Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

地下経済から戴こう

日本国内における正規に課税されていないアングラマネーは約22兆円と推計されるという話がある(WEB金融新聞:http://www.777money.com/torivia/tikakeizai.htm)。もっとも、アングラマネーは統計に載らないものであるためマスコミを賑わす経済効果と同様にその推計がどれだけ正しいかはわからないが、それでもGDPの500兆円と比較して馬鹿にならない金額であるのも間違いない。その75%は脱税と言われており、実際課税を逃れている税収相当金額は数兆〜十数兆円に及ぶであろう。
国民総背番号制の議論は、もともとこうしたアングラマネーを掬い上げようという面もあったと思うが、現状ではまだ導入に近いとは言えない感じがしている。
また、脱税とは別に非課税領域の見直しも検討されて締まるべきであろう。こちらは現状においてアングラマネーではないのだが、宗教法人などによる実質的な営利収益については過去から何度も問題とされてきている。宗教法人も基本的に収益事業を営めば納税の義務があるが、信教の自由との兼ね合いで暴利と思えるものがあったり、公益事業として運営可能なもので実質的に収益を上げているケースも見られる。その全てがアングラマネーに近いとは言い切れないが、ものによってはかなりグレーなケースもあるようだ。信仰の自由を守ることは重要ではあるが、それは営利を目的とするものとは切り離されなければならない。あくまで「信仰の自由」であって「経済活動の自由」ではないのだから。

現状、消費税を1%上げると約2兆円強の税収になると言われている。もちろん、消費税率が高まればその額が目減りするであろうものの景気に左右されにくいのは確かに事実であろう。もっとも、消費税の最大の問題である逆進性の解消を図るために欧州のような軽減税率を導入すれば、それに応じて税収は目減りする。
さて、アングラマネーのうち10兆円が正確に補足されるとすれば、実効税率30%と考えても約3兆円の増収が生まれる。さらには営利宗教法人などへの課税も含めて議論すれば、消費税数パーセント分の税収は捻出できそうだ。しかも、埋蔵金のような一時金ではない。毎年手に入れられるとすればインパクトも小さくない。

実際、混迷を極めるギリシャなどではアングラマネーが国内を流通するお金のうちの約30%を占めるのではないかという話も出ている。地下経済とも呼ばれるそれも社会を回す一つの資金である。ただ、税金を逃れているという点において国の財政には寄与しない。
今問題となっているのは一番に民間経済の低迷であり、その面ではアングラマネーとはいえども民間経済を潤す役割は果たしている。もっとも、それは一部の不公正な利益でもあるので経済を回すという意味よりは社会における公平さの面で不当とされる。ついでに言えば、そこから得られる税収は厳しい政府の財政状況に多少は寄与するであろう。
もっとも、日本の場合に地下経済から厳しく徴税したからと言って、政府の財政状態が急激に良くなるわけではない。あくまで公平性の点において、社会の安定を図るためにバランスを取ろうという主旨だと考えた方が良いだろう。
国民経済が低迷する時ほど、こうした差異についての不満が溜まりがちである。それが政治の手にかかれば中国における薄煕来の人気のように一種ポピュリズム的に利用されることにもなりかねないが、過激にならない範囲では大きなガス抜きとしては使える。
ただ、いじめを無くすのと同じように完全な実現は決してできない。人間は完璧な存在ではないのだから。

「宗教の営利収益も聖域とは言い切れない時代が来るのではないか。」