Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

現金給付より無利子貸付+一部返済免除はダメなの?

 メディアやネット界隈では、政府の経済対策に対する不満が数多く出ている(遅すぎ、ショボすぎ…安倍政権のコロナ対策は、まるで話にならない(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース)。もっと規模を拡大し、減税も行い、スピードも早めるべきだと。確かに、アメリカは早々に2兆ドル規模の経済対策を打ち出した(トランプ氏、2兆ドル規模の経済対策法案に署名 新型ウイルス - BBCニュース)。その動きから見れば、日本政府の動きは確かに遅い。更には、実際には行われないだろうアドバルーン的なものとして「和牛券」や「寿司券」などがリークされて失笑を買っている(「和牛商品券」という愚策が提案されてしまった理由 - 山下一仁|論座 - 朝日新聞社の言論サイト)。だが実のところ、私は政府が今どれだけ大胆な対策を打ち出しても大幅な経済の落ち込みは不可避であり、拙速すぎる対応はその後の打ち手を失う危険性があると感じている。もちろん、私は経済政策の専門家ではないので素人の適当な戯言と思って読んでいただいて結構。

 

 アメリカは日本と異なり社会のセーフティーネットーネットが充実していない。いや正確に言えば、良いところも悪いところもあるが、基本的に弱肉強食の社会体系により構成されている。成功者とそれ以外の間に大きな差があるのが当然という共通認識がある。だからこそ、弱者救済に見える日本のような皆保険を導入することができないでいる(「オバマケア」が機能不全に陥っている理由 | アメリカ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。

 その点、日本はかつて「国民総中流」と名付けられたように、比較的貧富の差は小さい。最近、総体的な貧困が増えたという話があるのは事実だろうし、改善すべき点も少なくないとは思うが、それでも世界を見れば比較的バランスの取れた状態を維持していると考えている。それは海外に行ってみれば実感するのではないか。もちろん、人によっては印象が異なるのは理解しているが。

 

 さて、経済政策で言われている現金給付額は、様々な額があるもののアメリカと同程度とすれば10万円/人程度である。仮に家族4人とすれば一時金として40万円。これで1か月から2か月は生活を維持できる可能性は高い。貯蓄があれば1年以上と言うことにもなるが、厳しい人たちは貯蓄がほとんどないと考えた方が良い。こうした現金給付は2度目3度目は簡単に行えない。

 だから、私は最初に行うべきは無利子貸し付けではないかと考える。実際既に打ち出されてはいる(新型コロナウイルス感染症特別貸付|日本政策金融公庫)が手続きが難しいのと事業に限定されていることが問題だと考える。家庭への貸し付けも含めて、事業規模、家族構成に応じた無利子貸し付けが、マイナンバーや企業番号により一定額まで可能となる仕組みを導入する。政策金融公庫は受付のみで基本は無審査。加えて、特別な理由があれば追加審査によりもう少し大きな規模の貸し付けが可能となる仕組み。半年から1年は返済が猶予される。新しく設立したばかりの企業は怪しいため除外される(あるいは一定の審査を受ける)。その上で、経済的な損失状況が明らかになった段階で、状況に応じて返済の一部が免除される。初期免除額は決めておいても良いし、さらに免除額は今後の被害状況に応じて拡大される。要するに、それが現金給付と同じ役割を果たす。

 ウイルスによる社会的損害の全容は、現時点で専門家でも把握しがたい。インパクトある対策を最初に打つというのも一つの考え方だが、それは最初の対策で十分にカバーできることが前提になる。全体の戦局を見定められれば、逐次戦力投入ではなく最大戦力による殲滅作戦もとれる。だが、今回のそれは非常に困難ではないかと思うのだ。

 

 無制限とは言わないが、事業規模、家庭規模に応じた貸付なら、今後の収入状況を来年度の申告により把握できるので、現時点では貸し出した上で状況に応じて返済を求めることが可能となる。今は不安が大きいため、大きめの金額を手元に確保したいが、将来の予測がつくようになってきた段階で一括の返済も可能にする。

 申請さえすれば、確定申告(決算申告)で登録されている口座に振り込まれ、その後にその申告が妥当であるかどうかを確認していく。中には踏み倒す人もいるだろうが、そうした人たちはどのみち同じような運命になっていく。

 初期設定の金額をどう設定するかは専門家により決めればよいが、例えば4人家族なら50万円としておき、企業や個人事業なら昨年の決算額から推定する。特殊事情がある人だけは、別途申告の上で認められれば積み増される。

 

 あくまで貸付なので、余裕のある人たちは借りない。無利子なら借りるかもしれないが、次の年の決算で利益が上がっているようならば利子を取るという制度を組み入れてもよい。安心料として余裕のある人や企業はその程度は払ってもいいのではないか。

 申告ベースでそれぞれの状況を後で確認できるため、不公平感が無くなり、その上で早期の支給を可能にする。これ以外に、減税をしてもよいし、その他の施策を考えてもよい。今求められているのは何よりも速さであり、それが難しいと策を練っているのであろうが、まずは貸し出してあとで調整できる仕組みが良いのではないか。

 

 まあ、私は素人なので抜けや間違いもあるかもしれない。と言うか、多分あるだろうと思うので、おかしければ指摘していただきたい。でも、今求められる速さと公平さを両立させるにはこのような方法があると思うのだ。その上で、経済に及ぼす被害状況に応じてあとで調整もできる。詳細は専門家が考えればよいと思うが、変な「お米券」とか「和牛券」とか考えるよりは、必要な場所に必要な金額を早期に届けることができると思うのだが、いかがだろうか。(3/31 20:00タイトル一部変更)