Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

Let's go to PROVINES(地方に行こう)

(4/22 10:00追記 この内容は、今すぐに地方に行くことを推奨するものではありません。むしろ、今はうかつに地方に行かないようにお願いします。)

 

 既に何度か触れているが世界的な食糧危機問題が報道され始めた。ただ、現時点で日本がすぐに食糧危機に至ることはない(日本農業新聞 - [新型コロナ] 「米の在庫十分」業界は冷静な対応呼び掛け 東京都の外出自粛要請で)。また、日本でも地方では食料自給率は十分満足しており、仮に食糧問題が発生するとしても主に都市においてとなるだろう。ただ、全体として食料品の価格が上昇するのは避けられない(主要食品価格が急上昇、新型コロナ感染拡大でサプライチェーン混乱 - Bloomberg)。世界的にはお金のある国が食糧を確保していき、貧乏な国が国民を食べさせることができなくなる。すなわち、日本に食糧を買うお金がある限りにおいて不足が問題になることはい。だが、一部の食料品(特に輸入に頼る一部の産品)の枯渇や高騰は避けられない。今年の秋以降から来年あたりが最も影響を受けると考える。もちろん、中国を含め多くの国は同じ状況にある。

 日本は食糧自給率が低い。ただ、これは農業の経済競争力が低い(人件費が高い、生産効率が低いなど)ために生じている側面が強い。面白い話では、外食産業に供給されていたお米がスーパーにシフトした途端に売買単価がアップしたとの話もある。外食産業の価格交渉が相当シビアだった証拠だが、コロナ騒動の結果ではあるものの単価が上がれば農業参入者は必然的に増加する。加えて、食糧危機を感じ取れば防衛的にそれを選択する人も増加するだろう。実際、恒常的に農産物価格が高くなれば、日本に山ほど存在する耕作放棄地が一気にクローズアップされることになる。既に42万haの耕作放棄地がある(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/281114/shiryou1_2.pdf)とされるが、これは田畑全体の約10%に及ぶ。ちなみに、耕作放棄地の場合には再生可能な場所が限定される(全体の半分以下か?)が、農業には後継者不足に悩む場所が多いため、参入者の増加はそちらでも意味があるのではないだろうか。

 

 これまでもUターン、Jターン、Iターンと地方移住を進める声は少なくなかったが、実際には地方都市の流出人口は流入人口よりも多い。若者が大都市に行き、結果として人口が減る。若者が都市に行く一番の理由は就職口だが、その手前にある関門として大学進学がある。大学進学で都会に出て、そのままそこで(あるいは大企業に)就職する。結果として地方には戻らない。これが定番パターンと言えよう。加えて地方大学を出ても、東京などの企業に就職したい人は山ほどいる。

 だが、今回のコロナ騒動で大学も企業のリモートワークに取り組まなければならなくなった。対面の方がいろいろと良い点があるのはその通りだが、リモートのデメリットが大都市での生活費に値するかという比較はこれまで明確にはされてこなかった。しかし、今回図らずしもそれが明らかになる。ちなみに言えば、大学教員ももっと減らせること(あるいは質の低さ)が遠隔授業により露呈するかもしれない。

 今後は、地方に住みながら年に数度の手続きのための登校のみで卒業できるということが明確になるのだ。既に放送大学という事例はあるが、わざわざキャンパスに行かなくても単位を取り、卒業資格を得ることができる。そういう仕組みが広がっていく。もちろん、同級生たちとの出会いという楽しみがあるので、すべてが切り替わる訳ではない。それでも、リモートで予想以上に学習や仕事ができることがわかれば、企業内の悪弊であった無駄が省かれるとすれば、その価値や意味を多くの人が知ることになる。

 

 こうしたリモート授業の流れは、数年前より徐々に進められていた。日本では少ないが、欧米ではネットを利用した授業が多数用意され、それによる単位取得が可能になっている(日本でもいくつかの大学が試行的に実施している)。その狙いは、低迷する世界の中で途上国を中心とした教育需要が伸びていることがあった。オンライン授業だけではなく、分校を東南アジア(特にタイやマレーシアが多い:マレーシア大学・短大・大学院留学ガイド | マレーシア格安留学情報)に設ける大学もかなり多い(筑波大、22年マレーシアに分校=日本初の海外本格進出-独自の教育文化発信へ:時事ドットコム)。

 海外分校の話はさすがに余談だが、ネットを正しく活用すれば相当広範囲の教育を提供できるのは間違いない。もちろん、対面でしか伝えられないもの(実技関係、実習関係、制作関係等)があるため全てをオンラインで賄える訳ではないが、教員側の意識が変われば教育の可能性は十分に広がり得る。このあたりが進まない理由は、医者のオンライン診療が進まないのと同じような理由であろう。

 一部(とは言え大部分)のITスキルを伴わない教員が反対すること、そのための投資に踏み切るための財政的な能力に欠けることなどが主ではないか。さらに言えば、法律により様々な規制がかけられていることも見逃せない。規制についてはかなり緩和されてはいるが、資格学校のように好きな時間に授業の動画を見て勉強することは、単位認定上認められていない(うろ覚えだが、授業開催時に出席していること等を確認しなければならなかった気がする)。

 

 だが、おそらく今回のコロナはそれを変えるだろう。進んでいるのかどうかわからなかった働き方改革も、これを機に良い方向かどうかは不明だが大きく踏み出す。さあ、そうなった時に都会に住むメリットはどれだけあるのだろうか。

 地方都市の不動産価格は大都市と比較して相当安い。一戸建ての住宅を借りても、東京のワンルームよりも安かったりするのはざらである。当然駐車場も安く、食品や雑貨も値段は大して変わらない。生活するには、圧倒的に地方の方が都合が良い。これまでネックだったのは、あくまで職場がなかった(さらに言えば給料の良い職場がない)ことなのだ。

 私も一応、東京ほどではないが大都市と呼ばれるところで生まれ育ち、そして今は地方都市に住んでいる。若い時ほど刺激を求めることが少なくなっているため、生活していく上では地方都市の方がずいぶん快適だと感じている。さあ、本格的な遠隔業務が進められる時代、食糧事情に危機感を抱かなければならない時代が来た。更には、これまでのように一か所に集まって仕事をするというのが難しくなる。一気にすべてが変わるとは思わないし、既にコロナ以前より兆候はあったと思うが、地方に住むということは今まで以上に価値が上がるのではないだろうか。