Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

財務省の誤謬

現状では三党合意により消費税法案は成立しそうな情勢であるが、2014年に8%、2016年に10%などとメディアが報じている消費税アップの道のりは、決して定まったものではない。むしろ、法案に含まれている景気回復条件を考えれば常識的に考えてすぐに消費税を上げることは適わないと思う。
それを決定的な事項だとメディアが報じるのは、メディアが財務省などに尻尾を振っている証拠のようにも感じられるが、それを指し示す証拠は傍証ばかりで決定的なものはない。もちろん、公になるようなそれを残すほど単純なところでもあるまい。そして、新聞社は新聞等の軽減税率キャンペーンにすでに突入している。

なぜ財務省がここまで増税に邁進するのかは、財務省の政治不信が理由であろう。必要な時に増税ができる分別のある政治であれば、ここまでごり押しをする必要もない。必要な時に必要な増税論議をすればよいのである。それが決して成し遂げられないと彼らが考えているからこその今があるのである。今後、仮に何らかの理由で景気が回復したとしても今の政治体制では容易に増税には踏み切れないと彼らは考えている。増税は景気が良くても不人気な政策である。すなわち、選挙に不利となる政策を政治家や与党が取ることなどあり得ないということだ。
私もおそらくそれは正しいと感じる。だから、今回のような首に鈴の付いた形での増税については全く反対というわけではない。景気が良くなれば自動的に増税するという事項を制度に組み込むと言うことである。逆に言えば景気が悪い限りにおいてはそれを行わないという裏返しでもある。
もちろん問題がないわけではない。まずは増税が消費税によるのが最も良いのかという点。そして、景気回復条件をどのように判断するのかという点である。

消費税増税を打ち上げたのは、産業界の賛成を得るためだと考える。法人税アップは国際競争力の観点から容易に受け入れられない。所得税(累進制)アップは可能性があると思うのだが、現状では人材確保などを理由に進められていない。結局、一定以上の税収に繋がるのは消費税しか残らないというむしろ消極的な理由ではないかと感じている。
それも国民には不人気であることは間違いないのだが、政治家さえ巻き込めばその仕組みを作り上げることは可能だ。そして選挙に不利な増税を成し遂げるためには政治家の責任を曖昧にできる状況を作り出せばよい。現状は見事にその作戦上にある。
もっとも消費税が最も良いかどうかの議論をしていては、結局社会保障の改革と同じように議論ばかりで何も進まないという懸念も強い。

結局のところ、消費税の増税については世論でも支持する者は少なくないし、現状の増税反対派と目される人たちも今の経済状況での導入反対が多く、結局のところ焦点は景気回復条件に絞られるだろう。そして、私が財務省が間違っていると思うのがこの景気回復条件を甘く見ているのではないかという点である。
おそらく財務省も消費税導入により税収が一時的に落ち込むのは重々承知しているのではないかと思っている。彼らはそれほどバカではない。あくまで今回のごり押しは、将来結局それができなくなることへの措置なのだ。だからこそ、景気条項を入れることは残っている。本当に今すぐ増税しなければならないと思っているとすれば、そんな条項は取り除かれるかもしくは有名無実なものへと変えられているだろう。それが当初想定していたものほどの明確な数値の縛りは無くなったものの、少なくとも一定の歯止めとして残っていることからして、将来への布石としていることは明らかだ。

ただし、この布石が生きるためには一つ条件がある。それは、消費税がいつアップされるかとは関係なく、日本の景気が自律的に上昇に向かうということだ。消費税の5%程度のでのアップでは財政再建など夢のまた夢なのは誰もが知っているし、それにより社会保障が万全になるわけでもない。
それを実現するためには、結局最終的には景気が回復しなければならないのである。ところが、現状少なくともそれに相当する対策は打たれていない。財務省としては自らの管轄外だと思っているのであろうが、それ無しには実質的な消費税増税は成し得ないであろう。政治の無能は、増税だけでなく景気回復にも蔓延している。
ところが、増税キャンペーンを張るために財務省はその景気回復という道筋にいくつかの大きな障害を作ってしまった。それが政府財政の不安感を煽ることであったり、日本はもはや成長しないという停滞感を与えたりという結果となって跳ね返っているのである。
大事の前の小事と考えるのかも知れないが、本来の大事は景気回復ではないだろうか。だとすれば、消費税増税が小事であって、それのために景気回復にマイナスとなるような要素をばらまいたことは結果として方向性の誤りではないかと思うのだ。

「財政放漫が良いというわけではないが、雁字搦めにしてしまったことが残すツケは小さくない。」