Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

アフリカ豚コレラはどうなった?

 武漢熱(新型コロナウイルス)による人への感染伝播が強烈すぎて、すっかり忘れ去られてしまった感のあるアフリカ豚コレラ(ASF:日本では「豚熱」と呼称:アフリカ豚熱 - Wikipedia)のニュース(焦点:中国から感染拡大、アフリカ豚コレラが世界の脅威に - ロイター)だが、ここにきて本当に情報を見かけなくなってしまった。昨年、日本にも数十件ほど汚染された加工食品(ハムやソーセージなど)が持ち込まれそうになり摘発されている(アフリカ豚コレラ防げるか アジアで猛威、日本厳戒 福岡空港でも摘発例|【西日本新聞ニュース】)が、その裏では数多く持ち込まれてきたと考えるのが妥当であろう。まだ、それが投棄され野生のイノシシ等が口にしていない(あるいはそれが密かに広がっている可能性もあるが)だけなのだ(日本農業新聞 - アフリカ豚コレラ「予防的殺処分」 野生動物も対象に 家伝法改正案 月内成立めざす)。

 現状、その汚染の中心地である中国や韓国での情報はそれほど多くない(ASF発生頻度、「前年比で大幅低下」 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト)。一応、ワクチンが開発されたという情報(アフリカ豚熱のワクチン開発に成功 中国 研究チームが発表 | NHKニュース)も流れているが、現時点でどこまで信じられるかは微妙である。だが、ようやくワクチン情報が出てきたばかりの状態なので、状況が沈静化しているとは考えにくい(焦点:中国から感染拡大、アフリカ豚コレラが世界の脅威に - ロイター)。この伝染病は現状、感染した豚が出れば全数殺処分するしかない(致死率も100%近いと言われているが)。どれだけの豚を処分したか(WEB特集 1億頭のブタが消えた 中国でいま、何が… | NHKニュース)は中国の報道では不明だが、外国報道からはうかがい知れる(中国、喪失の豚2億頭か ASF猛威 養豚半減、豚肉生産25%減の分析 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト)。実際、中国政府が追い詰められていたのは、国内の豚肉不足と価格高騰を受け貿易戦争中であったアメリカからの輸入に踏み切った(【ビジネス解読】アフリカ豚コレラで中国、米国からの豚肉輸入急増(1/2ページ) - 産経ニュース)ことからも十分に読み取れるだろう。

 

 本来は、中国政府のメンツもありアメリカ以外(ブラジル等)からの輸入で凌ごうとしていたが、それどころではないほどに切羽詰まっていたのだ。豚肉は中国人のソウルフードであり、手に入らないとなると大きな暴動が起きてもおかしくはない存在なのだから(中国、豚肉不足解消へ巨大豚を飼育 高値取引が農家刺激…500kgの豚も - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト)。その後のコロナ騒動でこの問題は表面上かき消されたが、おそらく中国政府もアフリカ豚熱には十分手が回っていない可能性は高い。特に、都市封鎖などをしている関係上、兆候が見られても殺処分に出向くことも容易ではない。推測に過ぎないが、再びアフリカ豚熱の蔓延が密かに広がっているのではないかと感じている。

 中国は、世界の養豚の半分を占めている(養豚 - Wikipedia)。だが、それがアフリカ豚コレラにより輸入するまでに追い込まれ、今回の武漢肺炎により貿易が停止すれば、その輸入すらがおぼつかなくなる。実際、当面はそれどころではないというのが実際だろう。運よくアフリカ豚コレラの蔓延を抑え込めれば良いが、こちらはコロナウイルス以上に封じ込めが難しい。野生のイノシシによる感染拡大は、それを根絶でもしない限り容易には封じられない。一般に、二正面作戦(二正面作戦 - Wikipedia)は避けるべきであるが、中国は実のところそれを強いられているというのが現状である。

 豚肉よりは人命重視と言うのが妥当な話ではあるが、中国共産党政府体制の維持を考えた場合、順序をつけるのは正直難しい(中国当局、対米貿易戦争より「豚肉価格高騰」を危惧する裏事情 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン)。既に、都市封鎖により食糧が十分配給されていないという不平は溜まっている(武漢封鎖1カ月、涙の女性住民「精神が崩壊した」 - 社会 : 日刊スポーツ)。災厄による非常事態ということで大人しくしていられる期間はそれほど長くない。実際、物価は上昇しているとされる(中国物価5・2%上昇 新型コロナで物流停滞が響く - 産経ニュース)。これに影響され、中国は利下げには踏み切れなかった(中国が利下げ見送り 3月、インフレ意識か :日本経済新聞)。

 

 表面上、中国政府はコロナウイルスの封じ込めを成功させ、感染爆発している欧米に対する優越的な態度を取っているが、内実はそれほど余裕がないというのが私のみた感想である。特に、アメリカを含む外国からの豚肉輸入が停止してしまった場合、食の恨みによる住民の暴動は非常に恐ろしい。それを考えると、ワクチンが完成し沈静化に向かうという情報を早期に流さなければならなかったのではないだろうか。

 もちろん、本当にワクチンが完成している可能性も十分にある。その場合は、中国政府としてコロナウイルスの感染再拡大に対すればよく、もう少しの時間人民に我慢を強いることで持ちこたえられるかもしれない。だが、それが嘘だった場合の問題は決して小さくないだろう。