Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

貿易戦争から防疫戦争へ

 アメリカからのコロナウイルス感染症に関する中国への口撃が強まってきた(トランプ米大統領 中国を批判、故意なら「報いを受けさせるべき」 TBS NEWS)。また、今回の感染症が研究所でデザインされたという話もいまだに出てくる。しかも、ノーベル賞受賞者からも(Chinese Coronavirus Is a Man Made Virus According to Luc Montagnier the Man Who Discovered HIV - Gilmore Health)。初期に、コロナウイルスにはHIVの因子が組み込まれているとインドの研究者が発表したが、その後論文は撤回された。上記の記事はそれを後押しする内容となっている。

 もちろん、中国の研究所がウイルス兵器を作成していたという内容ではない。研究のためにコロナウイルスを利用していたというものである。それがどのような状況でかはわからないが、外部に漏れだして今回の事態を引き起こしたというものである。

 これに対し、中国は当初こそアメリカ謀略説を出すなど威勢がよかったが、ここにきて防戦一方の感じがある(武漢のウイルス研究所員が否定=新型コロナ発生源疑惑)。なかったことを証明するのは不可能(悪魔の照明)なので、中国としても対応に苦慮しているところだろう。正面から他者に責任を押し付けるのは諦めたようにも見える。

 

 正直、私には真相はわからない(【解説】 新型ウイルスの「研究所流出」説、証拠はあるのか?(BBC News) - Yahoo!ニュース)。仮に、中国の研究所からの漏洩が事実だったとしても、明確な証拠を見つけ出すことは困難だろう。そもそも中国政府が自分たちの責任を認めることはあり得ない(中国外務省、「エイズ責任追及したか」 新型コロナ拡散、米に反論:時事ドットコム)し、研究員も個人として中国政府に対してそれを認めない。どちらも自分の首を絞めることになるのだから。もっとも、本当に自然発生だったとしてもアメリカは、様々な方法をもって中国の責任とするように動く。

 理由は簡単だ。この信じられないほどの被害に対し、誰が原因かを決めなければ世論が収まらないからである。その状況は、中国を除くほとんどの国がそうである。外部に敵を作らなければ、政権が持たないのだ。つまり、中国に責任を押し付けるための絶好の機会ということである。もちろん、中国も自分たちが不味い状況に追い込まれつつあることは承知している。ただ、今回の場合には有効な手段がない。ハニートラップもマネートラップもすぐには効果が出ないし、正論では押し返せない。本当は静かに潜むのが最適だが、それができないのが中国という国でもある。

 

 ましてや、ほんの数か月前までアメリカと中国は全面的な貿易戦争(米中貿易戦争 - Wikipedia)を行っていた。アメリカは以前にも増して中国の排除に露骨に動き出しており(日本人も心せよ…本気の「中国企業締め出し」をアメリカが開始した(長谷川 幸洋) | 現代ビジネス | 講談社(1/3))、そのための立法も既にかなりの部分まで進めている。今は、アメリカだけではなく世界中に広げるための行動に入っている。貿易戦争時点では、中国をいきなり潰してしまえば自国経済にも影響が大きいため、剛柔織り交ぜながらじわじわと圧力をかけていたところである。しかし、コロナにより状況は変わった。既にアメリカ経済は大きなダメージを受けており、政府やFRBのドーピングにより現在はつないでいるがいつまで続けられるかはわからない。

 どうせ経済の悪化が避けられないのであれば、この際に中国を一気に叩き潰そうと考えてもおかしくはない(新型コロナが引き金となった米中メディア“締め出し”小競り合いの危うさ | Asagei Biz-アサ芸ビズ)。経済的ダメージが大きいほどに、局地的な紛争はコロナ戦争後の復興にちょうど良いと考えることすらあろう。

 

 コロナ後に、世界が分断される可能性(コロナ後の世界、資本主義国が中国包囲する"竹のカーテン"発動か | マネーポストWEB)は既に何度か書いているようにかなり高まっている。もちろんそれは、これまで推し進められてきたものが加速するだけのことではあるが、ぬるま湯につかってきた日本からすれば大きな動揺を受けるものとなるだろう。

 大きな武力戦争には発展しないと現時点では見るが、代理戦争的な局地紛争は十分考えられる。きっかけは地域における食糧事情の悪化による内紛でも、それを支援する形で勢力合戦が繰り広げられる。中国が弱いのは、金融がアメリカに抑えられていることと、食糧についても中国が豊富に賄えないこと(アフリカ豚熱もある)。

 日米貿易戦争以上のアメリカの本気が見えてくるのは遠くないのではないだろうか。そして、欧州は勝ち馬に乗ってくる。中国も、習近平体制が続く限りは容易には膝を屈することができない。この武力を用いない戦争は、もっと目に見える形になっていくと予想する。