Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

保守的なリベラル

 少し前の話ではあるが、サンデーモーニング関口宏氏が、安倍政権の高支持率に対して若者はもっと変化を求めるべきといったコメントをしたことがネット上で話題となっていた(http://news.livedoor.com/article/detail/13187127/)。同時に年代別の政党支持率を見ると若者が自民党を応援しており、年代の高い層が民進党共産党を支持している状況もわかる(http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2016/news2/20160705-OYT1T50109.html)。昨年度の調査結果で恐縮だが、10代、20代の自民党支持率が他の年齢層よりも高い状況にある。これは、安倍政権の支持率になるとさらに顕著となっている(http://www.sankei.com/premium/news/170124/prm1701240004-n1.htmlhttp://www.blossoms-japan.com/entry/2017/06/19/215426)。

 元来、若者は体制に反抗するのが常であった。それは、権力闘争の一つの形であると言っても良い。持たざる者たちは持つ者たちに反抗するのである。では、今は反抗しない従順な状況なのであろうか。確かに、近年は暴力行為などを試みる数は正直かなり減少しているとは思う。だが、若者が体制に反抗し変化を求めていないかと言えばそんなことはない。それは、若者が体制(あるいは敵視べき持つ者)と認識している存在が一体何なのかと言う問題に行き着くであろう。
 リベラル陣営の人たちやメディアたちは、自分たちが今も反体制であると考えていると見える。だからこそ、支持率の高い「体制」である政権はどんなことをしても引きずり落としたい。あるいは、若者たちに政権に反対するような行動を起こしてほしい。だから、SEALDsなどは実質的な活動内容や説得力以上に持ち上げられた感じも強い。ところが、それ以外の多くの若者たちは、そんなリベラルの(しかも特権階級に見える人たち)こそを抵抗すべき体制と認識しているは思わないだろうか。

 良く出てくる疑問ではあるが、なぜ民進党の支持率が上がらないのか? 様々な意見はあろうが、私はその答えは簡単だと思う。それは現状を変えようとしていないからである。民進党の状況にシンパシーを抱くコアな人たちは既にその支持を行っている。だが、それ以外の状況に応じて支持を変化させる人たちは政党の動きを良く見ているのだ。私が見る限り民進党は実質的に体制維持の施策を次々と繰り出している。例えば、安倍政権が特区による旧来の規制を打ち破ろうとすれば、信じられないことにそれすらに反対する(http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170602/plt1706021700004-n1.htm)。能力不足で政権の揚げ足を取っているだけという意見もあるだろうが、私にはむしろ改革を行わずに現状を維持するための方策を的確に行っていると見えるのだ。そう考えてみれば、現状維持を獲得るために最も良い方法、自分たちが新しい大胆な施策を提案するのではなく、それを行おうとしている存在の価値を毀損することを愚直に実行している。改革のための政治論争は有耶無耶にされ、変化は停滞し現状が維持される。まさしく狙い通りではないか。
 もちろん、特区など現在行われている全てが正しいと言うつもりはない。現政権でもおかしな施策だと思う内容は数多くあると私は思う。だが、理想を掲げて現代社会を世界情勢の変化等に応じて変えていくという気概や行動は、民進党からは全く見えてはこない。

 「日本は世界で最も成功した社会主義である」という言葉を良く耳にする。世界を見渡すと確かにその通りだと首肯したくなる。日本が完璧で最高だと言うつもりはないが、だからと言って概括すれば悪い国ではない。一部の指標で劣る部分はあっても、総合的に見れば住みやすい良い国だと思う。この意見に同意しない人もいるだろうが、世界を見れば日本は相当に良い国である。この結果は、戦後を通じて団塊の世代などが努力し、生み出してきた理想の社会の一つの形ではないかと思う。もちろん、完璧な成功ではない。だが、社会において完璧なものなどありやしないのは誰もが理解していること。
 既に、戦後体制の中ではかなり優等生的な状況を構築できている。細部における矛盾はまだまだあろう。それを修正していく努力は必要である。だが、この体制は戦後に今の社会を構築してきた人たちに手厚いものでもある。だから、若者たちからすれば高齢者の方が随分と特をしていると考えるだろう。世代間闘争と言う言葉もあるが、既に材を得ている高齢者層と今からそれをしようとする若者たちの間の条件は公平ではない。既得権益を崩す取り組みは、まさに高齢者層や今の体制において利益を享受しているところから、奪おうとする行為に他ならない。

 別に安倍政権が、若者礼賛の施策を取っているというつもりはない。ただ、こうしたものはすべてバランスの上に存在する。若者がこのバランスを変えようとする動きを支持するのは当然の帰結だと言える。民進党が何故小売者の指示が高いのか。それは高齢者層の持っている既得権益を守るような動きをしているからである。
 実際、投票行動を見れば若者よりも高齢者の方が投票率が高い。人口も高齢者の方が多い。だからそうした有権者に媚びた施策が支持されやすいと考えるのはわかりやすい。安倍政権もそうした面はある。政治は全ての世代に向かう必要がある。

 さて、リベラル側からはあたかも特定アジア国家のように現政権を「極右」と呼ぶケースもあるが、これも世界的に見れば随分リベラルな政権だと私は考えている。それに対抗しようとするほどに、リベラルを自称する存在はむしろ左に偏っていく。
 経済政策や社会政策などは、現政権は本来リベラル陣営が提唱して実行すべき内容を次々と繰り出している。唯一、外交政策のみを持って「極右」などとレッテル貼りをするのは多くの国民からすれば、その意見こそが偏っているとみなされるだろう。

 外交面については、世界情勢の変化にどれだけ適切に対応できているかと言う問題がある。20年前と比べれば、日本を取り巻く世界の情勢は大きく変わっている。若者たちはネットなどを駆使してそうした情報に数多く触れている。もちろん一部で突出した認識の者たちもいるが、その程度や行動も世界的に見れば随分と大人しい。空前の売り手市場となっている就職戦線も一翼を担っているであろうが、世界を見る目が現在のリベラルを自称する人たちと若者との間では違うのではないか。
 同じ見方をしている筈と言う幻想が、ある程度歳を取ったリベラル陣営には幻想として残っている。いや、もはやそうであってほしいと願うレベルに来ているのかもしれないが、現実は残酷だ。

 リベラル陣営は、その活動によりこれまで一定以上の地位と権力を握ってきた。その自覚が無いこと(あるいはそれは当たり前の結果だと思っていること)が若者の気持ちに気づけない、若も達の支持を得られない一番の理由だと思う。リベラルは現状を守ろうとする抵抗勢力になっている。もちろん、私も含め同じような境遇にいる人たちにとって、今の社会は比較的居心地が良い。だが、それを将来を見据えてどう変化させるかが問題である。
 リベラルが若者に支持されなくなっている一番の理由、それはリベラルが抵抗勢力であり実質的な保守となっているためである。それが分からない限り、今後も若者層への支持が広がることはないだろう。だが、現状の民進党を見る限り変化へと踏み出すことは出来そうにもないのが、ある意味において非常に残念でもある。