Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

BCG仮説

 既にいろいろな場所で紹介されていると思うが、オーストラリアで、新型コロナウイルス対策としてBCGワクチン接種試験が実施されているという話が出ている(豪 BCGワクチン 新型コロナウイルスに有効か臨床試験へ | NHKニュース)。その元になる仮説(Can a century-old TB vaccine steel the immune system against the new coronavirus? | Science | AAAS)は、西ドイツと東ドイツの感染者数の大きな違い(2020 coronavirus pandemic in Germany - Wikipedia)、並びに世界的な感染者数増加の違いの分布(https://www.researchgate.net/figure/Map-displaying-BCG-vaccination-policy-by-country-A-The-country-currently-has-universal_fig2_50892386)が、BCG接種状況(特に旧ソ連株および日本株)と相関があるのではないかというものである(io302 on Twitter: "実はBCGワクチンと言っても、色々株があります(https://t.co/XuiUeoC0QR)。)。これを偶然の一致と言えるかどうかについては、今後の報告を待たなければならない。

 

 ただ、以前より欧米の感染爆発のスピードが速すぎることが気になっていたし、感染者が死に至るまでの時間がイタリア等で短すぎる(CNN.co.jp : 新型コロナ感染者、発症から死去まで平均「8日間」 イタリア調査)のも疑問だった。感染者の急増により医療崩壊があるにしても、中国などの情報と比較して半分以下の時間である(【解説】中国の新型コロナウイルス、死者についてこれまでに分かっていること 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News)。短すぎるのだ。加えて、イタリアにおける致死率の高さ(新型コロナで致死率9.3%のイタリア、オーバーシュートの脅威:日経ビジネス電子版)も説明がつきにくい。医療崩壊が深刻になれば考えられなくはないが、当初より80%の人は軽症・中症(高い熱が出たり、呼吸困難は生じるがICUには至らないレベル)と言われてきた。ウイルスの種類が異なるという話もあるが、現時点では評価できるだけの情報はない。

 もちろん中国の患者数や死者数が少なすぎるという情報は、一定の信ぴょう性(武漢市医師「疑い死者が確認死者と同規模存在」中国メディア伝える TBS NEWS)を持っていると思う(号角 on Twitter: "中共病毒引起的武汉肺炎,在大陆到底造成了多少死亡多少感染,今天我得到友人的爆料:武汉真正的死亡人数约5.9万人,中国真正的死亡人数约9.7万人,中国感染人数约121万。数据对不对,留此对照。… ")が、同時にBCG接種が関係しているとすれば納得しやすい。同様のことは日本の状況(なぜ日本の感染者は少ないのか……海外が見る「日本の謎」 新型肺炎 | NewSphere)についても当てはまると思うが、仮にこの仮説が正しかったとしても、わざわざ言うまでもなく油断してはならない。若い人でも重症患者は少ないながら存在するのだから(Siyanda Dube on Twitter: "Watch this young woman with #COVID19 struggle to breathe.)。

 

 さらに、BCGは新型コロナウイルスに特化したワクチンではないため、そもそも完全な感染抑止効果が期待できるわけではない。日本でも70歳以下の人は、特別な理由がない限りBCG接種を受けているが、感染者の増加は進行している。すなわち、罹患しないという訳ではないのだ。ちなみに、BCGの効果はおおよそ15年程度とされる(https://jata.or.jp/rit/rj/bcg.html)ようだが、一度出来上がった免疫システムは恒久的に続くという情報もあり、正確なところはわかっていないようである。ただ、大人になってからの再接種は推奨されていない。

 それでも、BCGの効果によりウイルスの増殖を抑えられ、感染の急激な拡大が留められているとすれば、今後の感染爆発を防ぐ戦力の一つとして期待できる(3月26日 BCGはなぜウイルス感染予防効果があるのか(2018年1月号 Cell Host & Microbe 掲載論文) | AASJホームページ)。現在治験が進められているいくつかの薬と共に、ワクチンができるまでの時間をつなぐ上で、上手くいけば世界的に大きな意味を持つことになるだろう。

 

 さて、日本の場合にはBCG接種により運よく欧米より有利な状況にあるのかもしれないが、それが社会的混乱を招かないわけではない。ただ、致死率が仮に低く収まるとすれば、過度に恐れなくても良いという話になる。経済的問題を今言うのは空気を読まないような雰囲気ではあるが、正しく恐れることは非常に重要だと考える。例えば、武漢での致死率は実のところ1.4%程度ではないかと言う研究報告も出てきている(新型コロナの致死率、武漢で1.4% 研究論文 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News)。この報告が正しいと言い切れるとは思わないし、1.4%でもインフルエンザと比べて十分に高いのは間違いないが、それでもイタリアを含む欧州の状況を基準に考える必要はないと私は思う。

 韓国や台湾、シンガポール等の致死率も低いのは、何らかの理由があると考えてよいように思う。清潔な生活を送っていることもあるだろうし、全てがBCGによるのかどうかはわからない。それでも感染拡大を防ぎ、ギリギリの状況になっている医療リソース(都内の感染症指定医療機関で何が起こっているのか(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース)を守ることは間違いなく必要であり、先に光明を見出しながら現在の苦難に高い民度を活かして取り組みたいものである。

 マスコミや野党の、単純に足を引っ張るためにするような行為は厳に慎んでいただきたい。