Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国がレーダー照射問題で強硬な訳を考える

 私は日本人だからというのもあるが、基本的に日本の防衛省から出る情報(「射撃レーダーは船舶捜索適さず」政府に怒りとあきれ - 産経ニュース)を韓国側の情報(https://japanese.joins.com/article/413/248413.html)よりも信じている。既にこの問題に注意を払う人たちは、韓国メディアから漏れ出てくる言い訳が二転三転していることに辟易としているのではないかと思う。

 ネットに出ているまとめで恐縮だが、この問題が明らかになってからの韓国側の反応は概ねこんな感じであろうか。

そのような事実は無い
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レーダーを使用した事実は無い
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現場海域で通常の任務を行っていただけだ
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実は北の遭難船舶を捜索していた
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北の遭難船を探す目的でレーダーを使ったが、FCSは作動させていない
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天候が悪かったため全てのレーダーを使った
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一瞬だけFCSレーダーのビーム上に海自の航空機が偶然入った
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日本政府に抗議の事実を公表しないよう要求
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船舶捜索のためのマニュアル通り、航海用レーダーとFCSレーダーをフル稼働していた
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P1哨戒機が威嚇してきたのでFCSレーダーのビームを照射し続けた
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P1哨戒機にFCSレーダーのビーム照射はしていない
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韓国海軍がP1哨戒機を威嚇する行為は無かった
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P1哨戒機は韓国海洋警察を無線で呼んでいたので関係ないから無視した
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日本は大和碓で韓国海軍の活動を制限する意図がある
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国籍確認のためカメラを向けただけFCSレーダーは起動していない
 

 そして、現時点では『外交部の当局者は会談後、記者団に対し、韓国の艦艇が海上自衛隊の哨戒機にレーダーを照射したとされる問題を巡り、「日本側が事実関係を明確に確認せず、メディアに公開したことについて遺憾を表明した」と明らかにした。』と報道されている(韓国 レーダー照射問題で日本に遺憾表明=「引き続き意思疎通」(聯合ニュース) - Yahoo!ニュース)。火器管制レーダーの照射は間違いなく準戦闘行為であり、簡単に流せる問題ではない(遭遇艦船へのレーダー照射禁止、西太平洋海軍シンポ :日本経済新聞)。それに対し、問題の矮小化に必死な状況である(レーダー照射、韓国紙「この程度で非難とは」 : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE))。

 実際、レーダー照射の事実は哨戒機がデータとして取集しており、加えて自衛隊機が照射された位置についても明らかにできるであろう(既にメディアでは以下の通り能登沖のそう遠くない位置とされている)。この地図を信じるとすれば、日本の領海付近でありこれも大きな問題である(ただし飛行機は移動するので、位置を固定して考えるのは難しい)。また、防衛省から出ている情報通り5分以上の照射となれば、意図が無かったとは考えにくい。

https://img.kaikai.ch/img/58251/1

日本政府としてはこの事実を公表することの影響を見定めている(あるいは裏側で韓国軍と落としどころの話をしている)状況ではないか。米軍とも情報の共有をしているはずなので、そのあたりの調整にも多少時間がかかると見る。

 

 元々、韓国は中国と同様に面子を非常に重視する社会であり、特に通常外交には用いない国内的な論理を日本にそのままぶつけてくるのが特徴である。日本も、日米韓の軍事連携を重視するため韓国の我儘を聞いてきた歴史を持つ。だが、そのことにメリットがあった時代はほぼ終わりを告げつつある。韓国は現政権になり北朝鮮との融和に邁進し、韓米同盟すら放棄しかねない勢いである。そんな中、韓国の我儘を許容するための分水嶺をおそらく現在は越えており、かなり危険な状況と考えて良い。

 逆に気になるのは、日本側が証拠を公表すればすぐに韓国側の嘘(詭弁)が容易に知られてしまうような状況で、なぜここまで韓国軍当局が強固な態度を示しているのかである。文政権になってから軍も多くのポストを左派に取られているという話は漏れ聞くが、仮にそれが進行していてもまだ完全に掌握を終えているとは思えない。政治問題とならない範囲(政権上層部が絡まなけい現場レベル)では、自衛隊と韓国軍の関係はそれほど悪くないという意見もある。かつて南スーダンPKOにおいて自衛隊が韓国軍に弾薬を貸し出した件でも、現地では謝意が伝えられたが、政治が絡むと面子の問題で複雑になった(自衛隊南スーダン派遣 - Wikipedia)。その理由は非常に単純で、これまで醸成してきた世論から巻き起こる国内的な批判を抑えきれないからである。あるいは、侮日や卑日の感覚が浸透したため、こうした行為が出やすくなっているという意見もあろう。実際、11月にも日本のEEZで韓国の海洋警備隊が日本漁船の操業中止要求を行い問題となった(韓国警備艦の操業中止要求、外務省が抗議 - 産経ニュース)。

 しかし、今回の場合はどうだろう。自衛隊哨戒機の飛行目的は明らかにされていないが、多くの場合は不審船の取締りであろう。それが瀬取り瀬取り - Wikipedia)の調査なのか、あるいは韓国軍の駆逐艦が日本のEEZに侵入を図ろうとしたことに対するものかは現時点ではわからない。どちらにしても、火器管制レーダー照射の理由として韓国側から出ている情報はナンセンスで、以下の3つしか考えられない。

・現場の暴走(日本に対する力の誇示:政権への忖度 or 対日戦闘訓練)

・政権、あるいは軍上層部からの指示(理由は同上:国内的なプロパガンダ

・機器の故障(だが、照射時間や2回あったことから可能性が低い)

 示威行為を行う理由は、竹島付近を韓国の実効支配地域として誇示する目的がある。実際そのような活動を韓国は増加させているのは事実だ。だが理由がどうであれ、今回の様な火器管制レーダー照射という重大問題までは容易に行えるものではない。さらに哨戒機の位置が明らかに日本のEEZ内であるとすれば、問題はさらに深刻である。通常であれば、使用ミス(あるいは故障)を落としどころとして複雑化させない。その場合、日本側も狙いはわかっていても強硬に出にくくなる。だが、その容易な手法を敢えて取らない(できない)理由としては以下のようなケースが考えられる。

1) 韓国政府が軍をコントロールできていない(軍が挑発行為を指示)

2) 哨戒機を追い返さなければならない理由があった

3) 韓国政府からの明示しない挑発意図(下手すれば戦争直前になってしまう)

 3)に関しては、さすがに文政権でもできないし、少なくとも今はする意味がない。であれば、軍の暴走かあるいは隠したい行為があったと考えるのが妥当であろう。元々北朝鮮からの日韓分断工作を受けており、更に現政権がほぼそれに同調していること、並びに国内的なプロパガンダの必要性から日本に対して強気に出ることは多い。だが、それは問題を有耶無耶にできるという自信があってのこと。正直、韓国メディアの反応を見る限り韓国政府はかなり切羽詰っていると見ている。

 だからこそ、問題を大きくしたくないという悲鳴のような声をメディアを通じて何度も発信しているし、無茶振り的な日本への責任転嫁に逃げているのが上述の二転三転に繋がる。混乱していると考えるのが最もしっくりとくる。仮に現場レベルで挑発行為が頻発するようであれば、政府としては困ってしまう。挑発というのはコントロールされて初めて意味を持つ。まだ、韓国政府としては日本の対応に文句は言っていても明確な見解を出していないが、正直なところ頭を抱えているのではないかと推察している。

 もちろん可能性は高くないが、一部で囁かれているように北朝鮮への密輸(瀬取り)を政府が見逃す、指揮あるいは保護しているケースも考えられる。ただ、これは韓国という国家をアメリカからの制裁に追い込む道であり、民間企業をダミーとして使うことはあれど軍を関与させるなど考えにくい。デメリットを考えると、さすがにそこまで愚かではないと思いたい。もっとも、仮に瀬取りではなくとも何らかの不正な取引をしていたとすれば、どんな詭弁を弄しても絶対に認める訳にはいかないし、対日を想定した何らかの軍事工作をしていたとしても同様だろう。このあたりの状況については偵察衛星等からも情報収集が可能であり、今後明らかになってくるのではないか。

 

 よって、現時点で考えられる最も可能性が高い理由は、やはり軍の混乱(暴走)であろう。政権への忖度なのか、あるいは韓国内の雰囲気に酔ってのものなのか、それとも売名行為なのかはわからない。ただ、おそらく状況を政権側も掌握出来ておらず、暴走した身内(左派)を簡単に処分をすることができない自縄自縛に陥っているのではないかと予想する。軍の掌握のために処分することなく、問題を内々に納めるべく行動しようとしているのであろう。だが文政権になって日本とのパイプが非常に細くなっており、おそらくそれは上手く行っていない。落としどころを探るにも、これまでの対日方針からして下手な謝罪しても国内的な反発を呼ぶ。結果的に逆切れのように日本に責任を転嫁する形で、直ぐにばれる嘘であっても強気な態度を押し通すしかないというもの。素人外交の極みと言っても良いかもしれない。

 兎に角、決して認めることはないが韓国では実質的な反日教育を恒常的に行っており、少なくない国民は日本を敵国と考えるか、あるいは親日的な態度を表明できない環境を築き上げている。個人レベルでは日本を好きという韓国人は数多く知っているが、それを韓国内では決しておおっぴらに口にできない。こうしたコントロール不能な社会意識を作り出してしまった結果、政権が取れる選択肢を自ら狭めてしまっている。今回の問題もその一つの成果と言えるだろう。もちろんこの問題は韓国自身が解決しないといけないものではあるが、それがすぐにできるとは思えない。