Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

地下コロナ

 中国のコロナウイルス感染者数や死亡者数が信用ならないというのは以前から書いていたし、一般的な見方もそうだと思っている。都市部のストリートチルドレンを全て検査したとも思えないし、農村でどれだけの検査をしたかもわからない。またロシアでは感染者数がすごい勢いで増えているが、公表されている死者数は欧米と比べて極端に少ない。ところが、この死亡者数に対する疑問の声があちこちで上がり始めた(ロシアのコロナ死者数巡り論争 欧米メディア「実際は7割多い」 外務省が訂正要求 - 毎日新聞)。もっとも、記事にあるレベルで7割多かったとしても欧米と比べると少ないのは間違いなく、そのあたりの理由はまだわからない。また、韓国でも死亡者数が2月に激増している(韓国の人口減少が止まらない?4カ月連続で死亡者数が出生数上... | 国際 | ニュース | So-net)のに、コロナ死者としてはカウントされていないのではないかという疑問も出ているようだ。死者数が増加しているのは少子高齢化の要素もあるので、きちんと分析してみないと死亡超過(新型コロナ、真の被害規模示す「超過死亡」 専門家ら注目 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News)がどの程度あるかは不明だが、隠れている可能性はあるだろう。どこの国においても政治が絡むとこのような話は出てくる。

 

 ロシアの場合には、オリンピックのドーピング問題を見ても国家的な隠ぺいの可能性(【新型コロナウイルス】 ロシアで事実隠ぺいか | TRT 日本語)も十分考えられるが、逆に韓国の場合には追跡システムの苛烈さから身バレ恐ろしさで医療機関に掛かることなく悪化して死んでいくという可能性が想像できる。実際、ゲイクラブの件では多くの人が連絡を絶って未だ逃亡している(韓国・梨泰院のクラスター、新型コロナ感染102名に ゲイの濃厚接触者の追跡がネックに | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)。韓国のコロナ追跡方法を一部の日本人識者が賞賛しているが、プライバシーなどを一切考慮しないものなので、下手すればコロナに感染していないにも関わらず社会的に抹殺されかねない状況がある。コロナウイルスは確かに怖いが、若年層であれば悪化どころか自己治癒する可能性も低くない。なら、下手に検査を受けて自分の行動を暴露されるよりも、逃げておいた方が良いという話になる。

 要するに緩すぎる追跡は感染を拡大させるが、厳しすぎる追跡は感染者の地下化を引き起こす。当初優等生的な対応と称賛されていたシンガポールでは、外国人労働者階層に広がり大きな問題となっている(シンガポール感染者急増 忘れられた人々「時限爆弾」に [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)。こちらは地下化そのものではないが、入院や治療費用が払えない、あるいは感染により母国に送り返されてしまうなどと考えれば、診療を受けない可能性は非常に高い。

 

 同じような話は、アメリカですら経済弱者において十分に考えられるし、欧米でも多くの移民は地下化する可能性を秘めている。検査費用等を政府が負担してくれても、その後の入院治療費を全て政府が持つとは考えにくい。保険制度がどれだけ充実しているかだが、その恩恵にあずかれない人たちは息をひそめるしかない。致死率が非常に高い感染症であれば背に腹は代えられないが、罹患しても生き残る可能性が80~90%%以上もあるのであれば検査や診療を受けないことが検討の対象になるだろう。特に、初期感染拡大時にはパニック的に検査を受けようとする人が多くとも、慣れてくるとこのあたりの算段が行われるだろう。

 日本は全てにおいて対応が緩く見えるのはその通りだが、これまで培ってきた体制が緩い対策でも感染抑制を可能としているところが世界的には特異であろう。もちろん、何らかの理由で地下化をしなければならなくなる人の数も世界的に見て少ないと思う。国民総中流を目指した結果が役立ってくれている(もちろん、マクロではよくともミクロにおいてその恩恵を受けられない人がいるのは問題であるが)。

 

 さて、コロナの地下化はクラスターが表面化して初めてわかる。感染経路不明者の中にも、感染場所を特定させたくない人は半分地下化しているが、日本ではそのあたりも織り込んで体制が取られているように思う。ネット警察あるいは正義マンによる追及は人々の社会生活を壊す激烈さを秘めており、現代的な村八分を巻き起こしているが、私は一時的なヒステリー症状であると思う。それが苛烈になるほど、感染の可能性のある人の地下化を促進する側面もあろう。

 韓国では4月中旬から、帰国者のみが感染者としてカウントされていた(国内では収束している状況)。だからこそ文大統領はK防疫を高らかに宣言した(文大統領「韓国が防疫で世界をリード」 就任3年の演説 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)。しかし、残念ながら5月初旬に新たな大規模クラスターが発生した(新型コロナ収束地を襲う「第2波」、感染経路の追跡さらに難しく - Bloomberg)。要するに見つけられなかった感染者群がいたことを示す。どうも文大統領が克服等を宣言すると大規模クラスターが発生するようだ。このように、コロナウイルスはほとんど撲滅できないレベルの存在である。

 

 欧米では、徐々にロックダウンが解除され始めた(サッカー=ドイツ国内リーグ、無観客でシーズン再開 - ロイター東京新聞:伊、来月にEU国境開放 バカンス向け 入国後隔離も廃止:国際(TOKYO Web))。アメリカではトランプ大統領が経済再開に向けて声を上げている。ロックダウンが一定の成果を上げることは間違いないが、今後は経済との両立が世界中で探られ続けるだろう。さて、その中で地下コロナ(コロナ感染者の逃亡)がどのような影響を与えるか。注目していきたい。