Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

コロナとワクチンのいたちごっこ

 ボリスジョンソン首相が、イギリスのコロナ変異株の致死率が未確定ながらも65%程度増加しているという情報を発した(イギリス株で致死率は65%も跳ね上がった 新局面を迎えた対コロナ戦争【コロナ緊急連載】 | 木村正人 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト:当初のニュースでは30%程度の増大だったと思う:英変異種、高い死亡率 1000人中13人―政府発表:時事ドットコム)。数倍といった極端なレベルではないが、恐れていた強毒化が進行しているようである。まだイギリス株にはワクチンが有効とされているが、南アフリカ株やブラジル株は現在出ているワクチンを高い確率で回避するのではないかと言う予想も広がりつつある。元々、コロナウイルスはどんどんと変異を繰り返しており、インフルエンザのように季節性の流行疾病になるという話は存在した(季節性コロナウイルスの防御免疫は持続しない:日経メディカル)。インフルエンザより変異が少ないのではないかという意見もあったが、現時点では甘く考えるわけにはいかなそうだ。

 さて、ワクチンの効果が出ない変位種が見つかっても、mRNAワクチンの開発には6種間程度あれば可能であるとされる(ファイザーCEO、mRNAワクチンの応用に期待…インフルエンザなどの変異にも比較的短期間で対応可能 | Business Insider Japan)。ただ開発期間は短くとも、その後の治験に数か月を必要とするため即時の対応ができるというものでもない。個人的な想像では、4か月~半年程度の期間が必要になると思う。実際どの程度で対応可能かは、ワクチンの効果が低いと想像されている南アフリカ株への対応時間で推測できよう。

 

 強毒化が進む理由は、コロナウイルスの伝染性の高さが大きく寄与している。特に、無症状の段階で他者に感染させるというのは、他の感染症でもそれほど多くない特徴である。無症状段階で他者に感染させるため、弱毒化方向に劣化変異したコピーを広げるがほとんどないという訳だ。弱毒化するためには、強毒化した(あるいは変化の少ない株)の伝染力が低くならなければならない(例えば早期に死亡するため他者に広がらない等)が、そうなる前に感染していくため弱毒株も変わらない株も強毒化した株も同時並行的に広がっていると考えた方が良い。むしろ、感染力を高めた株が生き延びて広がり続ける。

 また、この変異の激しさは新たな問題を広げる可能性がある。昨年にも紹介したがADE(抗体依存性感染増強)の問題である。当初は、武漢で広がっていた段階での劇症化において想像したものであったが、デング熱のように異なる株に再感染することで劇症化するADEの危険性を無視できないように思う(influenzer on Twitter: "一方で非中和抗体はあまり低下していません。となると、考察内には記載はありませんが、再感染によるADEのリスクも考慮すべき変異株だと思います。SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasmahttps://t.co/dw1CMxNWn0")。

 また、これは勝手な想像であり恐怖を煽るつもりもないが、ワクチンにより生じた抗体が異なる変異株により悪さをする危険性もないわけではない。この問題については、まだまだ研究がなされなければならないだろう。

 

 とは言え、ワクチンが効果がないわけでもない。ワイドショーなどではワクチンの副作用の危険性を煽っているが、現時点で報告されているものは一般的なワクチンレベルであり、ワクチン接種を直接の原因とする死亡者はほとんど報告されていない(『新型コロナワクチンで6人のアナフィラキシー』は、どれくらいのリスク?アレルギー専門医が考察(堀向健太) - 個人 - Yahoo!ニュース)。また、アナフィラキシーショックを発症した人も、その後回復しているとされる。倦怠感や仕事ができないほどの反応が出る人はある程度いるようだが、リスクとメリットを比較して判断すべきものであろう。自分自身で判断するには、もう少し結果を見ていきたいと思う。

 一方で、イスラエルの報告ではファイザーワクチン1回接種のみでは、効果が33%程度という情報(英米の戦略に打撃? イスラエル、ファイザーのワクチンは1度の接種では「思ったより効果が小さい」 | Business Insider Japan)もあり予断を許さない。ワクチンが十分に供給されるようになってから対応するほうが効率的である。日本でも、ワクチンが普及するまでは感染拡大を最大限に抑制する方向で取り組むべきだろう。中途半端な妥協案を推進するのが最も始末に負えない。

 

 個人的には、海外でのプロジェクトが1年以上停止したままなので、早期に感染が収まってほしいと思うし、安全性がより確認された段階でワクチン接種も考えたいと思うっている。それでも、現時点ではもう少し(あと1年程度)は感染しないように気を付けたほうがよさそうだ。