Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

豚肉パニック

 既にメディアでも何度か報道されている内容に関連した情報だが、中国だけではなく韓国でも豚コレラが発見され、早速中国政府は韓国産豚肉の輸入制限を実施した(中国、韓国からのブタ輸入を禁止 アフリカ豚コレラ発生受け 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。だが、豚コレラ被害は日本でも広がりつつあり’(日本の畜産壊滅か…!? 豚コレラ「殺処分と拡大阻止」の壮絶な現場(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/4))、致死率100%とも言われる強力な感染症は世界中の畜産業に大きな影響を与えかねない(広がる豚コレラ ワクチン接種で揺れる国・業者 :日本経済新聞)。特に野生のイノシシが感染源ではないかと想定されており、その撲滅にはかなりの時間が掛かることになる。加えてワクチン開発には10年レベルの時間が必要との声もある(追記:アフリカ豚コレラはまだ日本には入っていない様で、日本の場合にはワクチンが存在するようだ。一方中国で広がっている豚コレラにはワクチンが現状存在しない)。

 

 だが日本では、輸出はともかく国内的に見れば豚は食肉の一つとして重要ではあるが致命的な存在ではない。何よりも豚肉を重視するのは、中国でのことである(豚肉を食べさせろ! パニック状態になる中国庶民 | ニコニコニュース)。既に公式統計でも1100万頭近くの処分が行われていると報道され、一部では1億頭(全体の1/3以上)を超えるとされる(CNN.co.jp : アフリカ豚コレラで1億頭処分、緊急備蓄の放出も 中国)ように原産地がアフリカであるとされるコレラの影響を既に大きく受けている(中国、備蓄豚肉放出へ 豚コレラ流行受け 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。一時期は沈静化しているとの報道も出ていたが、残念ながらそれはパニック抑制のための情報統制だった様だ(日本も要警戒を 中国でアフリカ豚コレラが猛威:日経ビジネス電子版)。既に中国における豚肉価格はかなり上昇(40%近く)しているとされ(豚肉がピンチ! 中国人の「国民食」高騰に政府があの手この手 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)、配給が始まっているところもあるとの情報も出ている(中国の豚肉急騰、祝賀行事控え対策に苦慮 - WSJ)。さらにこの問題が申告なのは、収拾に入るのではなくまだ拡大しつつある状態のままなのだ。

 多くの人は知っていると思うが、豚肉は中華料理には欠かせない。中国の食肉の約60%が豚肉とされる様な国民食材である。一方で、過去の政変というか政府妥当の動きというのは食糧難から始まることが多いことも事実。今回の場合は、全ての食料が不足している訳ではないが、アメリカとの貿易戦争において面子を捨ててでも食料輸入への妥協案を出さざるを得ない(米中次官級貿易協議始まる 中国代表団が農家視察へ、大豆や豚肉に関心 - エキサイトニュース)のは、こうした背景と無縁ではない(中国、米産大豆・豚肉など追加関税除外へ 交渉控え緊張緩和 - ロイター)。

 中国の豚肉消費量は世界的に見ても非常に大きく(世界一の豚肉消費大国:中国の動向をレポート | 高橋 寛 オフィシャルサイト)、50%以上を占める。そんな国の供給量が壊滅してしまうと、世界中からかき集めても豚肉が不足することになる。さらに豚コレラが世界中でも猛威をふるえばそれすらも不可能になる。実際、中国は経済発展のおかげで豚肉の消費量が急増しており、庶民が一度味わったモノを容易に捨てられないのはどこの国でも同じ事。これが反政府運動に広がるかどうかは今のところわからないが、現在進行中の香港問題よりもこちらの方が共産党政府にとってはずっと深刻な問題なのではないかという気がしている。

 

 この問題が怖いのは、打てる手が少ないことと、じわじわと深刻度が高まっていくことであると考えている。急激なパニックを引き起こす訳ではないが、徐々に中国国民の不満が高まっていくことがミソである。今後、各地で豚肉デモが発生し始めると、その動きは全土に広がっていくことになるだろう。今のところ、そこまでの広がりを見せてはいないが、だからといって問題が収拾している訳ではない。むしろ、米中貿易戦争どころではなく国内パニックを押さえるのに精一杯ということにすらなりかねない。

 面子では飯は食えない。まさにそういうこと。中国の人口はある意味で大きな武器であるが、同時に最大の弱点でもある。その弱点をさらけ出さざる得ない時、強力な統制力で国内を締め付けている中国共産党ですら制御出来ない動きが起こってもおかしくない。米中貿易戦争レベルや、中国国内の不動産バブル崩壊は強権発動により対応出来ても食い物の恨みはそれ以上に恐ろしい。今の中国が成立しているのは、何より国民を食べさせられているからなのだから。