Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

AI・ロボットで少子化対応宣言すべき

 実質的な移民政策(日本政府が「本格的な移民政策」に踏み出したと言える理由(毛受 敏浩) | 現代ビジネス | 講談社(1/5))とも揶揄される外国人受け入れ政策が進められている。外国人受け入れに動かざるえない一番の理由は安い賃金で働く労働者の不足(日本の「移民政策」を成功させる真っ当な方法 | 政策 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)であるが、これは主に農業やサービス業あるいは中小企業が欲している側面が高い。貿易により利益を得る大企業は国際的な競争にさらされており、如何に価格を下げるかを競っている。私は、日本企業の商品低迷の最大の理由はブランド力を確立しきれなかったことだと思うが、それを価格競争で乗り切る方法論である。

 日本の人件費は世界レベルで考えれば高い(「世界の最低賃金ランキング」から導き出す 「海外進出戦略の新たな指標」 | 海外 | 海外進出ノウハウ | Digima〜出島〜)。安い人件費と競争するために必要な措置は人件費を下げるか、あるいは高い価値の商品を売ることが出来るかが必要である。一時期、日本企業は安い人件費を求めて国外進出を次々と進め、その最先端は中国であった。だが、次第に中国の人件費が上昇していくと共に、政治的リスクが看過できないレベルに達してきた。チャイナプラスワン(「チャイナプラスワン」とは何? Weblio辞書)ということで東南アジアへの進出も広がったが、インフラ整備の問題や技術力・勤勉性の問題で狙い通り上手く行っているところばかりではない。海外進出は発展途上国の成長願望と表裏一体であり、その国が成長すれば(人件費が上昇すれば)また新しいフロンティアを探し続けるといういたちごっこになってしまう。

 あるいは、日本の空洞化を懸念する政府などの働きかけにより日本での生産を増やしたいという思惑もある。確かに日本での生産は品質維持や効率においては意味がある。また、日本人の雇用が増えることになれば、内需拡大に意味がある。ところが、価格面での国際競争力を維持しながら雇用を拡充するためには人件費を下げることが求められる。また、多くの大企業は下請け企業を活用したサプライチェーンを持っている。企業収益を維持しながら価格を下げるためには、結果としてコストダウンを常に要求する状況が続く。本当に安い人材を欲しいのは、こうした上からの圧力を受ける企業であろう(農業や、サービス業も社会的な価格低下圧力にさらされている)。下請け保護の政策はいろいろと取られている(自動車産業に届け!下請けを救いたい政府の願い:日経ビジネスオンライン)が、それが実効的であるかはまた別であろう。下町ロケットなどのドラマがヒットするのは、大手企業に下請け中小企業がいじめられるのは当然であるというステレオタイプなイメージが受け入れられている証拠とも言える。

 ところで、外国人労働者受け入れにおいて少子化問題を人員不足の原因とする意見もあるが、日本の労働生産性の低さや女性・高齢者の労働率を考えればまだまだ余力がない訳ではない。実際、日本政府も公務員定年延長を検討する(公務員の定年延長 給与7割水準 :日本経済新聞)など、こうした労働力の活用には積極的(一億総活躍社会の実現 | 首相官邸ホームページ)である。だが、現状の人手不足のカバーには不足と考えるからこそ、実質的な移民政策と言われるような取り組みに前のめりにならざるを得ないのだと想像する。

 ここで疑問に思うことは、人手不足をAIやロボット化によりカバーできるという意見(流通業界、深刻な人手不足をAIとロボット連携で生産性改革へ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)はあるものの(AIが救う!深刻な人材不足の問題と未来への展望 | AIZINE(エーアイジン))、あたかもそれと逆行しているように感じられることである。確かに、AIやロボット化により少子化対策と(人口減少はむしろ追い風、ロボットやAI活用促す=安倍首相)する声は総理の口からも出ているが、主体的な動きには見えない。実際には、民間で個別に外国人労働者とAIやロボット導入は併行して進められており、そうしたAI等の導入が本格的になれば政府も現在の外国人労働者政策に取って代えるのではないかと推測する。だが、現時点において言えば国としての方針が今一つ見えにくい。移民問題に関して言えば、既に日本に住む外国人労働者は128万人(「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在) |報道発表資料|厚生労働省)とされるが、日本医住む外国人の数は256万人(法務省:平成29年末現在における在留外国人数について(確定値))である。両者の比率が1:2となっているが、留学生等のアルバイトや不法就労を考えれば200万人弱が日本で働いていると考えても良いのではないか。現時点ではまだ日本で移民問題外国人労働者 - Wikipedia)に火は付いていないが、将来的には深刻な問題を引き起こす可能性がある。それは欧州の事例を今まさに見ているにも関わらずである。今回の外国人労働者受け入れ拡大方針を見る限りにおいて、AIやロボット化による労働者不足への対応いついて政府はまだ本気ではなく、あくまで民間の自助努力に回されている感じがする。

 だが、人手不足に最も大きな影響を受けるのは上述の通り中小企業などであり、そこにおけるAIやロボット化の開発能力は必ずしも高いとは言えない。多くの場合、資金不足により気持ちはあっても動けないことも多いだろう。ここにきて少子化対策に本腰という報道(ようやく本腰。憲法改正ではなく少子化問題解決を選んだ安倍総理 - まぐまぐニュース!)もあるが、実質的には少子化よりも未婚問題(https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2005/01/pdf/016-028.pdf)であり、見合い結婚の再認識でもない限り容易には解決しない。

 私は、日本の労働者不足を将来的にはAIとロボット化により日本は乗り切ると早々に宣言すべきだと考えている。もちろん少子化対策は必要だし、当面は現状のように外国人労働者に期待しても良い。だが、将来的なビジョンとしてはそれを打ち出すべきであり、その上で単純労働のロボット化や効率化を如何に進めるかに研究資金を投入すべきだと考える。中小企業に導入補助を与える施策も必要だろう。AI研究が世界から出遅れていると言われるが、目標とインセンティブが与えられれば日本の研究者は間違いなく成果を上げると思うし、少子高齢化が世界で一番進んでいる日本だからこそ先進的なチャレンジができる。これは一つのビジネスチャンスでもある。今後多くの国が、少子高齢化に本格的に悩まされるようになる。日本こそがそれを先行開発するための最高のフィールドであり、ノウハウを先に集めるチャンスなのだ。だが、そのためには中国製造2025(「中国製造2025」とは何か? 中国版インダストリー4.0による製造改革の可能性と課題 #3DEXPERIENCE |ビジネス+IT)のような国を挙げた方針がなければならない。現在低いとされる労働生産性労働生産性の国際比較|日本生産性本部)の向上にも大きく寄与するであろう。