Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

小国家存続危機と中国覇権阻止

 コロナウイルスは先進国でのエピデミックを経て、今後は途上国に広がっていくことになる(国連事務総長「強力な国際協力必要」途上国の感染拡大に危機感 | NHKニュース)。既にいくつかの国では感染者や死亡者が拡大しつつあるが、医療衛生条件が劣悪な途上国では、感染の広がりを抑制することは困難であると予測される。特に人口が少ない国々は、国家存続すらが危ぶまれる状態に陥る可能性は高い。例えば、イタリア北部に位置するサンマリノサンマリノ - Wikipedia)は人口が3万人強の小国家。実質的にはイタリア経済に依存しているが、既に32名の方が亡くなり、感染者も266名に達する。人口比で言えば死者はおおよそ0.1%(日本で言えば12万人程度に相当)、感染者は0.8%(日本で言えば100万人相当)となる。日本でそれだけの感染者が出ると、おそらく経済は麻痺してしまい、再開にも大きな困難と長い時間がかかるだろう。イタリアの支援を受ければ再建可能だろうが、イタリアやスペインはこの状態に近づきつつあることが大きな問題である。同様のケースでは、モナコ公国モナコ - Wikipedia)もある。感染状況や死者数サンマリノほどではないが、既に国王が感染するという状況に陥っている(モナコ国家元首 新型コロナウイルスに感染 | NHKニュース)。

 それ以外、太平洋やインド洋には数多くの小国が存在する。大陸から隔離されているが故に、まだ感染者が出ていない国家(例えばナウルナウル - Wikipediaなど)もある(新型ウイルス、世界で最後に到達するのはどの国? - BBCニュース)が、逆に言えば一度感染者が出ると対応しきれない可能性が高い。そうした国々は、元々中国から軍事拠点を得るために援助を受けていることが多い(南太平洋と中国の海洋進出/黒崎岳大・太平洋諸島センター副所長に聞く:朝日新聞GLOBE+)。もちろん、その関係を構築しなかったパラオのような国もある(パラオの新型コロナウイルス感染者ゼロと、背景に見える「中国」との関係(宮路秀作) - 個人 - Yahoo!ニュース)が、現状をいつまで維持できるかと言われれば難しいのではないか。特に、政治中枢に感染者が増加すると国家の体制維持すらが困難になるケースも想定できる。

 

 おそらくはこの状態が続けば中国が救済の名目で動き出す(すでに動いている)ことは間違いないだろう(ファーウェイ、新型コロナと闘うガーナにビデオ会議設備寄贈 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。途上国だけではなくイタリアやフランスにもマスク外交を仕掛けたり(中国のイタリア支援は「マスク外交」か、中国紙が反発「ならば中国が提供したマスクを使わなければ良い」 (2020年3月13日) - エキサイトニュース)、既に露骨に見えるほどいろいろな手を打ち始めている。ただ、その結末は最終的に実質的な属国化につながる道であり、中国による世界覇権のための拠点づくりであるのは明白だろう。だからこそ、その前に日本やアメリカなどが協力して予防救援に出向くことが重要となる。

 中国はそろそろ徹底的な人民管理により、社会活動や生産施設等の再開(新型コロナウイルスの影響が残るなか、中国は徐々に日常を取り戻そうとしている|WIRED.jp)を始めた。共産党政府の予定通りに進む復旧はある意味驚くべきことだが、欧米諸国が混乱の極みにある間に手を打とうという狡猾さを持ち、独裁国家だからこそできる強引さを最大限生かしている。人民の命が安いからこそ可能な方法と見る。そして、ロシアも同じような道を進み始めている(ロシア、「コロナ対策」で進む監視強化…スマホで位置把握 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン)。だが、日本や欧米の人たちは一部を除きそんな社会を望まないし許容もできない。

 

 欧米が非常に大きなダメージを受けているからこそ、日本は世界において重要なポジションにいる。今後、権力拡大の誘惑に囚われた中国は間違いなく、世界中に手を伸ばし始める。それは、内実国内景気が危ない状況にあるからこそ行われる問題でもあり、国内の不満を外にそらすための方策でもある。すなわち、小競り合い(局地的な紛争)は想定内だと考える。もちろん、中国内も一枚岩ではないため、それが完遂されるかと言えば絶対ではないが、チャンスとなれば大きく歩みを進めるだろう。

 本当は、国会でつまらぬ揚げ足取りに終始するよりも、こうした世界的な問題の議論をこそを行ってほしい。まあ、中国から様々な利便を図ってもらっている人たち(政治家、メディア、民間企業等)の暗躍により、それが容易でないのは承知している。

 欧米が再び力と秩序を取り戻せば、中国は容易には動けなくなる。特に、アメリカからの金融を用いた攻撃には耐えきれない。だからこそ、リーマンショックの時と同じように世界復活の原動力となることで、実質的な利益を享受しようとなるだろう。そしてその中に様々な戦略が紛れ込んでいる。金と恩義と篭絡により。

 

 その全てを日本が防げるはずもない。ただ、小国を応援することは可能である。だからこそ、小国の実質的な存続を守るための取り組みを、日本が主体的に進めてもらいたいと願うのだ。