Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

特定国民

憲法学者小林氏「国民怒りの声」設立、参院選出馬へ(http://www.nikkansports.com/general/news/1644563.html
小林節氏ら参院選出馬へ 「安保法廃止」で政治団体設立(http://www.asahi.com/articles/ASJ584SQTJ58UTFK001.html

新たな政治団体は政策として、安保法廃止▽言論の自由の回復▽消費増税の延期▽原発廃止▽「憲法改悪」阻止――など

 個人的には、小林氏の活動を否定的ではなく興味深く見ている。憲法学者という存在を国民が認識したのは、安保法制改正反対運動であった。正しいかどうかはわからないが、そこで名を売ったことが今回の活動に結びついたのではないかと思う。
 ご本人も「国民怒りの声」という奇天烈な政党名には否定的であったようだが、それでも「国民の声」という名称を考えていたそうである。私個人としては、あまり自分勝手に国民を代表してほしいとは思わない。できれば「特定国民の声」とでも自称してもらった方が良い。

 今の安倍政権の政策が全て良いかと言われれば、私も否定するだろう。ただ、それに代わる存在がいないことを木小林氏も感じられているようだ。さて、この政党は現政権に替わる存在となり得るのか。昨年既に、現政権に代わる政権名簿を既に掲げていたようだ(http://pbs.twimg.com/media/CNurFq1UkAIaUf2.jpg)。
 その中身を見ると非常に興味深い。私の穿った見方ではあるが、どうみても実力本位ではなく(特定の政治思考の方々に)映える名前を並べているようにしか見えないのである。もしこのような内閣が成立したとすれば、鳩山政権時代以上のスぺクタルが見られるかもしれないと期待を寄せてしまうではないか。

 ただ残念なことに、クラウドファンディングで資金調達ができない場合には活動を停止するという話となっている。せっかくの一大イベントである。できれば、特定団体や特定国家から資金を得てでも活動を続けてほしいと思う。

 様々なところで囁かれている「現政権が消去法で選択されている」という指摘はおそらく正しい。すなわち現政権以上の良い政策を提示すれば政権交代や、少なくとも政権再編に動く可能性が無い訳ではない。なぜなら、多くのメディアが指摘しているように、アベノミクスが必ずしもすべての国民を幸せにはしていないからである。
 多くの国民が幸せを感じられる政策を提示し納得させられたなら、仮に信頼が底を這っている民進党であっても政権交代はできると私は思う。だとすれば、本来はこのような政党を新たに作る必要はない。つまり、新たな政党を作らなければならないと考えたのは民進党には期待できないと思ったからである。
 その割に、閣僚名簿案に民進党からの参加者が多いことはこの際置いておこう。

 民主主義は、最良の政治ではないが妥当な政治形態だと私は思っている。私は、最良の政治は徳ある統治者による専制政治だと考えているが、現実を考えると統治者の徳と言う非常に曖昧な基準に期待する訳にはいかない。その結果、多くの国民が支持する政党が政権を運営する現状の形態が形成された。
 もちろん選挙制度に完璧なものなどある筈もなく、不平不満は常にあり続けるであろう。あるいは、時に国民は支持すべき政党を一時のブームにより誤ることもあるだろう。

 ただそれでも、私は極端に走りすぎない仕組みが現在作られていると思う。ベストではない、ひょっとするとベターですらないかもしれない。しかし、大きくは失敗しない仕組みが形成されていると考える。
 そこでは、現状に反対意見を述べることが許容されている。こうした議論を通じて、国民は何が正しいかを少しずつ見定めていくのだ。共産主義を主張する国民もいるだろうし、リベラルを是とする人もいる。そして、保守を由とする人も。
 国民全体の意思決定が緩やかになるように形成されているので、ドラスティックな動きは容易には出てこない。しかし、今回の政党結成などを見ればそれに期待しているのは間違いないだろう。それは、大穴狙いの一発逆転ゲームに似ている。

 私は、個人的にその賭けに乗りたいとは思わない。いや、賭けには乗りたくないと思う国民はおそらく多いだろう。それが、こうした活動が支持されない一番の原因だと思う。だからこそ、賭けにチャレンジする自分たちの政党に「国民」を掲げることの可笑しさが深く心に染みる。おそらく、これまで大きな勝負をされたことがないのであろう。
 大した掛け金を張らず大きな勝負を標榜する剽軽さには拍手を送りたいが、それに相乗りするような「特定国民」とは距離を置いておきたい。それが、今回の話を聞いて感じたことである。