Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

旧国連と新国連

 中国は、世界に先駆けて新型コロナウイルス感染症に対する勝利と克服を宣言し、世界に対して援助を差し伸べるホワイトナイトを気取りたいようだが、世界が中国を見る視線は冷たい(中国医療チームを歓迎しないナイジェリア、「おかしい!」と中国メディア|レコードチャイナ)。特に、現時点で被害の大きい欧米の感情論は相当のものであろう(「コロナ拡大は中国政府のせい」欧米で激しい怒りの表明が相次ぐ(週刊SPA!) - Yahoo!ニュース)。また、当初から中国に対する忖度が露骨であったWHOに対して、アメリカのトランプ大統領は拠出金の停止に関しても言及した(トランプ大統領 WHOの新型コロナ対策批判 資金拠出停止検討 | NHKニュース)。当然、WHOは反論する(WHO事務局長、新型コロナ対応を擁護 トランプ氏の批判に反論 - ロイター)が歯切れは悪いし、その言葉を全て信じる人は少ないだろう。WHOが何もしていない訳ではない(【新型コロナ】世界の感染者が150万人突破-WHO、米中協調促す - Bloomberg)が、トップに中国忖度の動きがないというのは過去の言動を見ても考えにくい(パンデミック宣言を遅らせ、国境閉鎖に反対し、中国の行動を称賛:以下、多少偏向しているとは思うが、ネットにあったWHO[主にテドロス事務局長]の発言まとめ)。

1/19 人から人への感染リスクは少ない
1/22 緊急事態には当たらない

1/28 WHOは中国政府が迅速で効果的な措置を取ったことに敬意を表する
1/29 中国から外国人を避難させることは勧めない
1/31 渡航や貿易を不必要に妨げる措置をすべきではない
---- 人の行き来を維持し国境を開放し続けるべきだ
 
---- 中国の尽力がなければ中国国外の死者は更に増えていただろう
---- 中国の対応は感染症対策の新しい基準を作ったともいえる
---- 中国国外の感染者数が少ないことについて中国に感謝しなければいけない
2/01 大流行をコントロールする中国の能力に信任を置いている
2/04 武漢は英雄だ
---- 中国以外の国々は感染者のより良いデータを提供しろ
2/05 740億円の資金をWHOに投資しろ

2/08 致死率は2%ほどだから、必要以上に怖がることはない
2/10 イギリスとフランスはもっと危機感を持て
2/12 特定の地域を連想させる名前を肺炎の名称とするのは良くない
2/13 中国のたぐいまれな努力を賞賛する

2/18 新型ウイルスは致命的ではない
2/24 パンデミックには至っていない
2/27 中国の積極果敢な初期対応が感染拡大を防いだ↓
2/28 「パンデミックの可能性がある」
---- 「すべての国は備えに集中しろ」
---- 「封じ込めらられる可能性は狭まっている」
3/25 「われわれは最初の機会を無駄にした」
3/26 「1か月前か2か月前に対応していなければならなかった」
3/27 「すべての国で積極的な行動がなければ、数百万人が死亡する可能性がある」
4/3 「マスクを使うべきかの指針に変更を加えるべきかどうかを見極める」
4/5 「中国は毎日科学的なデータを発表、提供している」
4/7 「マスクは特効薬でない。パンデミックを止めることはできない」
4/9 「我々は天使ではなく人間。間違うこともある」
---- 「私に対する中傷はすべて台湾から行われてきた。断固として抗議する」 ←New!

 

 だが、アメリカが国際機関に背を向けているのはWHOだけではない。WTOを拒否権により締め上げ(WTOを揺らすアメリカ 上級委員会の越権を問題視、中国への不満も背景に - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト)、UNESCOからは離脱(米国とイスラエル、相次ぎユネスコ脱退発表 - BBCニュース)し、国連人権委員会からも離脱(米、国連人権理事会を離脱 「政治的偏向のはきだめ」と - BBCニュース)している。その理由は、中国やロシアなどによる露骨な工作と、弱小国を操作して組織の壟断が行われていることに対する不満である。

 もちろん、アメリカが常に正しいというつもりは更々ないが、世界有数の人権蹂躙国家である中国が世界に向けて人権を語り、世界で最も不公平な貿易システムを敷いている中国が、世界貿易の均衡者足らんとする。これこそ笑い話以上の何物でもない。このような状態に至ったのは、国連にある二つのシステムを逆手に取ったことによる。一つは安保理常任理事国の地位(所謂拒否権行使ができること)を最大限活用できること、もう一つは全ての国に平等に投票感が与えられること。すなわち、仲間を作って自分の意見を通す手段が取れること。中国以外の国も取る事があるが、その程度には大きく違いがある。前者はともかく、後者は現在の中国のように囲い込み戦略を取らなければ、必ずしも悪いとは限らないが、中国は金の力でそれを蹂躙している。

 

 かなり前だが「新国連(新国連 - Alternative Issue)」について書いた。内容的には現状と大して変わらない。そこでは韓国人の潘基文が事務総長になり、国連を我が物顔に利用し始めていることを中心に書いたが、当時は今ほど露骨ではなかったかもしれないものの、中国と人権委員会についても軽く触れている。大国が金の力で小国を抱え込み国連を自分に都合の良いように利用することに対する警告と、組織が長く続くとシステムを都合に良いように利用するようになる一般論について書いたものである。

 そして、今まさにその危惧が現実化した。中国の力は私がエントリを書いた時よりもずっと強大になり、国連というシステムを利用して自国に都合の良い流れを構築している。実際には、その状態を作り上げるのにアメリカも協力しているというのが問題でもあるが。

 

 だが、今後は国連の在り様は見直されなければならない。アメリカが数多くの国連組織から離脱しており、日本も一時ユネスコに対する拠出金を停止したり、国連機関ではないがIWCからの離脱を決めた。急に進むわけではないものの、国連崩壊の序章が迫っていると考えてよいのではないか。その先に考えられるのは、新国連(欧米や日本を中心に設立)と旧国連(中国とそれに呼応する国が残留)の二つの存在である。ある意味、これはどちらの陣営に所属するかという踏み絵にもなるだろう。

 韓国などは両方に参加しそうな感じもあるが、それは許されないだろう。その場合、中国側に位置付けられる結果になろう。もちろん一朝一夕に進むものではなく、今後様々な交渉や同盟あるいは経済的な結びつきにより紆余曲折はあろう。だが、中国排除の流れを考えた場合、国連を作り直す方が簡単だと思う。

 

 まあ、私が考えた通りに動くとは思わないが、世界がドラスティックに動くのを目の当たりにするのは、ある意味で期待する気持ちもある。これも昨年のエントリだが、こんなことを書いた(混乱の時代にようこそ - Alternative Issue)。さすがに新型コロナの予想ができるほど霊感は鋭くないが、時代が大きく変わるとは何となく予想していた。おそらくもう、元に戻ることはない。変わることを前提にして自分の生き方を探る時代になったのだ。