Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

水際対策と蔓延防止策

 新型コロナウイルスはいよいよ世界中に広がり始めた(イタリア、新型ウイルスで12人目の死者 感染者370人超 - ロイター北欧でも新型コロナウイルス 同日にノルウェーとスウェーデンで感染確認(鐙麻樹) - 個人 - Yahoo!ニュース)。まだ、その特性は十分にわかっておらず、夏季(高温高湿時)に沈静化するのか、致死率は最終的にどの程度になるのか、繰り返しの罹患はあるのか(【速報】一度感染した大阪の女性、退院後に再び「陽性」…新型コロナ『再感染』か『再燃』か (関西テレビ) - LINE NEWS)、劇症化するきっかけ等、研究やデータ分析が必要なことは数多い。ただ、非常に感染力が強く封じ込めが容易でないことだけは多くの人が感じているだろう。

 

 一方で、政権叩きのためにメディア(特にくだらないワードショー)が不安を煽っているが、検査の拡大をせよと叫ぶことが無意味なのは多くの専門家たちの語る話(https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-sakamoto?utm_source=dynamic)でかなり理解され始めたと思う。最初から日本政府の打っている手はそれほどおかしなものでないことは、繰り返しエントリで書いてきた。この考えは、2009年の豚インフルエンザの時の教訓からきている。水際で完全に封じ込められる感染症の場合には、そこでの完ぺきなスクリーニングが有効だが、それ以上の感染力を持つ感染症では国内に入ることを前提として、被害を最小限に抑えるための対応が必要となる。要するに二段構えの対応である。そして、今回新型コロナウイルスの危険性が認知され始めたのは1月中旬。既に国内での広がりはあっただろうし、中国以外からの感染の広がりも十分に考えられた。

 一方で、情報が拡散する現代社会では、真面目に数を世界に報告すれば却って不利な扱いを受ける(韓国からの入国拒否 17カ国・地域に拡大 | 聯合ニュース)こともある。国民の不安解消という目的もあるので、渡航拒否を行うことも必要となるが、貿易や流通に依存しきっている現代社会では、容易に止められない現実が存在する。日本がアメリカの様に鎖国しても生きていける国であれば、そうした選択肢も不可能ではないだろうが。 当初より、世界的な蔓延は不可避と考えれば、特定国からの入国をストップしても感染の広がりの時間稼ぎにはなるが、封じ込めが不可能なのは過去の研究でも明らかになっていた(渡航制限では新型コロナウイルスの感染拡大を防げない理由 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン))のである。

 

 逆に、水際対策に必死になってきた国は蔓延対策にすぐに変更できなかったりする。当初より、日本以外の国でも広がりがそのうち明らかになることについては触れてきたが、水際対策を取っている国では、それ故に国内での蔓延防止に対して後手になりやすい。日本の対応は当初より国内での広がりをある程度想定したものであったのが、違う点である。

 ただ、一旦国内で広がり始めた以上、問題になるのは医療リソースの確保である。韓国の対応が良くないと思うのは、国民の知りたいという希望にそのまま応えたため、莫大な検査希望者を誘発し、その場所での感染拡大を引き起こした可能性がある。仮に、感染しているとわかっても治療薬が存在しない現時点でできるのは、安静にして免疫力による回復を図る事しかない。検査(単に感染を知るだけのこと)に医療リソースを費やすことで、それ以外の多くの病気の人を危機に追いやる危険性がある。これは相当に危ないことであり、検査数が少ないことを問題視する一部のメディアやワイドショーコメンテーター等には猛省してほしいと思う。

 

 さて、私たちはこの新たなウイルスとの一時的な共生(駆除も含めて)をこれから始めることになった。致死率が1%程度とインフルエンザよりも高いことは恐怖感を与えるのは事実だが、それに対する最も効果的な対策はこまめな手洗い、うがい、除菌用アルコール等の活用である。また、社会的不安が広がっている今は、一時的にでも各種集会やイベント等を自粛するのもあるだろう。だが、似たような感染症で定着しているものも数多くあることを理解し、日々衛生環境に気を付けることが最も重要である。

 また、政府としては経済を殺さない範囲で、どの程度の規制をかけていくかを判断するのが急務となる。日本は、エネルギーや食糧を他国に依存する鎖国しては生きていけない国である。だから、ウイルスと上手く共存する方法、社会的な仕組みの構築などに知恵を絞ってほしいと思う。

 まだ、今回のウイルスにはわからないことが数多くある。未知故の恐怖があるのは事実だが、煽りやデマに踊らされずに理性的な行動とメディアリテラシー能力を活用してほしい。