Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

シェールガスと北方領土問題

三島返還論を森元総理が口にするなど、なかなか方向性が定まらない北方領土問題ではあるが、アメリカで開発が進みつつあるシェールガスhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%82%B9)がその打開を後押しするかも知れない。

2013年、シェールガス革命で世界は激変する 素材、化学など日本企業にも恩恵(http://toyokeizai.net/articles/-/12402

ロシアとしては自ら北方領土返還を言い出す必要はないわけであり、現時点で交渉の先が見えないのは当然である。しかし、シェールガスはこれまでの原油やガスの産出国の体制をがらっと変えてしまう可能性を大いに秘めている。それを考えれば、関連技術を有する日本とすればこれまでと比べて立場が相対的に弱くなるロシアとの間で、様々な交渉において有利な立場を得る可能性が出てきた。

シェールガスは、これまでの天然ガスとは異なる頁岩(けつがん)の隙間に存在するガスのことである。その採取が容易ではなかったことから、存在はよく知られていたものの採算に乗らないものとしてあまり着目されては来なかった。同じ様な非従来型の資源としては、オイルサンド(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89)やオイルシェールhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB)などもあるが、現時点で十分採算ベースに乗ると考えられているのはシェールガスである。
そして、こうした資源は現時点で見つかっているものとしてではあるがアメリカ大陸に多い。

シェールガスが安い価格で輸出されるようになれば、現在の資源輸出国も対抗措置として値下げせざるをえなくなり、結果的にそうした国々の経済状況は悪化する。その代表の一つと見られているのがロシアなのである(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2426)。現時点では、欧州がシェールガスの環境破壊を重視してアメリカほど前のめりになっていない点がまだ幸いしているが、それでもアメリカが旺盛な輸出に傾斜するようになれば、ロシアとしては商売における脅威となる。そのため、奇妙にも思えるがロシアがシェールガスの環境破壊問題に対して最も積極的であるようだ。
樺太近辺でも、かつてサハリン2(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%B32)で日本はロシアに痛い目に合わされている(http://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%B32%E4%BA%8B%E4%BB%B6)だけに、日本としては自国の環境問題が関係ない場所での天然ガス価格の下落は決してマイナスではない。
シェールガス採掘技術が日本の参加などにより更に高度化することで、環境汚染問題などに目処がつけばおそらく欧州も自前での採掘に踏み切るところが増えるだろう。仮にそうなれば、ロシアの立場は益々厳しいものになる。シェールガスの隆盛を支えるのが日本の技術だとすれば、それは北方領土問題においても日本の武器たり得るのではないか。
日本としては、ロシアの状況が厳しい折にこそ北方領土問題解決のチャンスがあることを、ソ連崩壊時のチャンスを逃したことで痛感している。結果的にロシアがガスなどの資源により一定の地位を回復したことで、日本が北方領土を取り戻すチャンスが遠ざかった訳ではあるが、その低迷は再びのチャンス到来と考えて良い。さらに、良質のサハリン沖ガス田などの権益を固めることができれば更に意味がある。
その交渉が、政治家に上手くできるのかと問われれば疑問もない訳ではないが、慌てて交渉するのではなくこうした可能性にも十分配慮した上で交渉を進めて欲しいと思う。