Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

FRBの利下げは万能薬か?

 アメリカの追加関税10%(トランプ氏、9月からまた中国に追加関税とツイッターで発表 貿易戦争悪化へ - BBCニュース)に対抗して中国は元安誘導(中国人民銀、人民元の大幅な下落続かない-外国企業の不安払拭 - Bloomberg)と農作物輸入停止(中国企業が米農産物の輸入停止 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)の対抗策を打ち出した。中国の強気な行動に対し、アメリカは早速為替操作国に認定(米財務省、中国を為替操作国に認定-人民銀は声明で反論 - Bloomberg)し、両者の対立は激しさを増している。一方、ピーターナバロ補佐官は、FRBに75-100BPの利下げを要求(ナバロ米大統領補佐官、FRBに年内75─100bpの利下げ要求 - ロイター)し、米中貿易戦争の激化を懸念して大きく下げた株価がいくらか戻したりもした。

 

 米中の貿易戦争は実質的に両国による覇権をかけた争いであり、お互いに小さな妥協はあっても根本的な解決の余地はない。特に、押されている側の中国としては不利な状況ではあるが、アメリカの狙いが中国共産党支配体制の打倒である以上、最終的な受け入れは困難となる。だからこそ、共産党支配体制を守ろうとすれば中国は最終的にはアメリカと対立得ざるを得ない。決定的な対立に通るルートや経過時間にはいろいろとあるだろうが、行きつく先は変わらない。

 また、最終的な結論を出さずに先送りを続けるという方法もある。対立構造は明らかだが、それを見ないふりをしながら致命的なところに至らない範囲でさや当てをする。実際、総合的にはアメリカ有利とは言え、中国と異なり弱点も数多く存在する。大統領選挙があること、株価や失業率などに世論の支持が左右されること。中国は強権(武力)でそれを抑え込むことが出来るが、アメリカでは反論も許されること。

 あるいは、アメリカは自分たちの作ったルール(例えば人権や貿易制度等)を守ろうとする傾向が高い。だが、中国にとってはルールは利用するものであり守るものではない。要するに中国の方が耐えようと思えば粘れるのだ。アメリカの方が国家としては痛みに弱い。

 

 リーマンショック後の金融政策について、アメリカは日本と異なり幾度かの利上げを行うことができた。それ故に、再度の利下げ余地を残している。政府とFRBの睨み合いはそこにおいて起きている。実際、失業率は過去最低レベルであり、各種の経済指標も悪くない。本来、利上げ局面であってもおかしくないが、政府からのプレッシャーにより予防的利下げという新たな方策を取った。だからこそ、今後中国との貿易戦争が経済的に負の側面を与えても、こうした利下げ効果による景気維持が可能だと市場が判断している。そのため、世界中の株価の内でアメリカが最も下落が小さくなっている。

 だが、本当にそうなのだろうか。本当に大丈夫なのだろうか。

 

  私は、この貿易戦争の結果は世界経済の優等生であるアメリカですらも、景気後退に引きずり込むものであると考えている。もちろん、そうならないようにアメリカ政府は打てる手をすべて打ってくるだろうが、それでも止めきれない。FRBの利下げがあってもである。

 アメリカの戦略は、中国がどこで折れてくるかを見定めながら、最大限の圧力をかけている方法である。もちろんそれが急激すぎるとアメリカ企業も大きな痛手を受けるため、少しずつ少しずつ歩みを進めている。問題は、中国の妥協レベルがどこにあるかを見定めること。少しずつ締めていくことで際限なき圧力の継続を目指す。

 だが、中国は焦土戦略にも近い国内締め付けによる長期戦に向かうことを決意したようだ。それが、元安誘導などの対応に見て取れる。アメリカの様子をうかがうことを、徐々にやめ始めた。それこそが、米中の全面戦争(とはいえ、武器を使わない)に踏み出すためのアクセルとなる。

 

 お互いに、もう後ろには引けない。こうした場面では、現在FRB保有する利下げ余地は特効薬にはなりえない。そのためには、中国以外にもアメリカ国民の目を向ける場所が必要になる。中国はじっくりと真綿で首を絞める様に。そして、別のトラブル対処を短期的な発火材として。

 場合によっては日本もその圧力対象にはなろうが、個人的にはアメリカは日本をそこまで追い込まないと考える。露骨な優遇はしないだろうが、アメリカもすべてを敵に回してはやっていけないのだから。

観測気球から無敵の国へ

 GSOMIA破棄(日本とのGSOMIAを破棄すべきか、すべきでないか――苦悩する文在寅大統領(辺真一) - 個人 - Yahoo!ニュース)のみならず、東京周辺への渡航制限(최재성 "일본 여행금지 구역, 도쿄까지 확대 검토해야" : 네이버 뉴스)や、果ては日韓基本条約破棄(韓国与党内で「基本条約破棄(1965年体制清算)」主張 – シンシアリーのブログ범여권 "65년 한일협정체제 청산위 만들자" 주장 - 조선닷컴 - 정치 > 외교·안보)まで、韓国の文大統領が自分で語ったり、あるいはいろいろな場所に言わせているようだ。

 

 これらは基本的にすべて観測気球であり、大部分は韓国の国内世論を見るためのものであり、そしてこの内容で日本のメディアがどのように書くかを様子見である。日本でも「与党議員が日韓断交を口にした」等の報道はあり、似たようなものなのですでに政府は理解していると思うが、日本は冷静に対処する必要があろう。

 正直なところ、もう韓国問題は飽きた。見事に自分たちのことしか考えない韓国大統領府の動きを見ていると、「セルフ経済制裁」という言葉が本当にあるのだと実感させられる。

 

 彼らにできることが基本的にほとんどないことは以前のエントリでも書いたが、左斜め上を考えたとき、彼らにできることがないわけではない。それは、国際常識や条約などを一切無視して本当に無茶な要求をするという話である。例えば、日本の自動車メーカーに談合があったと課徴金が課される(日本企業4社に課徴金、韓国公取が談合で告発 - 産経ニュース)らしい。これがここ数か月の葛藤への報復なのか、それとも正当な意味での摘発なのかはわからない。だが、今後不当な言いがかりによる日本企業への嫌がらせ的な対応は増えるだろう。

 現時点では、交流を取りやめる方向での動きが中心(江南区は日章旗を外し、安養市は姉妹都市関係を解消-Chosun online 朝鮮日報国民の10人中7人が「東京五輪ボイコット」に賛成…放射能を懸念=韓国│韓国社会・文化│wowKora(ワウコリア))ではあるが、少なくともどのような言いがかりがつけられるかをリストアップしているであろうことは想像に難くない。ただ、ルールを守っている企業に無茶苦茶な難癖をつけることは本来難しい。というのも他国の企業もそれを見て逃げ出していくからである。だが、文政権に打つ手がなくなるほどに「無敵の人(無敵の人とは (ムテキノヒトとは) [単語記事] - ニコニコ大百科)」の様に我々の常識では想像もできないような手を打ってくる可能性があるのだ。面子を実意よりも高い位置に据えれば、そのようなことも可能になる、というか今までの韓国の反応がすでにそのものである。

 

 ちなみにここにきて、株式市場および為替では韓国売りが広がり始めている(https://jp.investing.com/currencies/usd-krw^KS11 Interactive Stock Chart | KOSPI Composite Index Stock - Yahoo Finance)。日本と本気で喧嘩して韓国が生き残れると考える投資家はそれほど多くはないだろう。落としどころが見つけられなくなるほどに、国際的な資金は韓国から逃げ出していく。おりしも米中貿易戦争も激化しつつあり、余計にリスク回避の傾向が高まりつつある。

 韓国内の景気はそもそもよくなかった。だから韓国人の若者たちは日本への就職を希望したりもしていた。だが、それすらも規制がかかりそう(韓国は日本企業就職博覧会を保留、日本は韓国旅行に注意喚起-Chosun online 朝鮮日報)である。よくこれだけ自国民を痛めつけられるなと思うが、韓国では日本に対してだけは引けない空気が出来上がっている(親日罪:親日罪とは (シンニチザイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科)。下手にそれを宣言すると社会的に抹殺されてしまうため、内心で考えていてもそれを表明できない社会が組み上げられている。

 

 私はそれでも、現在の政権を引きずり下ろすような動きが高まり、内乱のような状況に移るのではないかと想像しているが、現政権は軍や検察を既に掌握しているとされ、香港のような動きに広がるかどうかは予断を許さない。

 日本としては、世界的な韓国への同情(あるいは日本責任論が広がらないように)が向かないように、理詰めで対処して欲しい。しかし、韓国で言う進歩派の程度の低さは日本での民主党の経験を余裕で越えているのだなということがよくわかる。

韓国素人政治

 日本左派(自称リベラル)メディアの援護射撃((社説)対立する日韓 交流の歩みも壊すのか:朝日新聞デジタル)も、日本では全く話題にもされないほどの状況になっている。正直、これほど突っ込みどころの多い社説も珍しい。アメリカは最初から仲介などしていないことは明らか(米高官が日韓の対立巡り言及「米国は仲裁にも仲介にも興味ない」 - ライブドアニュース)なのに、未だにそれを最後に加えてくるのには涙が出そうになる。仕方なくトランプ政権の本気度を疑っては見せているが、そんなことは誰にでもわかるではないか。むしろ中国の方が冷静な報道をしているのだから、日本のメディアもどうしてしまったのか(日本が韓国をホワイト国から除外、韓国が被る損失は日本の270倍か=中国-サーチナ)と言わざるを得ない。他にも各社そろい踏み(東京新聞:ホワイト国除外 「報復」の悪循環やめよ:社説・コラム(TOKYO Web))だが、この論陣に勝ち目があると思っているのだろうか。

 そもそも、今回の輸出管理厳格化に関する一連の手続きについて日本政府に全く落ち度はない。だから、国民から撤回すべきという声が出てこないのは当然の話である。更に言えば、日本は常に理性的な対応を続けており、韓国のみが感情的に当り散らしている状態(韓国、国際会議で相次ぎ日本批判…世耕氏「全く関係ない」 : 国際 : 読売新聞オンライン)であり、冷静に見れば滑稽なのは韓国の方である。正直、もはや笑い話と言うしかない状況なのだ。何度も日本政府高官が言及しているが、ボールは常に韓国サイドにある。

 ここでも何度も書いているが、きちんと手続きすれば何もなかったように韓国にもすべての材料は輸出される。実際、ホワイト国(グループAに名称変更:「ホワイト国」→「グループA」に 経産省が名称変更 :日本経済新聞)に入るのは限られた国家であり、それ以外は全て毎回手続きをしているのだ。今回の騒動において、韓国からきちんと手続きをする、あるいは取り扱いを厳格化するという意見や情報が全く聞こえてこないのは不思議で仕方がない。むしろ全面戦争を想起させるような言葉が政府要人から次々と飛び出している。これでまともな交渉などできるはずもない。

 

 さて、文政権になって韓国の行政府や司法界、そして軍まで(【実録 韓国のかたち】第5部(4)「積弊清算」軍も標的 朴槿恵弾劾巡り市民団体が機密入手、「クーデター」の印象操作(1/3ページ) - 産経ニュース)多くの人事が刷新されたという情報が聞こえてくる。それも露骨なまでの身内人事がなされている(盧元大統領を捜査した検事も辞任、中間幹部50人以上が辞表を提出-Chosun online 朝鮮日報)。彼らが積弊精算と呼ぶ左派による国家乗っ取り作業(韓国“積弊清算”の光と影 自殺者も・・・ | 日曜スクープ | BS朝日)である。外交の場でも、日本とパイプのある専門家は要職を外され、指名できる裁判官は自分たちと同じ思想のもので固められる。もちろん、同様のことは大統領が変われば政府高官が全て変わるアメリカでも行われているが、さすがに今回の韓国ほど露骨ではないし、アメリカで新たに採用されるのは全てプロである。韓国のような素人集団ではないのだ。

 徴用工(戦時労働者)問題も、レーダー照射事件も、そして今回のヒステリックな外交手法も、全ては能力の低い人材が引き起こした喜劇の様なものである。もちろん、プロだからなんでも上手く行くというものではない。日本の外務省が韓国を付け上がらせた元凶であるのは多くの人も気づいているだろう。外の目に余りさらされない内輪社会は多くの場合、勝手な自己論理を汲み上げ自分達に追っての最適解を探してしまう。結果として第三者が見れば信じられないような行為がまかり通る。

 

 素人は、自分の能力の低さを知っているからこそ、余計に自分の価値を大きく見せようとする。要するに、自分を守るために逆切れしやすい。以前からそういう傾向はあったが、最近の韓国の対応を見てると特に素人臭が強く感じられる。それに付き合わなければならない日本の大臣や政治家、あるいは官僚の皆さんにはご愁傷さまといいたくもなる。

 そして、こうした素人集団の癇癪を優しく見守れとのたまう日本の左派(自称リベラル)メディアの同類臭もなかなかにオツである。形式美として、趣があると言っても良いかもしれない。これも何度も書いていることではあるが、日本が韓国の全てを許容しなければならないというのは、日本人の傲慢な思い上がりである。彼らは一個の国として自分たちで問題を解決し、自分たちの将来を決めなければならない。そのために、必要な時には厳しく接することこそが、日本なりの韓国に対する愛情である。

 

 おそらく、このままの状態がずっと続けば韓国は内戦状態の様な混乱に入っていくであろう。ボイコット運動も、日本が反応するほどに過激になっていく。結果的に、日本が甘く接していた方が早くその混乱に到達し、解決の道も遠くなると私は思う。そのそのすべての日本製品をボイコットするということは、中世への逆戻りでもしたいのであろうか。日本に依存し、それを当たり前の権利だと勘違いする国が自分たちで安定した国家運営を出来るはずもない。

 今回の輸出管理厳格化は、日本とすれば非常に優しく親切な指導である。一気に韓国が混乱の渦に陥る様な決定的な制裁ではないのだから。韓国がきちんと自分たちの置かれた状態を認識し、それに応じて適切な行動を取れば全く障害にすらならない。そんな程度のことである。

 

 正直、ここから先は韓国内部の問題である。感情に任せたまま、自分たちがしなければならないことを理解できず、混乱に巻き込まれていく(強まる「ボイコットジャパン」…消費者は0.01%日本産原材料まで見つけだす=韓国 | Joongang Ilbo | 中央日報)のか、あるいは「克日」という形であっても自分たちで再び国を築き上げられるのか。今彼らはその分水嶺にあり、その厳しい現実に立ち向かっていかなければならないと、日本が韓国の一人立ちのためにそっと背を押しているのだから。

 少なくとも、素人的な対応を続けているような政府である限りにおいて、こんな状況は何も変わらないであろう。精神論での「日本に負けない」では実際何の役にも立たない。結局できるのは、日本を貶めるディスカウントジャパンでしかない。それは韓国の価値を全く向上させないということにまずは気付くべきであろう。

津田大介氏を犠牲者にしてはならない

 あいちトリエンナーレにおいて、芸術作品の展示が物議を醸しだしている(あいちトリエンナーレ『表現の不自由展・その後』に「傷ついた」との声…展示方法は適切だったのか? | AbemaTIMES、「平和の少女像」展示中止要請へ 名古屋市長が愛知県知事に:社会:中日新聞(CHUNICHI Web))。この芸術祭の芸術監督を津田大介氏(津田大介 - Wikipedia)が担い、そこで「表現の不自由展」というものが開催されたが、その中身が問題とされている(【問題視】津田大介芸術監督の会見で配布したコメント全文公開 / 日本国民に「自制的に振る舞っていただくことを期待」 | バズプラスニュース)。

 

 個人的な感想を言わせてもらうと、芸術畑ではない彼(一応、文芸評論家という肩書はある)がなぜ芸術監督をすることになったのかが正直よく理解できない(選考委員会を経ているのは間違いないが)。その上で、彼の行った展示構成が妥当・適切であるとも思わない。だが、表現の自由を理由に開催しているのであるとすれば、個人的にはそれをあまり抑止するような露骨な動き(河村名古屋市長、「少女像」展示中止要請へ 大村知事に - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ))をすべきではないと考えている。ましてや、デマの発信に手を貸すことにはならないようにしてほしい(あいちトリエンナーレが「安倍首相をハイヒールで踏む作品を展示」というデマ情報が拡散 | ハフポスト)。あるいは暴力をもって表現の自由を脅かす様なこと(「撤去しなければガソリンの脅迫も」企画展中止に知事 - ライブドアニュース)もす絶対にべきではない。更に加えて、文化庁補助金を取り消すべき的な話(「あいちトリエンナーレ」 文化庁の補助金交付決定はまだとのこと)もあるようだが、是非ともそんなことは止めてほしい。

 この文章を書き始めた時にはまだであったが、少女像等が撤去されるという話になったようだ(慰安婦問題の少女像 きょうかぎりで芸術祭展示中止へ | NHKニュース)。撤去問題がこれだけ大きくなったことで、彼は保守層の反感を買ったが、同時に左派(自称リベラル層)の中において大きく株を上げた。こうした流れこそが、彼らの目指していr内容でもある。多くの左派系メディアが、この問題を大きく報じ始めるだろう(「あいちトリエンナーレ2019」に展示されている「平和の少女像」に関連して – 日本共産党愛知県委員会)。そして不寛容な日本社会を揶揄することになる。

 

 ちなみに、慰安婦像や天皇陛下を揶揄するような展示があるとされる(https://snjpn.net/wp-content/uploads/2019/08/ichi2-1.jpg)が、私は現物を見ていないのでそれがどのような表現であるか判断できる十分な素材は持っていない。往々にして芸術表現というものはその展示空間との関係性により感じ方が変わるケースも多く、脊髄反射的に否定すべきではないと考えている。ただ、見てきた人からはネガティブな反応が聞こえてくるようだ。

 とは言え、彼のこれまでの言動や一緒に活動してい人たちを見ていると、その表現や作家の選定に一定のバイアスがかかっているであろうことは想像に難くない(出展作家 | 表現の不自由展・その後)。言い方は悪いが、現代アートとしてのポリシーというよりは、表現の自由を利用した政治的なメッセージを発した可能性は高い。正直くだらない話だと思う。社会的な反響を得られなくなったオワコンの人たちが、何とか自分たちの言論の場を広げようともがいているに過ぎないように見えるからである。政治的な方向性の近い芸術家たちを取り上げるという目論見でもある。要するに内輪向けのサービス。残念ながら、展示撤回で見事にその目論見は成功したようだ(津田大介氏が謝罪「想定を超えた。僕の責任であります」 [表現の不自由展・その後]:朝日新聞デジタル)。十分な社会的認知度を得て、さらに謝罪することで自分の立場を良い方向にもっていくことに成功した(津田大介氏「電話で文化潰す悪しき事例作ってしまった」 [表現の不自由展・その後]:朝日新聞デジタル)。

 

 今回の展示が大々的に政治問題化するほどに、彼は右派勢力に圧殺された悲劇のヒーローを演じることができる。それは、彼ら自身の狙いそのものである。本当は、今回の件をトリエンナーレの失敗(芸術展示のレベルが低いという意味で)と社会に認識させれば、彼がこのような役割を担う可能性が今後大いに減じていたであろう。しかし、左派のシンボル的な立ち位置に祭り上げられ(香山リカ on Twitter: "津田さん謝るな。津田さん悪くない#あいちトリエンナーレを支持します… ")れば、今後も同じような役割を何度も担う可能性がある。社会の要職(特に大学やメディアなど)には同じような考え方の人が少なからずいるのだから。今後の政治問題化の流れや展開によっては、厄介者としてこうした芸術監督をすることはなくなるかもしれないが、繰り返しになるが体制に反発する彼の個人的な立ち位置が向上する。

 彼の嗜好が偏っているのは、今回集められた他で展示されない芸術というものが、おそらく反体制的な意味で、あるいは日本を揶揄するような意味で制作された作品が多いことが挙げられるだろう。ライダイハン像など決して展示を考えたこともないはずだ。ただ、あまりの露骨に偏ると問題視されることはすぐにわかるため、何らかのバランスを取っている可能性もある(ポリコレ的に許容されなかったものも含むなど)。どちらにしても、結局のところ私がこの展覧会を見ていないので詳しくは何とも言えないでいる。

 

 あくまで一般論でしかないが、正直言って彼の過去の言動等には賛同できない(Z旗新聞社 on Twitter: "あいちトリエンナーレで炎上中の津田大介のほれぼれする二枚舌ぶりをご覧ください。… ")し、芸術に関するセンスもほとんどないと理解している。個人として何が優れているのかよくわからないが、任期付きとはいえ大学で教えているのだから分析力や発信力には優れているのかもしれない。

 どちらにしても、繰り返しになるが露骨な彼の言動を感情でもって脊髄反射的に否定して、権力を使って圧殺することには絶対反対である。それは、現在多くの場所で行われる反ポリコレ表現への弾圧や、保守系論壇へのクレームによる圧力を容認する流れを生み出してしまうから。左派的な活動は、そこを足掛かりにしているケースが非常に多い。

 むしろ、彼の思想的な偏りが明らかになるように、今回の不自由展では展示されなかった別の不自由展を、あるいはマイノリティ展を別途開催する方が望ましい。今からでも間に合わなくはない。それは、実際の展覧会を行わなくてもよい。ネット上でのデータベース化があれば十分であろう。そうした動きにより、彼の企画したことがほとんど意味を持たなくなっていく。

 

 とにもかくにも、彼をジャンヌダルクのような直接的な犠牲者にしてはならない。彼は、今回の様に社会に波風を立てることで自分の立ち位置を確保するスタイルを取っている。だからこそ、彼自身の偏った認識や芸術センスの低さににより、このようなこと繰り返すほどに自然と社会から選ばれなくなっていくのを待てばよい。彼らのような人は、その行動に人々が関心を示さず、社会的なレスポンスもなく、無視されていくほどに存在感を失っていくのだから。

 

(20190806追記)

 どうやら津田大介氏は大きな墓穴を先に掘っていたらしい(https://video.twimg.com/ext_tw_video/1158383221857378304/pu/vid/640x360/LKq3U2yDYl8OnGGh.mp4)。最低限、自分たちが突っ込まれないような逃げ道を作っているだろうと考えていたが、完全に芸術ではなく自己の政治信条を表現していたようだ。これでは、芸術や表現の自由という逃げ道は大きく効果を失ったと考えてよいだろう。

山本太郎

 れいわ新選組に、朝日新聞などのリベラル系メディアが熱視線を送っている(大躍進し損ねた山本太郎・れいわ新選組に必要な事 - 米山隆一|論座 - 朝日新聞社の言論サイト悩みかかえ…れいわ支持 「彼だけ、勇気づけてくれた」 生活苦、貯金5万円から1万円寄付:朝日新聞デジタル)。これは無理もないことで、これまで実質的に自民党政権を引きずり降ろすために応援してきた「民主党民進党立憲民主党」が、不甲斐ないことが最大の理由である。一向に安倍一強を崩すことができず、むしろ野党第一党に安住するがごとき行動を取っているのだから、一時的な現象とはいえ大きな得票を得て時の人になった山本太郎氏に期待するのはやむを得ないことだろう。

 だが、私は正直なところ山本太郎氏は政治家としてはさして注目に値しないと考えている。れいわ新選組は左派ポピュリズム政党と呼称した方が良いだろうが、分かりやすいテーマを掲げて役者仕込みの真剣なパフォーマンスを見せつけるという点で独特である。それはほぼすべて山本太郎氏の能力に依存している。しかし、そのパフォーマンスは確かにイメージとしてわかったような気になるが、よく考えると彼の政策テーマは何を目指しているのかが理解しづらい。つまみ食い的に耳触りの良い言葉を発し、あるいは弱者保護を前面に押し出している(候補者選定が典型)が、それのみでは政権に届くとは思えないのである。というのも、インターネットの発達により政治に興味がある有権者たちは、政治家の資質や中身を良く見るようになっている。一時的には興味本位でもてはやされることがあっても、時間が経過するほどに中身のない候補者は見透かされてしまう。雰囲気で多くの人を誤魔化せるのは最初の一回であり、その特典を参議院選挙で彼は既に使ってしまった。

 

 次の衆議院選挙では、れいわ新選組で大量に候補擁立をした上で、大量当選を目指している(れいわ・山本代表「次期衆院選では100人規模で擁立」 - 毎日新聞)ようではあるが、おそらくそれほど目覚ましい躍進はないだろう(多少の票は集まり数名の当選者は出すし、彼自身も当選するだろうが)。実際、今回の選挙で彼の政党が切り崩したのは、保守系の票でもなく、あるいは浮動票でもなく、大部分が既存左派野党に期待しながらも不満を持っている票だと見られるからである。そういう意味で、左派におけるライジングスターではあっても、政治の舞台全体を見た時には特筆するような存在ではないのである。

 逆に、左派(自称リベラル系)メディアが山本太郎氏に深く入れ込まなければならないのは、論理的な政策ではなく感情的な扇動を推すという意味で、メディアの自殺行為ではないかと思う。今、なんとなく人気があるからそれを応援するというのでは、かつて何度も現れては消えていった芸能人候補と何も変わらない。それに期待せざるを得ないとは末期的症状ではないか。

 

 現在、左派(自称リベラル)系メディアにとどまらず関連する識者たちは、多くの国民の心を揺さぶれるような言葉を発せなくなっている。同じ政治思考(指向)の持ち主である内輪に向かってしか自分たちの正当性を主張できていない。彼らは言葉を駆使するものでありながら、説得力ある言葉を失っている。

 山本太郎氏は、その言葉では不足する分を持ち前の野性的な勘により理解し、彼独特のパフォーマンス力で補った。そして、国会に確固たる一歩を築き上げた。それは確かに彼の能力である。既存左派(自称リベラル)政党にはできなかったこと。だが、その多くは縮小しつつある左派マインドを持つ人たちから流れてきた票であり、新しい異なる考え方を持つ層にはあまり影響を与えていない。だから、私は彼の主張の広がりやその政党の躍進はないと踏んでいる。

 

 現代は無党派層が政治的な勢力図を決定づける。そして民主党の失敗に懲りた無党派層は、その経験により知恵をつけて容易に心地よい言葉にはなびかなくなった。もちろん、あと20年もすればその経験は薄まっていくだろう。しかし、少なくともこの数年の選挙においては無党派層の大部分は山本太郎氏のパフォーマンスには動かされない。今回の参議院選挙において動かされた人たちも、次には考えを改めていくと思う。面白さのみで選ぶことの無意味さを理解しているのだから(そういう意味では「NHKから国民を守る党」も同様ではある)。

 朝日新聞などは、それでも山本太郎氏に期待せざるを得ない。そういう道に追い込まれてしまったということは、日本が大きく変わったということでもあろう。それに気づいていない(あるいは事実から目をそらす)うちには、彼らの望みがかなうことは決してないだろう。

テロあるいは偶発的事案

 日本が韓国をホワイト国から外すことを正式に閣議決定韓国の「ホワイト国」除外を閣議決定 パブリックコメントは4万件超で95%が賛成 - ITmedia NEWS)し、それに対して韓国大統領が強い言葉で宣戦布告的な切り返し(文大統領「もう日本に負けない」「日本は大きな被害を甘受しなければならない」-Chosun online 朝鮮日報)を行った。ちなみに言えば、韓国も日本をホワイト国から対抗措置として外すとし、その上でWTOに提訴するとしている(韓国 「ホワイト国」から日本除外へ=WTO提訴準備も(聯合ニュース) - Yahoo!ニュース)。日本が韓国をホワイト国から外すことを理由にWTOに提訴するとしながら、自分たちも日本をホワイト国から外すというよくわからない論理構成ではあるが、逆に言えばそれ以外には具体的方策を持っていないということでもある。

 あと、韓国政府内ではGSOMIAの破棄も検討(韓国 ホワイト国対応カード GSOMIA破棄や東京五輪などか - ライブドアニュース日本は朝鮮半島の和平構築を阻害、軍事情報協定見直しへ=韓国高官 - ロイター)されているようだが、アメリカから強くくぎを刺されているので実際には破棄できないとみている。とりあえず、それくらいしか日本に対抗できないでいるのだ。あと、シンガポールや中国からはホワイト国を削減するのではなく、増やすべきだという意見(「ホワイト国」除外 第三国が異例の批判=ASEAN外相会議(聯合ニュース) - Yahoo!ニュース)を出しているが、ホワイト国ではない国からすればちょうど良いタイミングで要求できるチャンスが生まれたという意味以上には何もない。韓国を外したことが問題ではなく、自分たちも優遇しろという意見である。中国はアメリカとの関係で無理としても、シンガポールであればきちんとした制度と体制をくみ上げることができれば不可能な話ではない。

 

 さて、文大統領は精神論以外に打ている有効な手がない。とすれば、現在は日本に向いている反日感情が、自分たち政権に向かい始めるのを眺めるわけにはいかない。すなわち、日本にダメージを与えたという何かを演じ続けなければならない。それを第三国や国際機関を利用して演出するのを現在やっているが、もっとも大きな影響力を及ぼせるアメリカが少なくとも現状では日本側に立っているのは理解しているだろう。

 今回の問題は、韓国のずさんな戦略物資管理体制が発端である。逆に言えば、日本は輸出制限しているのではなく、あくまでその証明がなされれば輸出するとしている。それができない状態に陥っている一番の原因は韓国にある。だが、現状でその方向に動けないということは、韓国自身が自分たちの弱点(ずさんな管理体制)を理解しているからに他ならない。問題はそこをつかれると自分たちに不利であるため、問題の焦点を誤魔化すためにむやみやたらと恫喝を続けているのである。

 

 そこで危惧されるのが、政府が直接手を出すわけではないが、義憤の韓国人が行うテロ行為である。あるいは、軍人が偶発的な行為をするというのもあろう。それが起こらなければ越したことはないが、以前も靖国神社で爆発物を仕掛けた韓国人がいたように、日本に対する攻撃は愛国無罪で許されるという雰囲気がある。この感覚が韓国社会で共有されている限りにおいて、韓国内の不満は政権には容易に移行しない。

 すなわち、表立って行われることはないが、国民の抱く不満をそらすために日本において、あるいは日本人に対してテロ的な行為を働く危険性が大きく高まっていることがある。もちろん政府がそれを推奨などできやしないが、それを忖度した個人が行動を起こし、その被害をもって日本のメディアが政策の変更を促すということは起こってもおかしくない。

 さらには、そんなトラブルにおいて日本人から韓国人が被害を受けたという報道がなされれば、一気に韓国国内の雰囲気は反日に流れるであろう。私が危惧するのはその点である。

 

 そんなトラブルがあったとしても、日本政府としては何のやましい点もない。だが、少なくとも文大統領の支持率はさがらないでいられる。さらには、そうした事象に嫌気のさす人が増えるとともに、日本の姿勢に疑問を呈するケースも増加するだろう。

 韓国にできるのは、こうした厭戦気分を演出すること、あるいは日本の跳ね返りを誘導することではないかと思う。こうした挑発には乗らないように気を付けてもらいたいと思う。結果的に、韓国が得意とするレベルの低い泥仕合に引きずり込まれてしまうのだから。

 

 これは私の勝手な懸念であるが、韓国政府の打てる手はそれくらいしかなく、また時間をかけている余裕もない。日本が離れていくことが決定的になった今、世界の資本は韓国という国から逃避を始めていくのだから。

村社会韓国と承認欲求

 反日活動は、「ボイコットジャパン」という個人レベルには留まれず、各種公共団体の交流イベントにまで飛び火(韓国釜山市が行政交流中断 「日本と関係改善まで」 | 共同通信)している。正直、韓国との交流に突出し過ぎている感じもあり本当に必要かもわからないようなイベントも多かったので、これにより多少は正常化するのではないかと考えたりもする。ただ、政治と民間交流は別である(文大統領「経済交流と政治は別」日韓企業は友好的であるべきと主張 - ライブドアニュース)とさんざん言っていたのが韓国側なので、正体が見えたというのが正直なところである。結局、都合の良い時に都合の良いことを言っていただけであるということが、多くの日本人にも改めて見えて来たのではないかと思う。

 

 熱しやすく冷めやすいと称される韓国人の特性であるが、それ以上に大きなのが日本以上に社会的同質性が強要される状況である。反日に否定的な態度を取れば、「土着倭寇韓国で反日の新造語、「土着倭寇」で日本叩き 若者の間で盛り上がっていた日本ブームにも冷水浴びせる(1/5) | JBpress(Japan Business Press))」といったレッテルが貼られ多くのバッシングを受けると共に、時には社会的に抹殺されてしまうことすらある。日本人からすれば良くわからない罪により謝罪させられ、罰金や投獄がなされ、大学教授ですら職を失う。元大統領ですらこの流れからは逃げられない。これは一種の村的な慣習でありルールである。

 それは以前から言われているように、国民感情が法律の上位概念として存在するというもの。ただ、その国民感情が正確に国民の意見により形成されているとすればまだましだが、一部の活動家(しかも国家的支援を受けて)がけん引する流れに乗らないと、自分の社会的立場が危うくなるのだから悩ましい。すなわち、自己保身のためには流れに乗らなければならない。

 

 また、韓国人の自国における承認欲求意識がこうした行動に拍車をかける。アメリカなどでのいわゆる慰安婦像建立は、現地韓国人社会が深くかかわっている。その背後では中国が援助している等の情報は聞かれるが、どしらにしても祖国に対するアピールをしなければ彼らの心が満たされないのは間違いないだろう。もちろん、日本に対する「自分たちを認めてしい」という承認欲求も同様に高い。小学生男子が好きな女の子に意地悪しているのと同じ状況が想起されるが、そのせいで迷惑を被る女子生徒側からすればたまったものではない。

 

 私は韓国という国家、あるいは韓国人の最大の問題は相手側の論理(今は日本の考え方やその論理構成)に対する理解度が非常に低いことにあると考えている。韓国におけるメディアの報道等を見ても、自分たちの見たい・聞きたい意見が当たり前の様に溢れている。冷静な分析がほとんど見られない。

 昔の話であるが、よく韓国人は「日本人は歴史を知らない」と言っていた。確かにかつては日韓関係など興味が無かったので知らなかった日本人は多い。しかし、現在ではうっとおしい韓国人のおかげで、韓国人よりも両者の間にある歴史問題についてずっと良く知っている。一部には根拠のない扇動に振り回される人もいるが、歴史的事実や根拠に基づきまっとうに理解している人も多い。むしろ韓国の方が、歴史的事実など無視しておかしな根拠に基づく主張を行っている。それが「恨」という感情に引き起こされているという分析もあろうが、そんな話は国内のみに留めてほしい。

 

 これは、日本と韓国の文化的における根本的な違いに起因している。韓国では、自分たちが正しと考えたこと(根拠が無くとも)を貫くためには、その過程はどのようなものでも(嘘を吐こうが、時には犯罪的であっても)よいという社会なのである。一方の日本は、嘘を吐いたりすれば仮に自分の主張が公平的に見て正しくても、その行動自体で否定されてしまう国である。

 この両者間の文化的断絶は決して小さくない。両国の距離が離れている(例えば経済的あるいは時間的)時には気にならないかもしれないが、それが近づけば近づくほどに、交われば交わるほどに大きな問題となる。これ以外にもいろいろと文化的な認識の違いがある。それが両国の間に大きな諍いを生んでいる根本原因であろう。それを最も認識していないのが、両国のメディアである。自分たちの常識で相手国を見続け、評価し続けているのだから、上手く行くはずなどない。

 

 あと、韓国の若者は高齢者層と異なり比較的親日的であるという話は以前書いた。ただ、同時に長年続けられている反日教育(彼らは決して認めないが)はこれまた確実に若者たちの心理に根を下ろしている。今回の日本側の措置を受けて、最も熱心にボイコットをしているのは若者たちである。この心理は、おそらく「自分たちは決して日本が嫌いではないのに、裏切られた」といった感じであろうか。ここでも、日本のことをきちんと見ていない状況が垣間見える。

 実際には経済情勢の悪さがある為、その不満に向けどころに反日活動は丁度良いという安易な逃げ道であることも影響している。政府に不満が再び向かうことも今後は考えられるだろう。ただ、反抗しない日本というイメージは全ての韓国人に強く刷り込まれてしまった。その最大の責任は日本の外務省にあると思うが、だからこそ、今回の措置では日本は決して引けないし、引いてはならない。

 

 私は韓国の専門家でもなんでもないが、少し状況を眺めていればこの程度のことは容易に想像できる。結局は、日本も変わり(韓国に厳しい態度を見せる)韓国も変わらなければならない(自分勝手は通用しないと知る)。それだけのことなのだ。朝日新聞などが使う同じ言葉とは内容が違うだろうが。

焦る朝日、逃げる毎日

 朝日新聞が社説を用いて再び日本の韓国に対する輸出管理厳格化に反対意見を呈した((社説)日韓の対立 舌戦より理性の外交を:朝日新聞デジタル)。これに対する反論はすでにいろいろなネット空間でなされていると思うので、ここではその無理強い的な内容にまで詳しく触れるつもりはないが、相当に苦しいのだなということを感じた。いつも通り喧嘩両成敗的に解決策を提示するように見せているが、そこでお互いさまと引くと先に吹っ掛けた韓国が得をする形である。万が一、何の成果もなく日本が今回の手続きを取りやめるようなことがあれば、国民からの大きな反発を招くことは疑う余地もない。それを止めるのは、韓国が理不尽かつ一方的に日本に対して言いがかりをつけてきたすべての措置を取り下げ謝罪した時でしかない。

 そもそも、朝日新聞が韓国に同情的な意見を示すのは、韓国人に支配されているからではなく、日本政府を批判するためであるのは多くに人も理解しているであろう。敵の敵は味方的な流れで、日本が韓国に否定的な立場をとるほどに彼らは韓国を擁護せざるを得ない状況に追い込まれている。いや、自分自身を追い込んでいる。

 その時に取る手法は前述のとおり喧嘩両成敗的な役割を演出すること。だが、この度の行動で韓国は国際常識的に考えても無茶苦茶な要求を日本に行い、日本は理性的にそれに対して国際的に許容される措置で抵抗している。日本に1の落ち度があるとすれば、韓国には10や20の落ち度がある。なぜ、同じレベルで引き下がらなければならないのか。要するに、事の重大性を朝日新聞胡麻化している。

 

 もう、何度も複数のエントリで触れてきたので自分自身でも飽きてしまったが、新聞が公平であるなんてことは誰も信用していない。むしろ、近年はその思想的偏りが強化されていすらする。これは、朝日新聞を応援する思想を持つ人たちにすり寄らなければならない状況があるから。そして、そうした人の数はどんどんと減り続けている(選挙結果や選挙結果の年代構成を見ても明らか)。

 新聞とは情報を売る産業ではあるが、もはやライバルが多すぎて単純な情報のみでは売れない時代になっている。テレビは、実質的な情報コングロマリットとして傘下に置くことで、ある程度の棲み分けを実現できた。だが、ネットの隆盛により状況は一変する。新聞のコンテンツは、記者が取材してきた情報と、そこに識者あるいは社内の論説委員等による解説を付け加える形式である。ところが、そこに登場する以上の知識と分析力や文章力を持つネット上のブログが数多く表れた。もう10年近く前である。

 

 これにより、新聞情報の信頼性はそうしたブログに劣るケースが非常に増えてしまったのだ。更に学識経験者以外の識者は書籍として自己の研究や分析を社会に提示してきたのが過去のあり様だが、こちらもブログから始まり今ではネット動画を使用した情報発信に広がり、一部ではネット上のネット(擬似?)テレビに出演するまでになった。時には、意見が対立する論者たちと激しい議論を行い、自己の主張の正当性を示していく。典型例が橋下徹氏であろう(彼の場合はテレビからスタートだが)が、多くの国民はそうした主張に賛同を始めた。一部のテレビ番組(「そこまで言って委員会」等)の影響もあるだろう。それが、どちらかと言えば保守的な言論者が多かったのも現状を引き起こした原因である。少なくとも、テレビ等で少し前にメディアの自縄自縛を破った時期があった。

 逆に言えば、左派の論者も一時期こうした議論に参加したが、ほとんどの場合言論で敗れている。それが選挙投票結果にも表れているし、現状の世論形成にも大きく影響を与えている。

 

 朝日新聞の成功体験は、朝日の報道で世論を動かし、政権を動かすこと。そして、朝日ブランドを確立し、自分たちの主張で日本という国を染め上げることにある。実際、一時期教科書問題や靖国問題等で多くの国会議員の首を取り、政府の謝罪を引き出すような状況にまでは至っていた。天声人語は大学入試に出るともてはやされ、朝日新聞はクオリティーぺーパーであるとまで自称できた。しかし、そんな栄華も今は昔。明らかに社会の状況は変化した。

 問題は朝日新聞は変われなかったこと。あるいは状況の変化を理解できなかった。いや、数々の指標でずいぶん前よりその流れは見えていたのだ。理解しようとしなかったというのが正しい。今回の日韓葛藤での朝日新聞のスタンスは、正直相当に苦しい。冒頭に示した社説に賛意を示す国民は、朝日新聞読者でも少数派ではないだろうか。自分たちが政府と異なるスタンスを持っていると主張する、そして社会を動かさなければならないという自分で作った立場が、自らの可能性を狭く閉ざしている。他の道もあるし、取り得る方向はあるが、自分自身がそれを選べない。よく考えると現在の韓国と同じではないか。事実ではなく、自らが理想とする観念をもとに現実を解釈し、実ではなく虚(立場)を取るメンタリティ。そういう意味では冒頭の社説は、似た者同士だからこそとも思えてしまう。

 

 さて、毎日新聞の方はもっと悲劇的である。こちらも左派系(自称リベラル)新聞として王道を行く朝日とは異なる道を探さなければならない。新聞自体がメディアとしての支持を失いつつあり、特に左派系の支持率は下降の一途であるのだから、部数確保は絶対の必須事項である。ところが、売り上げが低迷すれば全国紙でありながら記者すらまともに配置できない(毎日新聞が200人規模の早期退職、役員の呆れた「仕事削減策」に怒る現場 | 週刊ダイヤモンドSCOOP | ダイヤモンド・オンライン)。結果、記者個人における責任は増大し、ずさんな記事(毎日新聞 vs 原英史氏 フェイクはどちらか – アゴラ)が増加する。あるいは資金確保に奔走して、中国のあり得ない宣伝に加担(毎日新聞が中国プロパガンダ紙のチャイナウォッチを拡散:英ガーディアン報道とDHCの公開質問状 - 事実を整える)する。

 社会に対しては徹底的な追求と謝罪要求をするのに、自らのミスに対してはだんまりを決め込む。正直、公正な報道を担うメディアとしての体をなしていない。朝日新聞が左派(自称リベラル)の中央を走っているため自分自身の居場所がなくなり、スクープに走らざるを得ないのはわからなくはない。新聞界の文春砲になりたいのではないだろうか。だが、そういう意識(無意識でも)があること自体、新聞としての適性を失いつつある。

 

 何も大手新聞が生き残らなければならない理由はない。国民としては、別の手段であっても情報が入手出来ればそれでいい。人口構成を考える時、左派(自称リベラル)を支持する人の数は今後も減少する。それ以上に新聞という業態も衰退し続けるだろうが、自分たちが今のままで生きられないという焦りが、極端な行動や方法を取らせる。

 やはりどこかで見ている現象の写しの様に見えるのだが。

泣きつき韓国と日本の防衛ライン

 韓国のWTO理事会への訴えはそもそも場違いな議題のため全く意味を持たなかったのだ(世耕弘成 Hiroshige SEKO on Twitter: "昨日のWTO一般理事会では、輸出管理の運用見直しについて、日本の立場をしっかりと説明しました。出席者からヒアリングした現場の雰囲気を報告します。(続く)"日韓がWTOで応酬、対韓輸出規制強化巡り - ロイター)が、精神的勝利を国内向けに喧伝し(‘WTO 대전’ 일본 몰아붙인 한국 “일본, 세계무역 교란”-국민일보WTOで強気の韓国“支持得た認識” 対立浮き彫り - FNN.jpプライムオンライン)、次はRCEPでの問題提起を行う(RCEP交渉会合で日本輸出規制の不当性訴えへ 韓国政府 | 聯合ニュース)らしい。それだけではなく、あらゆる国に日本の措置の不当性を訴えかける行為(韓国外相、31日からタイ訪問=日本の「不当性」主張へ:時事ドットコム)に勤しんでいる。一部には、議員が政府に対して安保理にまで提訴するように申し入れたという話も聞こえてくる。

 

 今回の論争を元に戻って考えると、韓国の不適切な戦略物資の扱いに対し日本から疑義が提示され、それに対する回答がいつまでたっても韓国から為されなかったことが原因である。逆に言えば、疑義に対する真摯な回答がなされれば問題なく輸出されるというもの。しかし、逆切れの様な行動を続けるというのはやましい点があるからではないかというのは誰でもが想像することであろう。

 きちんと過去(3年分という情報を見たが、事実かどうかは未確認)の用途を説明でき、今後の管理体制についても証明できる資料を提出すれば、許可されるのである。ところが企業以上に韓国政府がこれに感情的に反応し、日本との経済戦争だと言った対応を次々に口にしている。実際それは成功し、大統領の支持率はアップしている(日韓関係が悪化すると韓国大統領の支持率が上がる 関係改善で支持率下がる - ライブドアニュース)らしい。

 

 さらに言えば、現状の日韓の葛藤は全て韓国側が持ち込んだものである。日本側の着地点とすれば、こうした不当な論争は全て韓国側が解決するしかない。しかし掛け金を釣り上げておいてお互いさまという落とし方は韓国の得意技(韓国首相「日本政府、事態を悪化させず外交的協議で解決策を見いだそう」 | Joongang Ilbo | 中央日報)であり、更にそこに飛びつく日本メディア(社説:日韓がWTOで応酬 この延長上に出口はない - 毎日新聞)も多い。現状の韓国の大部分の宣伝は、上記のとおり国内向けのファイティングポーズであり、そしてもう一つは議論を拡散して論点を曖昧にしてしまうことである。国際的な仲裁を期待する時、日本の態度が頑なで両者の主張の間に落としどころがあるだろうと考えさせる(米企業研究所「日本は韓国から手を引くべき:サムスン電子とSKハイニックスはファーウェイでない」(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース)ことにある。それに対する日本政府の対応は、冷静であること及び問題点を明確にしているという点では今のところ非常に的確(「ホワイト国」から韓国除外 閣議決定へ(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース)である。ただ、最終的な落としどころ戦略ではどうだろう。国内で反政府を錦の旗に掲げるメディアの反発((社説)日韓の対立 舌戦より理性の外交を:朝日新聞デジタル)はあろうが、もう少し強硬策を持ち出しておいても良いかもしれない。

 

 話を戻すが、告げ口外交に続くこの泣きつき外交は成功しない。理由な日本の根回し(特に半導体サプライチェーンに迷惑をかけないこと)がある程度行われているであろうことと、今回の問題で韓国に与するメリットがないことが理由である。そして最大のポイントはアメリカが韓国を暗にも支持しないことであろう。

 韓国内では、大統領支持率のアップや日本製品ボイコットの運動は短期的には広がるが、長期的に見るとそれも急速にしぼむことが考えられる。韓国人は熱しやすく冷めやすい。というのも、経済的な不満が高まっており、そのはけ口として今回の日本の輸出管理強化は丁度良かったという側面がある。日本締め出しは、韓国の方がダメージが大きいのだが、一時的な発散のためつまらない活動をしているなと思う。

 あと、日本人はこの問題において政府の行動に賛同してはいるが、それほど真剣には考えていない。感情的になっているのは韓国ばかりという状況である。

 

 また、いずれどこかの企業が上記証明を行うことで輸入が認められれば、「日本が折れた」、「韓国が勝利した」と精神的勝利を大きく宣伝するに違いない。だが、それは当初よりのプランであり韓国の勝利では決してない。世界的な半導体生産を滞らせては日本への非難が高まってしまう。そうではなく、今後は主要な製品の輸出に関するさじ加減が日本政府に握られるということなのだから。すなわち、徐々に半導体生産を日本・アメリカ・台湾・その他に移していくことが行われていく。

 

 さて、日本のこうした考えは当然韓国政府もわかっているだろう。だが、彼らに打てる有効な手はほとんどない(韓国政府、日本の輸出厳格化を「天災レベル」に認定=「過度...|レコードチャイナ)。八つ当たりの様に、日本への嫌がらせを激しくするのが関の山である。泣きつき外交もそうした対抗策の一環である。少しでも同情を誘い、自分たちを被害者の立場に置く。それを韓国内で大きくアピールして支持を拡大していく。何度も書いているが、韓国政府の行動はその大部分が国内政治闘争である。

 

 日本の防衛ラインは、韓国が仕掛けてきた不当な論争で全て韓国がそれを撤回することしかない。現状の泣きつき外交は結果を得てはいないが、将来的な布石としてはある程度有効となる可能性がある。国際的な仲裁は、喧嘩両成敗的なケースが少なくない。私は日本政府の理性的な姿勢を評価しており、韓国と同じ土俵に上がる必要はないと考えている。ただ、それでも今回については韓国の不当性をきちんと主張し、その上で日本も上手くふっかっける策をもう少し講じた方が良いのではないかと思う。

世代交代が変える日韓関係

 日韓問題は、現状において改善の道筋が全く見えない状況にある。私が考えるこうした事態に陥った原因は数多く存在する。最大の要因はアメリカの態度のが変わったことと考えているが、韓国が日本人が抱く贖罪意識が世代間で引き継がれていると錯覚していること(極論的に言えば「甘え」)が次に来るだろう。韓国の我儘や条約を守らない姿勢を理由とする人は多いだろうが、これはそれぞれの国にそれぞれの論理があるから追及しても仕方がない。結局は国家間のパワーバランスにより決まるものであり、これまではアメリカが自己都合により韓国の我儘を日本に飲ませてきたことが現状を引き置こした。

 

 だが、現在日本人には韓国に対する贖罪意識を持つ人は非常に少なくなった。政治家の一部や左派言論人にそれらしきことに触れる人が多少はいるが、これもそれほど大きな力を持っていない。結果的に、日本政府の韓国に対する優遇措置取りやめに賛同する世論が大部分(韓国へ規制強化に9割超「賛成」 経産省意見公募で対韓輸出管理厳格化「支持」71%…読売世論調査 - ライブドアニュース)だ。日本人としては当然の反応だが、韓国人にはそれがわからない。おそらく文大統領にも正しい情報(日本人の反発)は届いていないのだろう。

 

 一つには、左派政党が支持を取れなくなったのと同じように、世代が変わっていることが大きな理由として挙げられる。そもそも戦後70年以上経過しており、戦争を知る世代の大部分は社会の第一線を引退している。私も戦後生まれだが、韓国が言ってくる難癖には全く当事者意識を持てない。それ故に、その理不尽さには大きく反発したくなる。

 加えて、アメリカが徐々に韓国を見放し始めているというのが大きい。韓国の戦略的な価値が高ければ、今でも日本に圧力をかけているだろうし、それを日本政府も知っているからこそこうした対応に出ている。それは結果的に日本の利益構造にも変化をもたらしている。韓国を鵜飼の鵜のように利用して利益を上げてきた日本だからこそ、韓国の我儘にも多少は付き合ってきた側面もあった。更にアメリカから結局的に強制されるのであれば、それを活かして利益を上げようというのは当然の考えになろう。

 

  だが、もはやアメリカは韓国に期待してない。これは文政権だからという話ではないと私は考えている。国家としての戦略的価値を見限り始めている。それがなければ、戦時統制権の返還や、合同演習の取りやめにまでは至らない。もちろん親米政権が韓国に出来てすり寄ってきても、そこで得られるだけの利益を取れば放置するのではないかと思っている。

 その雰囲気を嗅ぎ取った日本が、韓国に冷たく接する(というよりは投資利益の回収に走る)のはある意味で当然の行動である。こうした動きはネットで叫ばれるような断交にいきなり入るものではない。徐々に利益を吸い上げながら抜けていく。だから、見た目には弱腰に映ることも多くあるだろう。だが、これまでの動きを見る限り、日本政府はもはや韓国に甘い顔はしない。これまで調整役に乗り出していた長老議員たちも、現状ではその役を担うつもりはない様である。

 

 こんなニュース(長嶺駐韓大使「特使派遣なら10月の即位儀式前に」=韓国国会議員との会談で | 聯合ニュース)も出ている。韓国が即位の礼の前までに日本に特使を送る(=日本が納得できる提案を持ってくる)ならば、即位の礼に出席を認めるという内容である。逆に言えば、いつまでも現状を引張り騒ぐようならば、世界中の国々の代表が参加する場所に韓国は呼ばれないということになる。実質的な断交の意思を示すに近い行動となる。

 もちろん、即位の礼に呼ばなかったから直ぐに国交が途切れる訳ではないが、韓国を特別視しないというレベルではなく、韓国とは距離を置くということを端的に示すのだから。制裁でもなんでもない内容ではあるが、国際的には笑いものになりかねない状況であり、メンツを重んじる韓国はこれにも大きく反発するだろう。政治と民間交流は別と言っていた韓国側から、民間交流をどんどんとボイコットしているのが現状(朝鮮通信使祭り中止? 釜山市が日本との交流事業「全面見直し」表明 | 聯合ニュース)なのだから。

 

 即位の礼に関する件は、国内事情のみに拘泥してまともな外交ができていない文政権に対する強烈なメッセージではあるが、それに対して彼らが理性的な反応を示せることはないだろう。とにかく韓国の外貨稼ぎ頭である半導体産業を、韓国が態度を改めない限り今後じわじわと締め上げる宣言を日本はしており、その次には韓国の扱いを日本が軽んじると世界中に示し始めている。これは、キャピタルフライトを誘導する焦土化作戦の迂遠な方法ではないかと考えている。

 

 他方、実は韓国の若者たちは日本に対して比較的強い敵意を持っていないとされる。こちらも世代交代により雰囲気が変わる可能性が無い訳じゃないが、日本と比べると20~30年遅れている感じ。逆に言えば、あと20年程度は感情的な対立が容易には解けない状況がある。

 当面は、日本が韓国を見限りそれに韓国が反発する流れが続き、十年以上の年月をかけて徐々に韓国世論が変わっていくという時間が両国の間には必要であろう。こうした感情的な諍いは、一度その立場に立った人は容易に軸足を変えることはない。すなわち、現在反日を主導しているメンバー(動かされている若者ではなく)がリタイアするまでは継続すると考えた方が良いだろう。

 また、その間に韓国がどの程度経済的な苦境に立つかはわからない。現在のような原理主義的な立場を繰り返していると、日米に完全に見限られてしまう。その姿勢に変化が見えれば多少は日米の立場も軟化するだろう(だが、過去には戻れない)。そこで蓄えられる「恨」が今後の韓国の将来を左右するのではないかと思う。

 

 どちらにしても、日本と韓国の和解には相当の時間がかかると考えた方が良いだろう。