Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

出産は義務か

消費高齢化が謳われて久しいが、多少の変動はあっても人口維持できると言われる出生率2.08にはほど遠いのが日本の現状である(現状で、1.3〜1.4程度)。もちろん日本以上に少子化である国も少なからぬ数が存在し(欧州やアジア)日本のそれが突出している訳ではないものの、発展途上国以外でも出生率が高い国々(アメリカやフランス)のレベルに届いていないのは間違いない。
ただ、アメリカであっても出生率が高いのはヒスパニックや黒人系であり、逆に言えば一定以上の文明に達した国家は出生率が低下するのは避けがたい。そして、移民を加えることでそれを抑制できるのだが、同時に人種や宗教を含んだ各種の社会的な問題を抱え込むことにもなる。移民問題における欧州の失敗から学ぶことは少なくないであろう。

さて、世界的に日本が突出して低いわけではないものの、それでも社会維持のために少子化対策は考えられなければならないのは言うまでもない。現代社会において、少子化の一番の原因は婚姻率の低下であるが、それこそが成熟社会ならではの問題である事も示している。少し前に2.0を若干切ったとは思うが、結婚した夫婦の出生率はほぼ2.0付近で推移しているので、現状の少子化の一番の原因はやはり結婚しないことにある。一時期もてはやされたDINKSなんて言葉も今では死語になりつつあるような気がしてるし、実際子供のいない夫婦も持ちたくないよりはできなかたという面の方が多いようにも感じている。
逆に結婚しなくても過ごしていけるということは、社会が豊かであり女性一人でも生きていけるという証拠でもあろう。最近では東日本大震災後に結婚願望が高まったり、あるいはデフレ不況の継続でそれが高まりつつあるようには思うのだが、それが日本の現状を大きく変えるような状況には至っているようには見えない。

しかし個人としての(結婚しない、子供を持たない)自由が保障され、かつ国家(社会)として少子化が問題だとすれば、両者をマッチングさせる何らかの根本的な方法が取られない限りにおいて現状は変わらない。変わるとすれば、日本が再び貧しくなったときではないか。
豊かさを保ちながらも現在の社会を存続させようとすれば、これまでとは覚悟が異なる手段を用いる必要があるのではないかと思う。これまでの政府方針は、少子化解消を謳いながらも個人の自由を最大限尊重する方法しか取っていない。子供を産むことに明確なインセンティブが働かないだけでなく、結婚することにそれが働かない状況では、もはや現状を変えるのは無理なのだろうと思う。
移民は文化的な問題が相当に大きいので、私は経済界が主張するように安易に広げることには反対だ。ずいぶん前に案を書いたが(婚活と少子化対策http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20110805/1312481417)、これも易々と取り組めるものではないだろうし、マスコミはこぞって「人買い国家」などと揶揄することになると思う。
だとすれば、行えるのは日本国内の婚姻を増加させるためのインセンティブである。現状最も必要なのは、個人レベルの出産を義務として考えるような流れではなく、社会として明確に結婚が進むような特典を付けることを考えるべきなのではないかと思うのだ。
結婚はどうしても個人の相性や裁量だ(すなわち権利)と思われがちではあるが、そこに踏み込む施策なしにおそらく現状は変えられないのだ。