Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

豊洲政治ゲーム

 築地市場豊洲移転が大問題となってる。まだまだ事実関係が不明な点が少なくないが、一番の問題と感じるのは計画の検討や手続き上の瑕疵追求ではなく、政治ゲームを皆が弄んでいる印象がある。もちろんその中心はメディアであるが、小池知事の自民党都連追求パフォーマンスに野党もまんまと乗せられている感じなのだ。
 専門家会議の提言が蔑ろにされた経緯や、事実関係を有耶無耶にしてきた都のやり方に大いなる疑問があるのはその通りである。あるいは新たな市場の建物に問題点があるという声も聞こえてくる。このあたりに関しては、都の担当者の調整不足が原因だろう。そのことが問題であるのは間違いない。だが、一方で老朽化した築地市場に大きな問題があることも事実だと思う。手続き等に問題があるのは事実だろうが、マスコミなどが煽るほどに問題が大きいのかどうかはしっかり検証しなければならないだろう。

 今回の豊洲問題は、実質的にこれまでの自民党都連が中心になって推進してきた事業、あるいはオリンピック関連の利権に切り込むための政争の一つである。問題の発覚は偶然の産物かもしれないが、当初よりその意思を小池知事は端々に匂わせていた。現状メディアを賑わせている問題点は以下の様なものだろう。

(1)有識者が提言した盛土が都の裁量により取りやめになっていた
(2)上記の結果、地下に水が溜まっており有毒性が危惧される
(3)工事を受注したゼネコンが、全て落札率100%近くで受注している(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160914-00000071-san-soci)

 確かに都の社会に対する誠実さが欠けていたことはその通りであろう。都民の不安への対応が十分ではないと思う。有毒物質に対して盛土がどの程度有効かについては、私個人としては良くわからない。揮発性のベンゼンが湧出するのであれば盛土では防ぎようないからである。完全に防げるとは限らないが、底盤にコンクリートの床を設けるのが最も現実的な遮断方法だと思う(それに加えていろいろな対応は打てる)。
 地下に溜まった水の有毒性については今後調査結果が出てくるだろうが、現状の速報では注意しなければならないレベルではないとしているようだ(http://www.j-cast.com/2016/09/17278402.html)。一方で、既にメディアにもおかしさは指摘されているが、水が強アルカリだったことはコンクリートのアルカリ成分が湧出していることによるもので、地盤汚染による可能性が低いこともメディアの検証不足による報道であった。
 本当に問題があるかどうかはまだまだ調査と検証が必要だが、私はこうした問題は徐々にトーンダウンしていくと思う。

 最後にゼネコンの落札率であるが、東日本大震災の復興や東京オリンピック開催に伴い工事費が全国的に高騰しているのは周知の事実である。公共工事の積算する費用は基本的に1年前の価格がベースとなる(もちろん最新の情報も反映される部分はある)ため、物価高騰時には施工業者の見積りとの乖離が大きくなることも少なくない。要するに、発注価格が当初より実勢と比較して低くなりすぎることがある。今回も一回目の応札では辞退になり、都がヒヤリングを行い予定価格を変更している。この段階で実質的にネゴが行われており、更に予定価格が公表されているのだから落札率がギリギリになるのは、当たり前とも言える。
 マスコミは未だに談合や建設業界の価格吊り上げを喧伝するが、一部問題があるところも否定しないものの現状ではかなり状況は改善されている。マスコミ業界の公共受注関連があれば、おそらくそれよりも健全だと言ってよいと思う。ただ、記事にもあるように一社応札となっている点は価格設定上の問題がないとは言えない。大規模工事故に、JV(ジョイントベンチャーhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC_(%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%94%A8%E8%AA%9E))を複数工事区に分けて応札させると、この様な状況になる可能性は容易に推測できた。

 このような状況は現状数多くの建設需要があり、実質的にに利益率の低い公共工事を受注したくないという業者の心理が働いているものと感じている。実は同じような問題は日本全国で発生しており、入札を行っても1回目では落札されないなんて事例が各地で頻発している(http://www.nikkei.com/article/DGXLZO78640530Q4A021C1L60000/)。これはデータがある訳ではない知り合いからの伝聞だが、公共工事の入札不落(入札を行ったが応札されない)が一時期30〜40%近くあったと聞いたことがある。もちろん、発注内容に見直し等による再入札で工事は進捗するが、今回の豊洲市場と同じようなことが当たり前の様に発生している。

 さて、今回の問題について様々な調査検討しなければならない問題があるのは事実だが、最終的には安全性の確認を行い、場合によっては長期のモニタリングを経て、それでも移転を行うという形になるように思う。その間に関係者の処罰や責任追及が行われたりオリンピック関係の工事内容変更もあるだろうが、落としどころはそれ以外に私には思いつかない。
 一部には、豊洲市場をカジノとして活用するなんてトンデモ案も出ている(http://www.asagei.com/excerpt/65604)ようだが、用途の異なる施設に容易に改造できないことなど普通に考えればわかることである。まあ、考えとして面白いとは思うが、特区の活用によるカジノ化の法案すらできていない状況では絵に描いた餅であろう。

 そうすると、現在議論が噴出している問題は何のために行われるのか。要するに小池知事と自民党都連の政治闘争が主たるテーマだと見ている。どこかで振り上げた手は降ろすものの、都連を敵に仕立てるためにマスコミや野党を最大限に利用しているという状況だと思う。
 もっとも、私自身都民ではないものの自民党都連の動きには辟易している面もあり、生暖かくこのゲームを観戦していたいといったところであろうか。小池知事は矛を収める時期さえ間違えなければ、民意という一定の成果を手に入れることができるだろう。