Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国にルビコン川を渡らせる文政権

 レーダー照射問題(日韓「レーダー照射問題」、何が起きていたのか、改めて検証する | ハーバービジネスオンライン)は、予想通り韓国が自らの非を一切認めないまま平行線に終始しそうな流れである。対話を重ねよという声はある(東京新聞:レーダー照射 対話重ね、矛を収めよ:社説・コラム(TOKYO Web))が現状が既に対話している訳であり、対話にならない形に韓国側が持ち込んでいるのはこの件を追いかけている人なら気付くであろう。彼らは、日本がどれだけの証拠を見せても、自ら非を認めるつもりはない。そして唯一両者との同盟関係にあり仲裁可能なアメリカも、データを自衛隊から受け取り状況は理解しているものの、積極的な関与をしないであろうことは既に語られている(在日米軍トップ「日韓の問題は対話で解決を」)。当然韓国側もそうなるであろうことは理解した上で、今回の交渉に臨んでいる。日本側としてはいろいろな証拠を突きつけ事実を認めさせようとするが、韓国との防衛協力体制を無視しえないため有耶無耶という落としどころを飲まざるを得ないのではないかと予想する。すなわち、結局両国政府とも自国の主張が正しいという宣言に留まるということ。もちろん、これまでの情報を見る限り日本側の主張に理があるのは言うまでもないが、こういった問題は明確な結論をつけにくく、日本にとっては承服しかねる結果だろうが表面的にはドローに持ち込まれることになるだろう。ただし、その代償として韓国は日米だけでなく大きく信用を棄損した。アメリカが韓国に大きな不信感を抱いている(北朝鮮は悪くない? 韓国が若者に「洗脳教育」 文在寅政権の教科書修正に米国から警告の声(1/2) | JBpress(日本ビジネスプレス))のは、既に数多くの報道で傍証されている(【スクープ最前線】レーダー照射でトランプ氏が韓国に激怒! マティス退任で「在韓米軍撤退」も加速か (1/2ページ) - zakzak)、(https://japanese.joins.com/article/179/246179.html)。

 文政権は、いわゆる徴用工問題(正式には朝鮮人労働者問題)についてもそうだし、それ以外にもいわゆる慰安婦問題についても以前決めた大きな方針に従い、現場に放置気味にしているのは良くわかる。もちろん、細部では対応に苦慮する側面もあるだろうが、大きく見れば日韓に生じている葛藤をそれほど気にしていないからこその姿勢である。要するに日本の地位や尊厳にそもそも興味がないと言ってよいが、搾取すべき相手としての日本は利用する。その上で、今後は更に明確な日本への対抗姿勢を見せてもおかしくない。文大統領は1月10日に現状の日韓問題に対する見解表明(韓国の文在寅大統領が日韓関係めぐる見解を表明へ 10日に記者会見 - ライブドアニュース)をする予定だが、ここでは原則論等の当たり障りのない話に終始すると予測するものの、3月1日には三・一独立運動三・一運動 - Wikipedia)100周年があり、場合によっては演説で明確な日本との対立路線を表明(示唆)するかもしれない。韓国を巡る情勢を考えるとタイミング的には少し早いようにも思うが、記念の節目だからこそインパクトのある態度を示してくる可能性は無視できない。それが現実となれば、現状のただでさえ危うい日韓関係をより不安定にするための楔となるだろう。だが、日本には現在以上の悪意に対抗できる準備は整っていない。

 もちろん普通に考えれば、現時点での日本との極端な対立はアメリカとの同盟解消につながりかねず、韓国としてメリットに乏しく強く表明することはないと考えるのが常識である。だが、進歩派(親北朝鮮)である文政権は連邦制という形で北朝鮮との統一を目指しており、同時に民族自決としてのアメリカの排除と積年反攻としての日本への圧力を企図していると見ている。だからこそ、普段からアメリカや日本と距離を置くための小さなジャブを放ち続け、更には軍事力を持って日本に言うことをきかせたいという希望がそこかしこにこぼれ見える。実際、韓国が北朝鮮と統一して経済的なメリットがあるかと言えば、少なくとも短期には皆無である。むしろ、ドイツと同様に統一後は一時的に大きく経済力を低下し、韓国はドイツ以上の経済的なダメージを受けるだろう。だからかそではあるが、以前より統一時に日本からの資金援助を受けるのが当然のように韓国では語られている(南北統一のプラン検討本格化 その資金200兆円は日本から? 鉱物資源が元手? | ザ・リバティweb)。現状の様な対立構造下で日本政府が韓国に費用を支払うかは疑問もあるが、北朝鮮との国交樹立時に費用を支払う話は以前より有り、全くのゼロ回答は難しいだろうと予測する。もちろん拉致問題の進展あっての話ではあるが。

 このように、韓国の文大統領が北朝鮮の報道官になっているという話題は良く目にするが、核廃棄よりも経済制裁解除を先にすべきという韓国側の意見(そして北朝鮮の願望)として表れている。欧米においては一顧だにされていない動きだが、その背景には北朝鮮と韓国共同の核として確保したいという韓国側の思惑が透けて見える。このあたりは元日経新聞社の鈴置氏の連載においてかなり詳しく説明されている(早読み 深読み 朝鮮半島:日経ビジネスオンライン)ので参照いただきたい。統一すれば、仮に核を直接的に手に入れることは難しくとも、技術情報や関わった技術者は間違いなく手に入れられる。韓国の技術力であれば、実用化にはそれほど時間はかからない。そして、得た力(実物の核を持たずともその可能性)により脅しをかける対象としては日本が最も適切である。そのための布石は常々打ち続けられているのだから。

 別に、私は恐怖を煽りたくてここで考えを書いているわけではない。また、韓国内には未だ保守思想の国民も少なくない。こうした人たちはアメリカとの連携を重要視しているし、用日とは言えど日本に一定の価値を認めているケースも多い。だからこそ、文政権が「如何に韓国国民を日本国民と心理的に離反させるか」を考えていることを何より懸念する。政権奪取後に矢継ぎ早に出されてきた日本への圧力・嫌がらせは、決して行き当たりばったりではなく、いずれもこうした目的に沿っていると考えれば腑に落ちるのだ。繰り返すが、これは明確な根拠のない想像であり真実かどうかはわからない。ただ、反日という動力を煽ることで韓国国民に北朝鮮との統一を避けられなくなるように、また日本を完全な敵国に設定できるように追い込んでいるように見える。

 以前、こんなエントリを書いたことがある(韓国にヒトラーが誕生する可能性 - Alternative Issue)。そこで引用したプロパガンダの手法は、現在韓国が日本に対して用いている方法と非常に似ている。納得できる人も多いのではないか。

・民衆を味方につけるには、文章より演説のほうが効果がある
・同じ話を1000回くり返して初めて民衆は理解する
・圧倒的多数の民衆は、女性のように論理ではなく感情で動く
・つねに敵をつくり、自分たちがその犠牲者だと強調する
・綴りの長い言葉は使わず、限られた語彙で話を単純化する

  文政権は経済失策により支持率を落としている。正直、素人と変わらない経済政策しか打ち出せず、担当官僚や大臣級をトランプ大統領以上に何人も変えている。そんな状況だからこそ明確な国外の敵が必要であり、嘘でもプロパガンダとして繰り返し国民に訴え続けていると見える。これまでも韓国で行われてきた手法を広く展しているだけのことではあるが。また、これも何度も書いてきたことであるが、韓国は政権の正統性を保つために反日を国是としてきた。このことは憲法前文にまで明記されている(大韓民国憲法・前文 | シンシアリーのブログ)。そして、特に最近そうした動きが先鋭化させているのは多くの人が感じていることではないだろうか。

 韓国には未だ北朝鮮との統一は現実的ではないと考える人たちは少なくない(変わる韓国国民の統一意識 (上)「統一は必要」が減り「分断の維持」が増加)。しかし、文政権は日本やアメリカとの対立を深めることで、統一しかないという心理に多くの韓国人を追い込もうとしている感じ(北との統一にしか希望を抱けない、韓国の極度な経済閉塞感(深川 由起子) | 現代ビジネス | 講談社(1/3))が強くしている。私からすればそれはルビコン川(ルビコン川 - Wikipedia)に見えるのだが、その動きに表だって反発できない閉そく感が見事に韓国を覆っている。日本との協調路線を取れば、経済的な復活も見えるかもしれない。しかし、これまで散々日本悪しと宣伝してきた手前、政治家たちとメディアはその前言を翻せない。こうした韓国に充満した空気を上手く利用して、北朝鮮との明るい未来の見えない統一にひた走る現政権は、鈴置氏が韓国人の言葉として紹介した「レミングの群れ(韓国はレミングの群れだ:日経ビジネスオンライン)」を明確な意図をもって誘導しているように見えてしまう。日本政府としてもこうした動きの分析はしているであろう。だからこそ、過去から比べれば大きく改善したものの政府の対応が多くの人から見ればソフト過ぎるという反応になるのだと思う。

 文政権が行っているのは、単純な日韓・日米の離間(反日・反米)行動ではない。国民に急激な反発を受けないように配慮しながらも、徐々に韓国の国民心理を日米から引き反し、北朝鮮との統一しかない状況に縛りつけようとしている。文政権がメインターゲットとしている相手が、日本やアメリカではなく韓国自身であることが日米に有効な打つ手を無くさせている。韓国自身が引き返せなくなるラインがどこにあるかはわからないが、現状悲観的かつ深刻に動向を注視している。