Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国が恐れるコロナ後

 中国は、ここにきて罪の擦り付けを強めている(中国紙「欧米は反省すべきだ」 新型コロナ対応で(共同通信) - Yahoo!ニュース)。中には、言葉を濁してはいるがアメリカをウイルスの元凶とまで公式に触れている(CNN.co.jp : 中国高官、新型コロナは「米軍が武漢に持ち込んだ可能性」)。さらに、メディアを使って世界に中国を称賛するように強要する(「世界で最も安全な場所は中国」自信取り戻す中国人 新型コロナ対応、欧州の惨状を見て「中国政府を評価すべき」(1/3) | JBpress(Japan Business Press))。だが、こうした行動は世界の反感を買いかなり悪手であることは誰にでもわかる(「世界は中国に感謝すべき!」中国が振りかざす謎の中国式論理 | 風刺画で読み解く中国の現実 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)。登山家の野口健氏も言うように(野口健さん、新型コロナで中国へ「『土下座しろ』とは言わない。しかし、せめて一言、世界に対しお詫びの言葉があって然るべき」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース)中国のみを責めるつもりはなくとも、その態度を見て世界的な反発を受けるのは当然であろう。その上、海外からこうした声が出てくるのに対し、反発までしている(「中国謝罪論」は根拠も道理も皆無 国際社会では中国を支持する声が主流--人民網日本語版--人民日報)。このような態度に出る一つの理由は、中国人の面子に対する認識がある。加えて、中国内部の権力闘争が表面化側面もあるかもしれないが、どちらにしても今後に響くこのツケは小さくない。

 

 さて、中国は計画経済でここまで躍進してきた。だが、計画経済故の問題があちこちで噴出し始めている(中国企業7割が「操業停止に耐えられるのは1、2週間」習近平氏は「建国以来最も困難な事件」 | Business Insider Japan)。2か月にも及ぶ都市封鎖は、感染の爆発的な蔓延を防ぐ上では非常に効果的ではあったが、同時に経済をすごい勢いで落ち込ませた(コラム:場違いな中国の自信過剰、経済のV字回復にはハードル - ロイター)。もう、当初の計画通りには進まない。問題は、一度打ち出したものを何度も撤回できないことにある。既に、習近平主席は当初のコロナウイルス対策に失敗したことを一度認めてしまった。だからこそ、これ以上の失敗をしてはならないという自縄自縛に陥っていると見る。

 さらに言えば、コロナウイルスの出所を中国と断定されてしまうと、世界中からの非難が中国に向かうことは間違いない(中国が「犯人は米国」、勃発した新型コロナ情報戦 米国起源説を世界に発信し始めた中国、世界はどちらを信じるのか(1/4) | JBpress(Japan Business Press))。実際、そうした動きは世界中から出ている。世界への蔓延がなければ、そこまでの非難は出なかったであろうが、今後更に広がる世界的な経済損失は間違いなく莫大なものになる。リーマンショックどころではない損失に対し、責任を取ることなど中国でも決してできやしない。もちろん責任を取るつもりなど毛ほどもないだろうが。

 中国としては、最終的には誰の責任でもない自然災害であるというところに落ち着かせたいところだが、現在世界は中国の初期情報隠ぺいに対して声を挙げ始めた(「武漢で隠蔽」「抑止努力を中傷」 米中の非難合戦続く [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)。感染の広がりが中国から始まったことは否定しようがない。WHOも忖度して、人類の敵だと声明を出した(世界の感染者、20万人突破 新型コロナは「人類の敵」とWHO 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News)が、これにも中国の責任を回避する意図が含まれていると勘繰られてもおかしくはないだろう。WHOのこれまでの発表からは、中国の傀儡とは言わないが、それくらいの忖度が感じられる(トランプ氏「中国ウイルス、人種差別ではない」…WHO「不適切な表現」指摘 | Joongang Ilbo | 中央日報)。

 

 さて、現在は責任の押し付け合いが口頭でなされているだけだが、この問題は下手すれば局所的な紛争にまで広がる可能性も有している。世界中の国家は、現状は対処に精一杯であるが、落ち着けば今回の混乱の落としどころを考えなければならない。それは政治的なものも経済的なものもある。もちろん、日本のように天災と受け入れることはなく、また政治家が自らの責任と認めることもないだろう。つまり、誰が悪いかを追求する場面が生じるのは目に見えており、標的(ターゲット)は中国以外ありえない。攻撃すべき相手が定まれば、その次に出てくるのは賠償問題である。

 もちろん、その交渉は間違いなく決裂する。繰り返しになるが、中国は責任を取るつもりはさらさらない。それは額が天文学的になることもあるが、それ以上に中国の面子が成り立たないからである。天安門事件を国内的には痕跡すら葬り去る中国のこと、歴史に汚点を残すことを決して由とはしない。

 

 その結果生まれるのは、中国とそれ以外の国々の深刻な感情的な対立である。コロナ前でもアメリカが中国を目の敵にしていたが、今度は同情的な国家がさらに減少する。一部の国家は金銭的な理由で中国に与するかもしれないが、多くの国々は経済的にも脱中国を指向する様になる。それは、中国が世界の工場から除外されるということにもつながる。世界が一気に脱中国に動く始めるのだ。それは、謝罪しない中国に対する多くの国民感情が後押しするだろう。

 その先にどのような紛争が巻き起こるかはわからない。ただ、経済的に傷ついた世界は本格的な戦争とはいきたくないが、自らの計画と大きく外れてしまう中国が、一体どのような態度を見せるか。これはなかなかに読みづらいが、今まで以上に攻撃的になる事だけは予想できる。

 もちろん、中国自身も戦争を望んでいるわけではない。ただ、自らの理想と現実の間に大きな乖離が生じてしまったとき、あるいは国民を十分満足させられなくなると感じた時、取るのは排他的な国民感情を煽る施策となるのは歴史が証明している。単純な反日を煽るのとはレベルが違う。

 

 今からコロナ後を想定するのも鬼が笑いそうだが、中国だけではなくアジア人に対する偏見が欧州では表出しつつある。パニック時には本性が出るが、落ち着いたときにはそれが移民として生活している中国人排斥に波及する可能性は高い。それの保護という意味でも、中国が実質的に鎖国的な状態になるか、あるいは紛争により問題を拡散させようとするか。興味深く見ていきたい。