Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

建設業女性化

 建設業女性化とは言っても、最近世に溢れている擬人化文化である例えば「艦隊これくしょん(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%A6%E9%9A%8A%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%8F%E3%81%97%E3%82%87%E3%82%93_-%E8%89%A6%E3%81%93%E3%82%8C-)」とか、「ロボットガールズZ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BAZ)」などの萌え系のそれをイメージしているわけではない。
 かつては、土木系の仕事というのは男性の独断場であった。力仕事は男の仕事というイメージが強かったが、現代社会では機械などが様々な補助をしてくれるので女性でも工事現場での仕事を担うことが十分にできる。事実女性の現場監督なども増加しているし、様々な専門職でも女性の数が増加している(http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20131119.html)。
 女性進出の力を借りてイメージ払拭しようという試みも行われている。

「ドボジョ」、イケメンで3K払拭カレンダー(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131215-OYT1T00343.htm?from=ylist

 しかし、ここにきて女性の建設現場等への進出が増加している理由は実のところ何なのだろうか。先ほども触れたが、工事現場における機械化が進展していることが一つの理由として挙げられる。単純な力仕事となれば性差による能力に違いがはっきりと現れてしまうが、建設重機などを用いるとすれば運動能力の差はさほど大きな問題とはならない。
 そしてもう一つの理由としては、永らく続いた建設不況があるのではないかと考える。建設不況の煽りを受けて、建設業から去っていった人は少なくない。その影響により、ここに来て職人不足は大きな社会問題に広がりつつあるが、だからと言って急に職人が復帰する訳ではない。と言うのも、現在の建設業の景気の良さが一体いつまで続くのかという疑念が払拭できないことがあるだろう。
 一時期大きく下がってしまった建設作業員の給与単価は、とてもではないが家族を養えるようなレベルではないところまで下がっていた。バブル期には、大して技能のない単純作業員ですら日当が2〜3万円などというかけ声が飛んでいたが、建設不況はそれを8000円程度にまで押し下げた。その上で、毎日仕事があるかどうかもわからない状況になり、業種によっては月に10日ほどしか仕事がないなどと言う事態も生じていたとされる。
 これでは、一人で生きていくことすら難しい。ましてや家族を養うなど全く想定すらできないほどである。かつては、現場監督よりも職人の方が稼ぎが良いなんて時代すらあったが、現状は大きく逆転してしまった。確かに、一部の特殊技能を有する人たちはそれなりに稼いでいるケースもあるだろうが、会社でもそうであるように一部のスターのみで組織が成立している訳ではない。

 3Kと呼ばれる職場環境であっても、相応の収入が保証されるのであれば人は集まるだろう。ただ、今後かつてのバブル期のような高給が続くことはやはり期待しづらい。すなわち、建設会社がそれほど多くの人件費を支払いきれないと言うことでもある。
 今女性たちが工事現場に出始めているのは、これまで男性が担ってきた役割を補填するようになっているからである。こんなことを書けば女性差別と言われることもあるかも知れないが、家族を背負うことを想定して収入を得ようとする男性からすれば不足する給与であっても、例えば独身や共働きを想定した女性にとっては魅力的な職場となっているのではないだろうか。
 もちろんこれまでのイメージがあるため多くの女性の賛同を得られるようなものでは無く、それはまだ社会の一部の動向かも知れない。しかし、男性の人生設計の意識と女性の意識の差の部分に建設業が納まり始めている可能性があるのではないか。

 逆に言えば、建設会社や国土交通省(その他自治体)などは今後の建設業の担い手として女性を今以上に大きくクローズアップしてフォローしていく必要があるのではないかと思う。建設業界はアベノミクスで一時的には一息付けたとしても、誰もこの後ずっとそれが続くとは信じていない。女性の方が給料が安くて良いなどと言うつもりはないが、働き手としての女性を活用する場所として建設業は一定の可能性を秘めていると考えた方が良い。
 しかし、これまでの男性文化が根強く残っている建設業界は、おそらく女性にとってまだ問題が多い場所であるだろう。まずは、女性が担える建設現場という物を明確にイメージし、そこに向けての環境改善をもっと前面に押し出していくことは重要なことではないだろうか。
 これも一つのユニバーサルデザインではないかと思うのだ。