Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日銀とFRBの評価損はどうなるか?

 武漢肺炎による世界経済のダメージは、当初予想していたとおりに大きく広がり始めた。アメリカでは既に1,700万人の新規失業者が発生し(IMF、「世界恐慌以来」の経済危機を警告 米失業者1700万人に 写真4枚 国際ニュース:AFPBB NewsReuters on Twitter: "More than six million Americans sought unemployment benefits last week, for the second week in a row, amid stay-at-home measures that have abruptly ground the U.S. to a halt https://t.co/BUjJ4plPm8 Here's the spike, illustrated by @ReutersGraphics… https://t.co/3j0Ac4ydeE")、リーマンショックの5倍も大きな経済的被害が出るとノーベル賞受賞者が語る(Paul Krugman on Twitter: "This would be 5 times the slump relative to potential output in the Great Recession — happening in just a few weeks.… ")ように酷い様相を呈している。大恐慌に匹敵する、あるいは超えるという声もちらほら出始めた(新型コロナ危機、1930年代の世界恐慌以来の大不況に=IMF - ロイター)。もちろんそんな状態を放置できるはずもなく、アメリカ政府はGDPの10%に相当する2兆ドルにも上るコロナ対策を決定し、さらに追加政策を準備している。並行して、FRBもかつてないレベルの金融緩和(米FRBと英中銀、新型コロナ対策強化 一段と未踏の領域に - ロイター)を実施し、更には債権の劣化が進むことを見越し(堕天使(Fallen Angel)に怯える米社債市場 | 2020年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI))ジャンク債の買い上げまで行うことを決定した(米ジャンク債、1998年以来最大の値上がり-FRBが買い手に - Bloomberg)。もう、後のことを考えない未知のレベルの対応である。

 その結果、これだけの世界的な機能停止にもかかわらず、株価は大して下落していない。私が想像していた以上の急ピッチでFRBが大胆に動いたこともあるが、投資家のマインドがコロナ以前と大きくは変わっていないことの証でもあるだろう。だが、それは間もなく収束に向かうという甘い期待に立脚している(コラム:「大恐慌以来の景気後退」でも株高、半年後にリスク浮上も - ロイター)。FRBがどれだけ資産買い入れをしても、社会のすべてを救うことはできない。今回のコロナ禍が収まり、社会が平常を取り戻さなければダメなのだ。中国でも再度の都市封鎖が始まりだしたという情報が出てきた(Jennifer Zeng 曾錚 on Twitter: "Nearly 80 communities in #Wuhan locked again after the city reopened on Apr 8. Some doctors warned that the situation is still bad, and people should try not to go out.More : https://t.co/fSwmxEsPYp#CCPVirus #COVID2019 #Coronavirus #CoronavirusOutbreak #CoronavirusPandemic… https://t.co/5YCVusGAb1"

)。都市封鎖により抑え込みは可能だが、それだけでは収束できない。この災厄は治療薬なしには簡単には収まらないのだから。すなわち、数か月で経済が元に戻ることなど考えにくい。

 

 日本の場合も、日銀が上場投資信託ETFを買い上げており(日銀は9日にETFを1214億円買い入れ-通常分は1日・2日と同額 - Bloomberg)、東証1部時価総額である約500兆円のうち、すでに40兆円分程度は日銀が購入している感じになる(日銀保有のETF、19年9月末時点で31兆6112億円 東証1部の5.3% :日本経済新聞)。3月10日時点で損益分岐点がおよそ19,500円とされている(黒田日銀総裁、ETFの損益分岐点「1万9500円程度」 :日本経済新聞)ので、その後の購入があっても現在の株価でおおよそトントンというところであろうか。ただ、アメリカの株価が上昇していることもあり、株価は比較的高く推移している。

 日銀がいくらまでETFを購入できるかと言えば、理論上は無限大ではあるが、もちろん現実にはそんなことはできやしない。一定の制限があると思うが、非常時のためその数字がどこまで大きくできるかを考えるのは難しい。それ以上に、日銀はいくらでもお金を刷れるので、含み損が大きくなっても建前上潰れることはない。今後株価が大きく下落し、いくつかの企業が倒産するとETFの価値が毀損するが、倒産が一部とどまれば評価損を顕実化しなければ問題はないだろう。

 だが、いつかはそれを売らなければならない時期が来る。それが株価の上値を抑える重しになるであろうことは、容易に予想がつく。しかも、時価総額の10%以上になったそれは、大きすぎる存在感を保持することになる。人々の行動自粛は当分の間は必要だし、心理的な抑制は社会の仕組みに定着し容易に解除されない。結果として企業業績はおそらく当分以前の様には戻らず、株価もマネーゲームという投機を除けば上昇する理由もない。もちろん、消費活動はある程度復活するので、既存企業とは異なる新しい消費行動が発生するとは思うが、全体としては低迷するだろう。

 

 さて、FRBにしても日銀にしても、その保有債券やETFの評価損がそのまま経済の信用不安に直結することはないだろう(新興国ではそうはいかないが)。ハードカレンシーの強みと言ってもよい。場合によっては何年も含み損を抱えたまま保持し続けることになると思う。それは、心理的な意味では株価の重しになり、国債の評価にも関わる。ただ、今回は世界中の国家が同じようなことになってしまう。債権や貨幣価値は絶対的評価ではなく相対的評価により決まる。

 日本が極端な不況に突入し、他国との差が開いていけば問題なるだろうが、他国と共同的な歩調を取り、日本に大きな貿易黒字が残ること及び、日本企業が隠しhン的な技術を保持し続ける限り、決定的な問題にはならないと思う。

 

 だが、繰り返しになるがFRBや日銀の救済できる能力は無限大ではない。その限度を素人の私が解き明かすことはできないが、金融政策による救済だけでは景気を維持し続けることはできない。