Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

オリンピック責任問題

 東京オリンピックについては、2月初旬より開催は難しいであろうことはここでも予想してきたが、現時点では日本政府は開催の方針を崩していない(コロナ危機で初のG7テレビ電話会議 安倍首相「東京五輪は完全な形で実現」発言めぐる憶測と真意 - FNN.jpプライムオンライン)。これは、オリンピックに中止するにしても、延期にするにしても、その分必要となる費用をどこが負担するかの調整ができていないことを意味している。日本政府が中止または延期を最初に言い出せば、その全責任を日本が負わされる可能性が高い。だから、日本政府としては難しいことは重々承知していても、あるいは世界から無責任と言われても(予定通りの五輪開催を主張 日本政府などの「強行」姿勢に世界から反発 - ライブドアニュース)、開催するという立場を変えるわけにはいかない。

 世の中は、延期論が最も支持を集めているようだが(コロナ禍東京五輪 海外メディアが続々延期濃厚報道 英タイムズ紙「90%確実」(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース)、オリンピック規約上の制約などを変更しなければならない等の障害はあるが、それが最も妥当な選択肢ではあると思う。ちなみにIOCも中止は視野にないとしている(東京五輪で様々なシナリオ検討、中止は選択肢にない=IOC会長 - ロイター)。今後、焦点はいつ開催するかに移っていくだろう。

 とりあえず、今年の開催を延期するとはなかなか言えない。おそらく、5月まで引きずられると思う。だが、予選の開催や国内選考の中止などがあり、仮に日本のコロナウイルス騒動が収束していても、そもそも開催することは不可能なのだ、だからこそ、安倍総理も完全な形での開催という声明を出さざる得なかったと思う(安倍首相「完全開催」発言で臆測 延期論に現実味―東京五輪:時事ドットコム)。

 

 そもそも論で、開催や中止を判断する権限はIOCにある(東京五輪 IOCは予定通り開催表明「まだ4カ月ある」)。だが、それをすれば中止や延期をIOCが決めたことになり、IOCの責任において調整をしなければならなくなる(実質的な部分は日本押し付けたとしても)。スポンサーとの調整や増加する費用問題等、考えれば頭の痛い話ばかりであろう。更に関連経費をIOCが負担できるほどの財政的余裕は一機関にはない。と言うことで、まず最初は自分たちが決めないためにIOC会長はWHOの助言に従う(東京五輪の開催判断は「WHOの助言に従う」…IOC会長 : 東京オリンピック2020速報 : オリンピック・パラリンピック : 読売新聞オンライン)と表明していた。ただ、降って湧いたような責任を回避したいWHOから事前に否定(東京五輪開催、WHO「可否判断しない」 (写真=ロイター) :日本経済新聞)しており、現在もその考え方は基本的に変わっていない(WHO 東京五輪に関する勧告は拒否か 海外報道 「日本が決定を下すべき」(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース)。

 

 では、実質的に延期は可能なのかという問題に行き当たる。既に数年先まで、各種大会の予定は埋まっている。さらに、競技がこれらの大会と被らなければ無理やり行うことも可能だが、夏のオリンピックは競技数も種類も豊富で、既に開催が決まっている大会を取りやめるか、変更しなければならない。例えば、世界陸上選手権は2021年の8月にアメリカで開催(2021年世界陸上競技選手権大会 - Wikipedia)、世界水泳は2021年の7~8月に福岡で開催(FINA世界水泳選手権大会2021福岡大会)されることが決定している。オリンピックを1年延期する場合、その大会との調整を一体だれが行うのか。それを考えただけでも、主催者たちが今年に予定通り開催できることを神に祈りたくなるのも当然である。

 2年延期説は、まだ計画はあっても変更が可能だという実用的な側面から考えれば比較的選択しやすい。ただ、2022年は北京で冬季オリンピックが開催される(2022年北京オリンピック - Wikipedia)。同年開催は1992年以前は行われていたこと(近代オリンピック - Wikipedia)なので不可能ではないものの、次期開催との間が2年しかないということをどう考えるかになろう。

 最終的には、2021年に予定されているすべての国際競技を2022年に変更するという英断のもと、2021年にオリンピックを延期と言うシナリオが考えられるが、各国に費用その他の拠出をお願いすることになるため、今後の難航が予測される。結局のところ、日本が調整に走り回るということになるのではないか。

 

 問題は、日本は良くても世界中のコロナ騒動がどうなるか、あるいは定着したコロナウイルス対策を盛り込まなければならないことなど、今後の運営には茨の道筋しか見えない。オリンピック騒動も、それぞれの背景を斟酌しながら見ていると、なかなかに面白い喜劇を見ているようでもある。