Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

本音と経済余力

相変わらずの言葉狩りに辟易する面もあるが、麻生副総理の自分自身について語った内容にマスコミが噛みついた。ただ、以前と違うのは擁護の意見も早々に出ている点がある。以前総理だった頃には些細なことですら全面的なバッシングの嵐だったのを考えると、風向きが少々変わりつつあるのかもしれない。
延命治療「死にません、なかなか」=麻生副総理が発言、すぐに撤回(http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013012100359
麻生副総理、やっぱり口が滑った!?終末期医療めぐる発言を午後に撤回(http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20130122-OHT1T00003.htm
麻生失言に賛否 終末期医療への言及メディアは否定的だけど…(http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130122/plt1301221214004-n1.htm

事実関係については少し調べればわかることではあるが、基本的には自分自身について述べた部分であって老人医療や終末医療一般についての発言ではない。もっとも、舌禍については慎重でなければならない立場でもあり、表現の曖昧さの揚げ足取りは想定しておかなければならないだろう。
ただ、最も重要な部分は個人的な問題とはしながらもなかなか触れられない終末医療のあり方について言及したことがある。総論では命の尊厳を言いながらも、現実には経済的な問題が常に付きまとっている。本音と建て前のせめぎ合いが飛び出てきたと言えなくもない。

そう言えば少し前のことではあるが、俳優の武田鉄矢氏が中国や韓国のことに触れたこと(http://www.j-cast.com/2013/01/18161909.html、www.youtube.com/watch?v=csaEK7kFtn8)と言い、これまで裏では囁かれながらも表には出てこなかった(というか、政治家が発言すればメディアによるバッシングで政治生命すら脅かされていた)ものが公然と語られるケースが増えてきた。
私は、中国や韓国に対する憎悪にも近いような言いがかりに与するつもりはないが、それでも事実をきちんと見据えた上で言うべきことは言う姿勢を尊重する。だから、それが中国や韓国世論を怒らせるような内容であったとしても必要であれば堂々と言えばよいと思う。
俳優の高岡蒼甫氏が韓流のごり押しにフジテレビと揉めたことなども記憶に新しい。この例もそうではあるが、多くの場合には中国や韓国からのクレームに面する前に国内メディア等の洗礼を受けなければならないのが現在の日本の特徴だ。そして、そこでは建前が本音を封殺することがまかり通る。もちろん、何でもかんでも本音を言えば言い訳ではない。ただ、本音を偽り空虚な議論を繰り返しても実質的な意味はない。必要な議論に目を背けてはならないのだ。

総論賛成各論反対という言葉は、なかなか物事を決められない状況を説明するのに適当な言葉ではあるが、建前が本音を縛るような状況もこれと構図は同じである。社会における礼儀や常識として発言して良い内容と悪い内容があるのは間違いないが、常識とは別の形でメディアがそれを代行してるとすれば、メディアにその権限があるのかという問題に加えて、そもそも議論の深まりを阻害しているのではないかという意味でも社会的損失は小さくない。
日本が豊かだと自己認識しており、また中国や韓国の間の経済格差が大きかった時代には、その豊かさ故にこうした問題は玉虫色の扱いとなってきた部分がある。一種タブーとして、大きな問題を放置先延ばしすることが可能であったとも言える。しかし、日本経済の退潮が誰の目にも感じられるようになり、あるいは中国や韓国との経済格差が大きく縮まった現在では、本来タブーであってはならない「形式的タブー」に取り組む必要が高まっているのではないか。それは、建て前と本音で言う本音の部分である。

言葉狩りは、社会的弱者を守るという望ましい面と共にこうした本音を封殺する側面がある。私達は、飾り立てた綺麗な建前ではなく腹を据えて本音を語り合う時期に来ていると思うのだ。