Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

重症化因子を探せ

 私は当初より、今回の新型コロナウイルスは根絶できないと考え、ここでも書いてきた。天然痘やポリオなど、根絶されあるいはそれに近づいている(世界ポリオ根絶計画の現状と病原体サーベイランス)ウイルスもあるが、インフルエンザの様に常に変化し続けて社会から消えないウイルスもいる。今回のウイルスがどちらに近いかを想像し、中国での感染の広がり方と致死率の低さ、そして潜伏期間の長さから類推すれば、SARSと違い余程の偶然でもなければ難しいのは想像できた。ちなみにアジアでは発生しなくなっているが、MERSは今でも中東地域に根付いており終息していない(http://www.nobuokakai.ecnet.jp/nakagawa218.pdf)。かつて世界をパニックに陥れた豚インフルエンザも、今では毎年流行する一感染症になった。今回の新型コロナは、インフルエンザと比べるとはるかに高い致死率(おそらく10倍以上)だが、それが根絶できるという保証はどこにもない。さらに言えば、集団免疫理論についても可能かどうかを疑う声も出て(新型コロナ、回復者に免疫あるか不明 WHOが警告 (写真=ロイター) :日本経済新聞)おり、インフルエンザと同様に困難な可能性が見えてくる。最初からある声だが、ここにきてウイルスとの共存の声もよく聞こえてくるようになった(【識者の眼】「新型コロナウイルスとの戦いと共存への中長期的見通し」和田耕治|Web医事新報|日本医事新報社)。

 

 しかし、希望がないわけでもない。私が着目しているのは軽症者や無自覚感染者の多さである。日本ではPCR検査が絞られているため正確な感染者数はわからないが、おそらく既に感染は公表されている実数の数倍以上には及ぶであろう。だが、その割に重症者が少ないというのが気になっている。もちろん、この時期なので漏れている数字があるのは仕方がないが、多くのそれが隠されているとかいった陰謀論には根拠がない。公表されている死者の数倍~数十倍がコロナで死んでいると本当に信じるのだろうか。感染者数の増加に伴い、徐々に重症者数や死亡者数も増えているが、指数関数的なそれにはなっていないのが現状である。

 典型的な症状以外にも、心臓疾患を引き起こしたりという具合に、肺炎以外の症状にも関与しているという可能性もあるが、数が少なければ誤差のうちに入る。少なくとも現時点で明らかなのは、高齢者の死亡率が圧倒的に高く、何らかの疾患を持っているとさらにリスクが上昇すること。若くても死亡する可能性がゼロではないが、確率的にはかなり低いということ(新型コロナ、なぜ子供は重症化しにくいのか? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト)。

 高齢者でも、重症化しない人もいる。また欧米の状況(致死率等)を見ると、ウイルスの種類が異なるという説も考えられるが、日本人(東洋人)になんらかの耐性があると考えることも十分できる。それがBCGによるものかどうかは不明だが、私は何らかの因子が重症化を防ぐことに作用しているのではないかと思う(年齢、基礎疾患、肥満、性別、喫煙・・・新型コロナが重症化するリスクは?(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース)。

 

 軽症とは言っても、私たちが考える以上に苦しい状態になることはすでに報道されている。ただ、それで終わるのであればインフルエンザの苦しみと大きくは変わらない。それも何らかの治療薬により軽減できれば、嫌ではあるが毎年流行する一感染症に収まることになる。最も重要なのは、重症化させないこと。重症化後の回復率は、現在見ている限り思っていたほど高くない。そして、数多くの人工呼吸器を必要とし、医療崩壊を引き起こす。

 おそらく、何かの因子(http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200331_1.pdf)がこの感染症における重症化を生じさせている。容易に見つけ出せるものではないが、それを知ることができれば社会が抱える問題を大きく解決する。現状、自粛しなければならない一番の理由は、この感染症がどのように感染を広げているのかが完全にはわからないこと、さらには感染した場合の命に係わるリスクがはっきりと評価できないことがある。

 経済でも人が死ぬのは誰もが知っていること。両者のリスクが比較できない状況にあることが、私たちの判断の難しさを押し上げている。経済の方が問題だと、一般的な生活を取り戻すことを主張する人もいるが、私たちは未知のものを恐れる本能がある。本当の危険度は未だ正確にはわかっていないが、恐ろしいと考える本能に背いてまで活動できるはずもない。

 私たちは新たな恐怖に対しては慎重にあるべきだし、また何がクリティカルなのかという根源を追いかけなければならない。当初から言われているように、おそらく8割の人は死を恐れる心配はないし、残り2割についても医療受け入れ態勢が万全であれば半数以上は生還できる。避けられない危険だからこそ、私たちは自棄になったり極論に走るのではなく、ギリギリまで問題の核心を追い詰めていく努力をすべきである。そしてそれが明らかになるまでは、経済をぎりぎりまで犠牲にしても辛抱することが求められるだろう。そのギリギリへの考え方の違いはあろうが、向く方向か明らかである。