Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

2019 n-CoV

 中国で発生したコロナウイルスによる肺炎の広がりが、かなり大きなものとなっている(实时更新:新型肺炎疫情最新动态)。中国政府からの発表は、1月26日現在で患者数が1975人、死亡者が56人とされている(中国、新型肺炎の死者56人に カナダでも初確認 :日本経済新聞)が、その数を信じている人は少ない。正確な数字はわからないが、発症者は10万人を超えているのではないかといった推計も出ているようだ(新型コロナウイルスの世界的な急拡大を、科学者たちは“予見”している|WIRED.jp)。既に治療にあったっていた医師の死亡も伝えられており、武漢以外の都市でも患者が発見されている(上海、深センでも感染疑い=新型コロナウイルス―香港メディア | NEWS & TOPICS | リスク対策.com(リスク対策ドットコム) | 新建新聞社中国新型ウイルス、上海でも初の死者 感染例40件 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。更にはアメリカやカナダ、フランス、日本や韓国、タイ、、その他多くの国でも見つかっている(新型肺炎 中国本土以外は13の国と地域で40人の感染者確認 | NHKニュース)。また、危機的状況を告げる現地医療関係者の声も生々しい(武漢の医師が涙声で訴え 病院に肺炎患者らが殺到)。

 

 ただ、中国の対応は初動こそ遅れたと思うが、その後はかなり迅速である(新型肺炎 中国の死者は41人に 武漢中心部は乗用車通行禁止に | NHKニュース)。中央政府から叱責が飛んだこともあるだろうが、旅行の停止や都市の封じ込め(中国、交通遮断を拡大 新型ウイルス封じ込めへ異例の措置 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News)、手段の妥当性やその効果が懐疑的であるとはしても、打てる手を打っているというのは間違いない。SARSの時の批判を受けての教訓が生きているというのはあるだろう。一方で、逃げ出そうとする人が後を絶たないこともあるし、何より初動の遅れがここにきてウイルスの広がりを抑えきれていないのではないかという疑問は残る。

 とは言え、エボラ出血熱エボラ出血熱 - Wikipedia)や豚インフルエンザ豚インフルエンザ - Wikipedia)の時でも、ネットにはこのようの終わりだといった雰囲気の情報が出回った。個人的にも冷静に務めたつもりではあるが、やや過剰反応な部分もあったかと自省している。現時点では、死亡率が3%程度ではないかと言われているが、情報の信ぴょう性が確実でない状況では、正確なことを見定めることはなかなかに難しい。仮に計算すれば、現時点で患者数が10万人で死亡率が1%として1000人の死者となる。SARSでの死者数が公式には750人程度なので、それを超えてくる可能性はあるかもしれない。だが、それで収束すれば世界的な混乱には至らないだろう。

 なお、ネット上では不安を煽るような多数の未確認動画が出回っている。実際の状況を示す動画もあるだろうが、こういったパニック時には愉快犯も数多く出るので、その全てが真実ではない可能性を常に疑ってかかる必要がある。世界の公衆衛生に対する対応や取り組みは格段に進歩しており、スペイン風邪の時代のようなことにはなりにくい。ただ、それでも現時点でワクチンの存在しない未知の脅威に対抗するためには、様々な人たちの努力がないと立ち回らないのも事実である。危機を煽っても何も解決しないのだから。

 

 さて、今回の問題で個人的に危惧していることは、中国の経済的なパニックの発生である。北京や上海でも道路等封鎖の噂があるように、病気の広がりがかなり大きなものとなっている。その原因は潜伏期間が7~14日と比較的長いこと、および発熱などの症状がみられない患者がいることである。見かけ上ではわからない保菌者が、様々な活動を続けることによる広がりが懸念される。患者の増加率を表す値として基本再生産数R0(新型コロナウイルス感染症の「感染力」はどれくらい強いのか?(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース)がある。一人の患者が平均的にどの程度の新たな患者を生み出すかという数字。あくまで現時点での予測では、一般的なインフルエンザと変わらないのではないかと見られているようだ。だが、この数値が大きく上昇すると世界的な広がり(パンデミック)の可能性を考えなければならない。数種類のウイルスがいる可能性や変異による強毒化を予想する人もいるが、それがないに越したことはない。

 現時点では、死亡率・再生産数共に正確な予想が難しいため、中国政府の取る対策はより酷い状況を想定して行われていると見る。また、感染経路が完全に特定されていないというのも、問題解決を困難にしている。ただ、こうした不明な状況が長く続けば経済的な影響が大きく出てくる。武漢でも医療費や食料の不足は既に始まっており、数日のうちには危機的な状況になる可能性があるだろう。もちろんそれに伴う経済的なダメージは相当に深刻である。もともと、中国はかなり経済状況が悪いものを政府支出やその他でかさ上げしてカバーしている。そんな中で、都市間の移動や海外との関係を閉じれば、留められるものも留められなくなる。

 

 個人的には、現在中国政府がとっている封じ込め策には限界があり、広がった後の対応について考えなえればならないと思っているが、ワクチンの開発等については日本としても協力できることが少なくないだろう。水際対策については様々な意見もあるようだが、現時点では致死率がそこまで高くないという専門家の意見が反映されているのではないか。それが正しいことを祈りたい。