Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

分配先限定-法人・所得増税

 消費増税に対する批判は大きい(野党はなぜ消費税増税や軽減税率の不合理を騒がないのだろう)が現状国際公約首相、消費税10%を国際公約 解散は法案成立後 :日本経済新聞)としていることもあり、年末の株価下落はあったものの現状では増税停止に進む兆候はない。私は消費増税には反対であるばかりでなく、できるならば税率引き下げを行うべきだと考えているが、法人税https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.pdf)や累進所得税率(所得税の税率の推移(イメージ図) : 財務省)が引き下げられてきた経緯もあり、消費税に頼りたいという流れはわからなくもない。法人税率低減は世界的な競争下での企業定着策(法人税減税の影響とは?日本の国際競争力と減税の関係|BIZ KARTE)であるし、所得税累進課税低減も新規産業へのチャレンジ精神を高める目的もあったように思う。

 税金については結局どこから徴収するかという問題と認識され、その優先順位を争っている状況だが、私は税金の使われ方を誰が決めるかという手法を導入することで、多少変化させられるのではないかと思う。日本で欧米と比べて寄付の意識が小さいと言われている(第13回:日本の寄付金がアメリカの100分の1の理由は?【子供に話すお金の話】 | 節約ライフプラン)が、それを税金と組み合わせることができないかと考えている。

 例えば所得税の累進税率や法人税を再び高くすると共に、その上昇分をどこに使うか指定できる制度を導入できないかというものである。もちろんあまり細かな設定をすることはできないが、例えば「福祉」、「公共投資」、「起業支援」、「科学技術投資」等のテーマを設定して、そこに使うという分配先を決定した課税システムの導入である。確かに政府の差配できる権限は多少減少するかもしれないが、増税分を一種の寄付システムとして取り入れる方法である。その選択先を企業や個人は公表することができる。特に、企業の場合にはそれが企業イメージの向上にも結び付くであろうし、国民としての個人や法人の意志が国の施策に一部ではあるものの直接反映されることになる。

 ネーミングライツのシステムに近いが、自ら支払った税金が日本社会に役立っていることを感じられるようにすること。そんな程度の方策で企業や高額所得者の海外流出を抑制できるのかと問われると、私も十分な自信がある訳ではない。だが、現在の日本経済の状況は大企業は利益を上げているものの、中小企業の多くは十分な利益を上げていない。過去最長の好景気(米経済 過去最長の景気拡大達成か 政権混乱で悪化の懸念も | NHKニュース)とは言われてもそれを感じられない人が多い、すなわち個人の給与が上昇していない状況(日本の28年度平均年収・給料・年収推移や年代別・学歴別・正規非正規別年収差|平均年収.jp)でかつ社会保障費が増大しているのだから実質給与は減少している以上、感じられないのは当り前であろう。もちろん、大企業については給与は上昇しているが、それは労働者の内のおおよそ30%に過ぎない(大企業・中小企業の定義と企業数、従業者数 | 転職グッド|転職前に必ず見ておきたい情報サイト)。この状況で、逆累進性の高い消費増税を強行するのは決して良いことではない。

 私の提案するものは「寄付税制」と呼んでも良い。基本的には稼いでいる個人や法人が社会的な弱者や、国として必要になる事業に投資する形。日本でも、江戸時代多くの大店が橋を架けたりした。「町橋(町橋(まちばし)とは - コトバンク)」と呼ばれる民間事業がそれに当たるが、自らの地域や自らの国を自分たちの力で整備していくという考え方に基づく。大阪の八百八橋(大阪八百八橋)が有名であるが、全国各地にも同様のものが数多くある。多くの場合に、金を出した店の名前が橋に付けられ今でも地名として残っている。税金は国による利益の再分配システムの一部であるが、そこに名誉を加えることで地元や国に資する。ノブレスオブリージュ(ノブレス・オブリージュ - Wikipedia)としての在り様を税制に組み込む方法論である。

 

 もちろん、このような施策を導入すれば反発は大きいと思う。特に、日本という国に対する思い入れが小さな人ほど声を上げるだろう。だが、パナマ文書でも明らかになったように多くの高額所得者や高収益企業が、あらゆる手を使って税を免れようとしているではないか。払いたくない人は税率どうこうではなく払わないために手を尽くす。その中の一つの選択肢が海外脱出という考え方である。だが、本当にそれを目指す人はどれだけいるかについては疑問を持っている。納税金額の高さに合わせた褒章や優遇措置を与えても良い。税金を無機質に集めるのではなく、それに対する見返りを明示するという方法は一つの考え方ではないかと思う。