Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

軽減税率と新聞

「新聞に軽減税率適用を」…日本新聞協会が声明(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130115-OYT1T01372.htm?from=main5
漏れなく消費税推進の急先鋒だった新聞社は、以前より新聞のみは税率を据え置く(あるいは引き下げる)ように要望しているのはネット上で批判を浴びていた。国民が情報を得ることは需要ではあるが、現在のように情報ツールが多様化した時代において敢えて新聞のみを特別視する理由はない。そもそも、現在新聞社はすべからく収入減に喘いでいる。考えてみれば、仮にたかだか数%の軽減税率を手に入れたとしてもいかほどもその状況に違いは出ないだろう。
それにも関わらず、そこにすがっている現状は見ていて滑稽にも感じられる。加えて、ここで軽減税率を訴えているのが「新聞・書籍」とグループ化されている点である。私個人としても、できることなら書籍は消費税率を下げてもらえればありがたい(これも絶対ではない)。ただし、現状の新聞にはそれだけの価値は見いだせないと思う。
書籍と抱き合わせなければ主張を行えない時点で、新聞の軽減税率を訴える根拠が希薄になっているのではないか。新聞社は細かいテクニックで現状を維持することに執心するよりも、新しい時代に適応した形に大きく変化しなければならないのではないか。こうした点はそもそも日本の産業に対して新聞社が常々主張してきていることであろう。

私は、現状における消費税増税には否定的な意見を持っている。仮に今年の経済成長率が良かったとしても慌てて来年度からの導入を図るのではなく、最低でも数年は導入すべきではないと考えている。だから、その主張を続けてきた新聞社そのものの姿勢に対しては前から懐疑的だ。
日本の財政赤字が欧州などと比べると数字の上で大きいのは事実であるが、これも指標の取り方を変えれば大きく変わる。日本の場合には国が直接数多くの財産を有しているため、赤字だけではなく固定資産を考えればそれほど突出している訳ではない。そのことに口をつぐんで財政危機を煽り消費税導入を迫った上で、自らのみは軽減税率導入を主張するその姿勢がおかしいと思うのだ。
導入を迫る姿勢はむしろ国民向けの行動ではなく、自社内に対して売り上げ低迷を誤魔化すための方便として使われている感すらするではないか。だとすれば、なんと内向きの議論であろうか。

私も新聞社の存在自体を否定するつもりはない。一次ソースの発信元として、あるいは政府などが都合の良い情報のみを発信しようとする状況に対する歯止めとしても、新聞に限らないマスコミの重要性は理解している。ただ、その形はずっと新聞である必要はない。社会の状況の変化に応じて姿形を変えていっても構わないし、むしろその方が望ましい。
現状の動きは、あくまで既存の仕組みを少しでも存続させようという足掻きそのものであり、だからこそ見苦しく映るのである。何しろ、新聞社が紙面を用いて散々叩いてきた既得権に固執する古い体質の組織そのものの姿なのだから。もし軽減税率を真に必要なものとして要求したければ、自分たちのあり方について真摯に考え、まずは自ら変革していくことが必要ではないだろうか。
少なくとも私の目には、今では新聞が最も古い体質の組織の一つとして映っている。