Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

浮動票は民主党には戻らない

 今回の衆議院選挙において、YAHOOの分析によれば投票率が高まった方が自民党などの政府与党が議席数を増やすというものがあるようだ(http://docs.yahoo.co.jp/info/bigdata/election/2014/02/)。その精度や真偽のほどはなんとも言い難いが、個人的感想では共産党の伸びが大きいとされる現状の報道はある意味しっくりくる。
 民主党が政権奪取した時、多くの国民は「自民党にお灸をすえる」といった趣旨を唱えながら民主党に投票したことは記憶に新しい。多くは無党派層が行動を起こしたことでもあるが、更に言えば元々強固でない自民党支持層も雪崩を打って大きかったであろう。
 これは、未知なる政党に期待するという意味合いが大きかったことは誰もが知っている。その結果、国民の心は民主党から離れた。スローガンのみの稚拙な政治手法、不明確な行動原理、その上で実質的に官僚任せの政治。元々保守政党を支持する者たちは回帰し、無党派層は見限った。

 強いて言えば、この前民主党にお灸をすえる意味で民主党以外(おそらく維新やみんなの党)に投票した人たちの回帰は見込めるだろうが、その数は議会における勢力を躍進させるほどのものにはならない。今回の選挙が突然の解散によるものであったため、それを理由として自らの力のなさを誤魔化そうとしているが、最も重要なことは民主党の執行部が無様な政治をしていた時と何も変わっていないことが問題なのである。
 変わっていない民主党をたった2年で許すほど国民は寛容ではない。少なくとも執行部一新でもすれば多少は反応が変わる可能性もあっただろうが、今の執行部にそのつもりはないようだ。それは、これほどの状況を続けながらも海江田体制が継続していることからもわかる。

 期待が裏切られれば、それは嫌悪や憎悪に変化する。好きな相手に裏切られても信じ続ける愛情もあるが、その割合は少なくない。さらに言えば、良いところが目新しさであったり可能性であったとすれば、多くの人は自分のみる目のなさに落胆したことであろう。
 いや、その落胆を自分のせいと考えるような訳もなく、その責任は民主党に無意識のうちになすり付けられている。投票行動自体は国民の権利であり義務でもあるので、指示した政党の失敗は国民の選択ミスでもあるが、そのことを皆が受け入れられるほどできてはいない。
 そして、非難・憎悪の対象となった民主党はどれだけ訴えかけても反応が薄い状況に戸惑い続ける。

 繰り返しになるが、民主党が勢力を回復したければ現在の執行部を刷新する必要がある。新しいメンバーの質も今後の支持に影響するのは間違いないが、それ以前に今の執行部メンバーは多くの国民に拒絶反応を植え付けてしまっていることを自覚すべきであろう。
 これは政策的な能力や実行力があるかどうかという話ではない。むしろ、生理的嫌悪感にすら近いような根源的なところからきている。その原因は国民が自ら採った投票行動の結果を受け入れられないことではあるが、仮に受け入れたとしても多少は冷静になるであろう点を除いて今回の衆議院選挙の状況は変わらない。

 今でも風が吹けば民主党が躍進するのではないかと言う淡い期待を抱く者たちも一部にはいると思うが、残念ながら現状のままの民主党ではそれはないだろう。今回、現時点で自民党の圧勝が語られている理由は、裏切られた民主に代わる政党が存在しないことがある。
 みんなの党は解散し、生活の党も数を減らし、維新の会も分離融合を繰り返しながら民主党に近づいているように見える。民主党もどきが増えても、それに投票するほど国民は甘くはない。かくして、投票先に困った者たち(無党派層)は棄権する(投票率の低下)か、もしくは批判票として共産党を応援するか、あるいは自民党の方がまし(消極的選択)しか取ることができなくなっている。
 企業が次々と新たな商品を投入する姿に真似る必要はないのだが、一度ケチがついた商品に回帰する可能性はかなり低い。ついたケチが誤解によるものならまだしも、誤解でないと国民が認識している限り主要メンバーの総替え以外に手はないと思う。変えたからと言ってすぐに結果が出る訳ではないが、しないよりはましと言う程度である。
 執行部を退いた現在の主要メンバーも、再登板の可能性が無いわけでは無い。民主党が再び支持を得るようになれば、経験や役割を求められることもあろう。ただ、政党の顔としてではなく政策を練り上げる主要メンバーとしてまず尽力することが必要ではないか。

 もっとも考えなければならないのは、リベラル政党としての自らの基盤を再認識することである。本来リベラル政党であるのであれば、消費税増税を打ち出すことももっと慎重であるべきだっただろうし、やるべきことは他にも数多くあった(http://synodos.jp/newbook/11954)。結局、政治家個人個人の能力の低さが政党としての能力の低さにつながり、官僚の勧める方向性を鵜呑みにしていっただけに終わった。
 顔がない限り支持を取り戻すことはできない。下野したこの2年、結局批判のための政党になってしまったことも国民はきちんと見ている。再度の政権を委ねるに適しているかどうかは全て見つめられている。結局、今回の選挙に関して言えば民主党に風が吹くことはない。マスコミがいくら扇いだからといって、風は別のところに送り込まれてしまう。