Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

儚き小池バブル

 この前の都議会戦から始まった小池劇場は、民進党の崩壊まで加速させたという意味において、少なくとも政治ショーとしてはクライマックスを迎えつつある。私は、かつての民主党(現在崩壊しつつある民進党)にも一定の存在意義はあると考えてきたが、もちろんそれは日本という国家における言論の幅広さを担保するという意味においてである。
 今回の民進党解体劇に関して言えば、小沢黒幕説とか前原テロ説など様々な解説を見られるものの、個人的には細部の動きについてはあまり関心がない。むしろ、実質的な旧守姿勢を変えることのできなかった左翼(マスコミ曰く「リベラル」)と、それを擁護し続けた一部マスコミへが受けるショックについて思いを馳せてしまう。

 自民党一強状態に陥った理由は、民進党の政治能力が低かったことはそのとおりであるが、むしろマスコミがリベラルとして擁護する左派が心地よい夢想状態から抜け出せず、現実路線を一切提唱できなかったことにあるのだと感じている。
 日本が成長している(あるいは国民がそれを感じている)様な時代には、実現しない夢を語ることに賛同する人も多かったであろう。だが今は時代が異なる。日本は単純に努力をすれば成功するという世界には生きていない。その事実を多くの国民が何となくではあっても感じているからこそ、一部の宗教的な左派信奉者以外は離れて行こうとしているのである。

 だが、小池氏が率いる希望の党も実質的には結党時の民主党と大して変わらない状況にあるのも事実であろう。小池氏は、都知事として結果を残すどころか混乱を助長してきたに過ぎない。だが、自民党一強を苦々しく思うマスコミが彼女を持ち上げたことによりこれだけの影響力を得るに至ったのは、まだまだマスコミの力は侮れないものだと感じさせてくれる。
 だが、それもテレビや新聞をまだ信じている世代が選挙権を行使するあと10〜15年くらいではないかと思う。ネットなどを活用した一定以上のリテラシー能力を有する世代は、既にマスコミの煽りでは容易には踊らなくなっているのだから。

 確かにモリカケ問題で一定の成果を見たかもしれないが、もう争点として色褪せかけていることは多くの人も感じているであろう(夢をもう一度と考えるメディアと一部政党はまだ言っているが)。全ては安倍政権一強を崩すための戦略であることは言うまでもない。
 でも本当に安倍一強状態を崩したいのであれば、行うべきは奇策ではなくより説得力のある政策提示であるべきなのだ。それができないということは、政治的には敗北状態にあることでしかない。そして、「リベラル」と呼称される政治勢力には現状その力を有していない。少なくとも多くの国民を信じさせることには成功していない。むしろジリ貧であり、だからこその今回の政治ショーであろう。

 そもそも、小池氏は安倍総理よりも保守的な面の強い政治家でもある。安倍一強崩しの可能性に一瞬歓喜したメディアがそれを持ち上げようと動いたが、それほど時間を置かずとも冷静さを取り戻すだろう。安倍も小池も自分たちの考えとは全く違う政治家なのだということに。既に掌返しの兆候はかなり見え始めている。強いて今後も支持を継続する可能性を考えるとすれば、日本初の女性総理というブランドを追いかけることくらいではないか。
 ちなみに言えば、私は小池氏の政治家としての能力は大して評価はしていない。メディア戦略などは、女性という有利な部分を活用して上手くこなしているようだが、政党を率いるという能力はほとんどないであろう。だが、それができなければ結局のところ政治家としては大成できない(小泉純一郎という稀な例はあるが、それも自民党という盤石の政党内であったからである)。

 既に、若狭議員が今回の政権交代は難しいと発言しているようだが、小池総理の目は今回一気に目指さなければないと思う。少なくとも小池総理という夢が無ければ国民は大きくは動かない。ギリギリまでカードは温存するであろうが、小池氏が総理の夢を見るのであれば今回の出馬は必須だ。だが、都知事を放り出すことになるためこれまた難しいであろう。
 都知事の重要性を卑下するつもりはないが、小池氏は都知事という地位で満足すべきだと思う。都議会圧勝という一時の風が彼女に過分な欲を抱かせたとすれば、ひょっとすると新党バブルの崩壊はかなり早いかもしれない。風を読める彼女は、その時には早々に代表を退くのではないか(都知事に専念するということで)。

 さて、この小池バブルに乗って落とされるのはマスコミであろうか、それとも哀れな政治家たちなのだろうか、あるいは踊り好きな国民か。