Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ハードボイルドは復権するか

随分昔には少年少女向けの小説はジュブナイルと呼ばれて、オリジナルのジャンルとして確立していた。当時は朝日ヒソノラマ文庫などが有名で、数多くの小説家が青少年向けの小説を手掛けていたと思う。近年ではそのジャンルがライトノベルという形に進化した、、、のか別ジャンルとして確立したのかは定かではないが、萌え文化などの広がりとリンクしながら一つの地位を築きつつある。
もっとも、一種バブリーなまでの現状は一時的な隆盛であって長くは続かないだろうと言うことは多くの人が感じているであろう。それでも、メディアミックスとして展開できる相性の良さが相まって、多くの人がそこに関わることで一大市場を築き上げている(http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1205/16/news016.html)。

一方で、その他の小説はと問われれば出版不況(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E7%89%88%E4%B8%8D%E6%B3%81)も関係してであろうか、必ずしも良い状態にあるとは言えないようである。社会が不況になると小説を書く人が増えるという噂もある(http://writing-s.txt-nifty.com/kouza/2010/10/post-85b4.html)が、近年のヒット作を見ているとどちらかと言えば推理小説の比率が非常に高く、あるいは軽妙なタッチのものや歴史物が主流を占めている。
2011年度人気小説家ランキング(http://www.digital-dokusho.jp/writer-ranking2011/
そう言えば、昔はハードボイルド(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9C%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%89)小説などというジャンルがかなりの地位を占めていたように思うのだが、近年そのインパクトが弱まったような気がするがどうなのだろう。
一昔前、大沢在昌北方謙三などが社会的にも一定以上の発言力を有していたように思うのだが、最近では私の好みの違いか情報の疎さなのか、それほど大きなインパクトを感じられないでいる。もちろん、真保裕一石田衣良などの作品は好きだし他にも良質なハードボイルド小説があり、いくつかは映画になっているのも知っている。ただ、ハードボイルドが生き方を示すものでは無くむしろエンターテインメントの一部としてしか受け入れられていないように感じるのである。
それは推理小説の傾向にも現れていて、ギラギラとした生き方は飽食の時代と相まみえて遠い世界の事のように感じられているようにも思える。時代の変遷と言ってしまえばそれまでだが、今の時代のハードボイルドにはそれを正当づける社会背景に貧しているのであろう。

文化は社会の変化を先取りするように言われることも多いが、最先端のそれは社会を先取りするものの文化の広がりはむしろ社会より足取りが遅いことも少なくない。豊かな日本の豊かさの幻想が現在の小説の世界に無意識に反映されているとすれば、豊かさを失いつつある現実がそこに反映されるようになるのも時間の問題かも知れない。
それは万人が望む社会ではないかも知れないが、それ故に復権してくるものもあるだろう。ハードボイルドがその一つに名前を連ねるかどうかは正直言えば自信がないが、それでもその復活が日本人を強くするのであれば期待してみたい。