Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

少子化対策の効果

 以前より、フランスなどで大きな額の子供手当が支給されており、一定の効果を上げたことが知られている(5 経済的支援(児童手当・税制): 子ども・子育て本部 - 内閣府)。ここにきて、新しい子供手当案がいくつか邸産されたことが話題となっている。自民党の衛藤少子化担当大臣が国会提案したのは第1子には月に1万、第2子には月に3万、第3子以降には月に6万という毎月案(少子化対策で「第3子に月6万円」案 衛藤氏進言に首相「必要な政策だけど…」 - 毎日新聞)である。少し前には2ちゃんねる創設者のひろゆき氏が一括案(ひろゆきの提言(1)――「1人産めば1000万円支給」で少子化は解決する (1/4) - ITmedia ビジネスオンライン))をネット上で提示している。いずれも昔からある議論だが、この問題を少し考えてみたい。

 

 そもそも少子化の原因が婚姻数の減少であることについては、既に何度も触れた。だが、既婚者の子供の数をを増やすという考え方もないわけではない。おおよそ、一組の夫婦から二人の子供が生まれている(第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口問題研究所)。DINKsDINKs - Wikipedia)を標榜する夫婦や、身体的な理由で子供ができない夫婦もあるので、それを除けばもう少し高い値になるだろう。正確な数字はわからないが、仮に子供を持つ家庭の平均値が2.3人だったとしよう。ただし、国としての平均出生率は現在おおよそ1.44(出生数・出生率の推移: 子ども・子育て本部 - 内閣府)である。この値を人口維持に必要な数2.08に増加させようと考えれば、1.45倍に増加させることが求められる。

 これを現在子供を持つ夫婦が単純に引き受けるとすれば、一家族当たりおおよそ3.3人の子供を持っていなければならない。要するに、ほとんどの兄弟姉妹は3人から4人いる、今よりも平均値として一人は子供を増やすという状況を示す。果たしてそれは可能かと考えると、正直難しいと言わざるを得ない。あくまで私の直感に過ぎないが、子供を数多く持たないのは経済的な理由よりも、家族のライフスタイルが核家族的なものになっているからではないか。

 

 元々、政府は人口減少対策として女性の社会進出を奨励(女性が輝く日本へ | 首相官邸ホームページ)している。そのために、保育所の待機児童削減などを推進している現状がある。一方の女性は、専業主婦になりたいという希望を持つ人が少なくない(ある職業の女性のなんと80%以上が専業主婦になりたいと思っていた! | TesTee Lab(テスティーラボ)| 若年層(10代、20代)を調査するアンケートメディア専業主婦希望率・第1位の日本。世界と日本のジェンダーフリーを考察 | クラウドファンディング | ソーシャルレンディング | マネセツ)、と言うかむしろ多いくらいである。その背景には、各種制度が専業主婦がいることを前提に組立らているというのもあるだろう。現在、税金などでも徐々に専業主婦のメリットは削られ始めているが、まだ社会的なイメージはそうでないのかもしれない。

 また、子供の数が多くなれば実質的に専業主婦にならざるを得ないというのもある。日本ではベビーシッターの利用率も7%程度と他国と比べて極端に低く(【熱と暮らし通信】意識調査:世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」を徹底調査、育児の分担において日本は父親の分担度合が最下位、日本で“ワンオペ育児“と感じているワーキングママは6割超 | ニュースリリース | リンナイ株式会社)、親元を離れると専業主婦として活動せざるを得ない状況がありそうだ。そもそも、価格の安い公的な保育所の営業時間が短く、本格的な仕事復帰が容易ではないのもあろう。

 

 一方で、婚姻数の増加を実現できたとすれば、夫婦のもつ子供率がこれまでと同様に2.0程度とすると、婚姻数に比例して子供の数が増えていく。一つには生涯未婚率が上昇子していることがある(未婚化の進行: 子ども・子育て本部 - 内閣府)。例えば、30~34歳での未婚率は、男性でおよそ2人に1人、女性でも3人に1人とされる。特に出産のことををふまえて考えた場合、女性の25~29歳の未婚率が3人に2人というのは、数字の上だけではあるが非常に大きな問題であろう。30歳で結婚してから3人以上の子供を持つというのは非常に難しくなるのだから。

 さて、25~29歳の女性未婚率が大きく上がれば、少なくとも少子化という側面のみで考えれば大きな効果が出るだろう。こういう状況を踏まえて平均出産数を伸ばすのと、婚姻数を上げるのはどちらが有効か。それは考えるまでもないのではないか。

 

 まず、私は子供手当を増額するのであれば、そこに母親の年齢の項も加えたほうが良いと思う。この手当は、お金で子供を釣るようなものである。ただ、実効性の側面で言えばその前の段階のことを考えるのが先だ。もちろん、平等の側面から考えると年齢により差異をつけることは不満が出るかもしれない。だが、婚姻促進効果を考えるとそれが明確である方が良い。

 だが、それ以上に婚姻に対するインセンティブを高める方が良いだろう。見合い結婚の減少が、そのまま婚姻数減少につながっていることについては過去にも書いた。例えば、見合いの仲介者に成功報酬としてお金を出してもよい。さらに、その成功報酬は夫婦維持期間に応じて段階的に払われる(偽装を抑制するため)。また、その夫婦にも婚姻期間に応じて何らかのインセンティブが与えられる(所得税免除でもよい)。

 

 自由意思との兼ね合いにより、こういった政策に否定的な意見があるのは承知している。だが、数字の上でのシミュレーションではあるが、人口減少を大きな社会問題として考えるのであれば、一考する価値があるのではないだろうか。