)これはトランプ相場の第二幕の付近と見ている。トランプ相場には三幕あり、就任時の動き(18,000ドルから22,000ドルまでの急上昇)、それに経済がついてきての安定期(22,000ドルから26,000ドル付近での状況)、最後が昨年夏以降の狂乱期(26,000ドル以上)と個人的に分類している。

 今後の急落後の落ち着きは、世界各国の中央銀行や政府の対策で安堵感を得ることになるだろう。特に政府支出の方が効果が高いが、それをどれだけの期間維持できるかには不透明な部分も多い。夏季になり感染が落ち着けばそこで終了だが、これは神頼みに様なもの。感染拡大が継続するようなら政府支出にも限界が出よう。政府による財政支出が適切に行われない場合、企業倒産が連鎖していくことになる。リーマンショック時との違いは、それが金融関連だけではないということか。全産業的に及んでいくので、対処が容易ではない。

 

 私が想定しているのは、バブルの主要な部分を占めている不動産価格の下落(ソフトバンク、中国不動産市場に大型投資=関係者 - WSJ)である(3/16追記:UPDATE 1-中国1─2月不動産投資は前年比-16.3%、販売40%減 過去最大の落ち込み - ロイター)。金余りの副次的効果により不動産価格は大都市において大きく上昇した。日本の程度はまだ可愛いもので、世界では信じられないほどの上昇を見ているところもある。その本丸は、不動産価格上昇が地方政府の資金繰りにも直結している中国である(https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as190819.pdf)。

 産業的な被害も少なくないだろうが、この不動産バブルが崩壊(3/11追記:中国の不動産会社100社余りが破産-新型コロナで苦境深まる(Bloomberg) - Yahoo!ニュース)した場合には中国の経済はズタズタになってしまう。中国ではGDPの半分近くを固定資本形成(投資)が担っているのだ(中国のGDP構成比率(個人消費や輸出など))。この比率は世界的に見ても非常に高い(日本では20%強)。実際には不動産バブル崩壊の前に、様々なジャンク債のデフォルトが生じるであろうが、それは政府が資金を投入すれば部分的には防げる面もある。ただ、金利き下げが限界にきたあとでは、不動産の取引凍結か価格統制程度しか対応策はない。

 

 株価下落の第二弾は、上記想定のように中国が引金になるとは言い切れないのが難しいところではあるが、その恐れを世界中の市場が感じ取った時ではないだろうか。この話は中国だけではなく、世界中でも言えることではある。この破壊力は相当に大きいと思う。

 私の当らない勝手な株価下落予想は、昨年の1月ごろに予想した高値の半分程度だったが、いまでもおおよそ同程度を想定している(ダウ平均では13,000~15,000、ナスダックでは4000~5000ポイント)。もちろん、感情的になった市場は大きく揺れ動くため正確に当たるとは思っていない。また、時期については夏から秋ごろの可能性が高いのではないかと思うが、このあたりはアメリカ大統領選挙もある(【図解・国際】米大統領選の主な日程:時事ドットコム)ため関係する事項が多くて正直わからない。繰り返し書くが、これは私の妄想であって当たるとはとても言えない株価予想である。ちなみに、日本の株価はアメリカに追随するためほぼ同じような傾向をたどると思う。

 

 なお、特効薬やワクチンが早期に開発されれば、この動向は大きく変わり得ることは付け加えておきたい。