危機対応と民族の本性
マスクの強奪合戦が世界中で起きている(東京新聞:米、ドイツのマスク「強奪」か タイの空港で20万枚:社会(TOKYO Web)、Turquía retiene un avión con respiradores para España)。ほんの少し前は、中国国内で起きたそれ(修羅場の中国、新型コロナで仁義なきマスク徴用合戦 地方政府が他の都市からマスクを「強奪」する異常事態(1/4) | JBpress(Japan Business Press))を笑っていた国々での出来事である。私自身も、中国に今回の世界的なパンデミックの責任がいくらか(ウイルス研究を漏らしたなら根源的かつ重大な責任)あると考えているが、目の前で起こっている危機的事態に対処して国民を守る義務は本質的に各国にある。問題が落ち着いた後にどれだけ中国を追求しようが構わないが、いま国民を守るのは国家の責務である。グローバル化の経済的利益に目がくらみ、その準備を怠ってきたツケを先進国も今払っているところなのだ。
現段階で、中国を揶揄したからと言って現在進行形の問題を解決などできやしないが(「ポケモン埋めている」と軽口 中国追悼式に仏TV記者―新型コロナ:時事ドットコム)、欧米人による東洋人蔑視の本性も徐々に見えてきた(ダルビッシュ、アジア系差別「怖い」コロナ拡大で不安吐露…今後も米国に残る方針)。一方で、中国がお礼に日本にマスクを送っているという報道がちらほらとあったが、実際は日本に輸出するマスクを接収(中国からマスクを出荷できない 中国側「規制なし」)しているのが実態である。さらには、世界中から医療関係物資を中国に送っていた(Chinese Company Sent Millions of Australia's Coronavirus Supplies to China - National File)。
食糧危機についても、既にFAO(国連食糧農業機関)がアナウンスしている(新型コロナに続き「世界的食料危機」の恐れ、国連とWTOが警告:時事ドットコム)。更には、こんな情報も飛び込んできた(中国・雲南省、干ばつで100万人以上被害 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。元々、蝗害により東アフリカや中東、パキスタンでは食糧危機が生じているところ(バッタ大量発生、数千万人に食料危機の恐れ、東アフリカ | ナショナルジオグラフィック日本版サイト)に悲観的な情報が引き続き入ってきている。こんな状況のため、世界各国では食糧輸出を制限し始めた(日本農業新聞 - 新型コロナ拡大で食料生産国 自国優先し輸出制限)。いずれも国家の生存本能といえば良いが、本性を現した泥沼の争いと言えなくもない。それは国家単位でも、民族単位でも発生している。
日本の食料自給率が低い(日本の食料自給率:農林水産省)のは既知のことだが、今後生じるであろう世界的な貿易の停滞は日本にも大きなダメージを与えることが予想される。コロナ禍が半年ほどで収まれば大問題には至らないかもしれないが、それ以上継続するといかに国民を生かすかという深刻な問題に広がりかねない。特に米中が経済戦争以上の反目をする中では、航行の安全性さえ担保できないかもしれないのだから。
この感染症が収まるのかに関する私の考えは、治療薬が開発されない限り一貫して否定的なものである。中国のような徹底的な隔離(それに準ずるドイツや韓国のような検査と隔離)により一時的な時間稼ぎはできるだろう(「感染爆発は避けられない」...韓国・京畿道知事が「心の準備」を求める(徐台教) - 個人 - Yahoo!ニュース)が、おそらく経済がそれには耐えられない。時間稼ぎにも効果はあるが、最終的に治療法が確立されなければ延々続く経済消耗戦になる。そんな中、日本は経済と感染症対策の両立という難しい道を目指そうとした。これまでは検査が少ないこともあり世界的に少ない患者数(死者数)だったが、今後は難しいかもしれない(Hironori Funabiki on Twitter: "日本は第2波が各地に襲いかかっている状況。欧米から3月初旬に入ってきたのが広がっているということか?Second waves are hitting at multiple locations in Japan.… ")。これまで日本(韓国も含め)で広がっていたものと、欧米で広がっているウイルスの感染力が異なるのではという意見は一定の説得力を持っている。
PCR検査増大については、検査員の充実と隔離政策がセットで賄わなければならないが、おそらくそれが日本では容易にできなかったのであろう。東京都の検査能力が340体/日という情報(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tosei/news/documents/20200324_01.pdf)があった。検査体制が不十分だという指摘はまさにその通りだが、今指摘しても体制の急な改善は難しいだろう(特に、質のいい検査員をどれだけ確保できるかの問題)。検査体制拡充の努力は最大限行いながら、限られた感染症対策のリソースを保持し、最も良い結果を導いてもらいたい。
世界では国家をかけた生存競争が始まった。ウイルスとの闘いも重要な戦争ではあるが、国家同士の戦いも一種の戦争である。もちろん、国家の存続をかけたゼロサムの全面的なサバイバルではないが、間違いなく世界は大きくが混乱する。そんな時期だからこそできる謀略が存在する。諜報戦、恩売り、情報操作、デマによる混乱拡大、内部スパイづくり等々。最後には、世界の政治首脳へのウイルスによる攻撃。それで高齢の政治指導者たちがダウンすれば、野望を持つ国にすれば最高のチャンスを手にすることになる。目の前のウイルスだけではなく、世界は弱いところを突いてくるのだ。
できることなら、日本政府と国会は下手な政局などに囚われず、しっかりとした危機対応をしてもらいたいと願っている。