Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

消極的支持

 自民党を含む与党が衆議院選挙において3連勝をした。左派メディアは、自民党は勝ったが安倍政権が信任されたわけではないとか、消極的支持(自民支持根強い若年層 目立つ消極的選択 衆院調査概況:http://www.asahi.com/articles/ASKBB5DMZKBBUZPS007.html)であるとかいろいろと書いてるが、極めつけは選挙制度がおかしいと言ったようなものであろうか。正直くじ引き論(http://www.asahi.com/articles/ASKBM2RC1KBMUCLV002.html)にはドン引きであるが、そこまで書かなければ自分たちのルサンチマンを解消できないのかと考えると少し気の毒になって来る。

 まあ、左派メディアや左派系の知識人が国民の考えや認識をきちんととらえられなくなって久しいが、現状ではBESTではないもののBETTERを選択するという行動を国民が取っていると思うのだがどうだろうか。それは言い換えれば「消極的支持」と呼ぶこともできる。左派メディアが喧伝する「消極的支持」とはBETTERの選択であるということではないのだろうか。仮にだとすれば、何ら可笑しな話ではない。国民はきちんと状況を理解して、BESTがいない中でのBETTERを選択してるに過ぎないのだから。
 BETTERの選択肢に野党が挙がらない理由は私が敢えて書くまでもないが、メディアが仕掛けた「モリカケ」問題という総理の首を取るには全く証拠の不足した問題に拘泥したことが一因としてあろう。国民は野党に政権運営能力がないと看過しているのである。

 同じようなことはテレビ番組で田原総一郎氏が激怒したというネット上で話題になった内容にも見られる(http://netgeek.biz/archives/105127)。私はその番組を直接見た訳ではないが、個人的印象として政権を引きずり落とすことを、政策論議ではなくスキャンダルのみに頼る様な野党が信頼出来るとはとても思わない。だから、ジャーナリストである田原氏が何に激怒しているのかが全く分からない。
 私も安倍政権の経済運営については、賛成できない点も多く持っている。アベノミクスについても第三の矢などは幻想に過ぎないと思うし、それを錦の御旗に掲げても無駄だとしか思わない。現状景気指標が上向きなのは、循環景気や団塊世代の引退による労働力の枯渇が最大の理由だと思う。そもそも安倍政権は、内政ではなく外交で支持を得ているという状況であろう。

 だが、では野党がそれ以上の結果を残せるかと聞かれれば、非常に難しいと答えざるを得ないのが実際だと考えるのだ。そもそも野党が掲げる政策に一貫性や説得力があれば、国民は消極的ではあっても支持すると私は思うのだ。兎にも角にも、政権打倒のみが目的化している政党にこれからの国の運営を託したいとは全く思わない。
 もちろん、安倍政権の人気に胡坐をかき驕り始めた自民党の政治家たちには私も嫌悪感を抱く。他者の人気を自分の力だと勘違いするなという気持ちは少なからず持っている。だが、それでも野党に政権運営を任せたいとは少しも感じない。それは政策論議が実質的に為されているとは思えないからである。

 微細な部分での議論はあろう。だが、野党が日本をどんな未来に誘おうとしているのか。曖昧な観念的な議論以外には量り取れない。これは自称リベラル(左派とは呼ばれたくない人たち:https://togetter.com/li/1163624)の主張と大きく重なる。昔ながらの理想論しか掲げることができず、現実的かつ具体的な提案を国民に魅せることができない人々なのだ。
 そして、時にはそれを見せられないことを国民の理解不足であったり、あるい「見ている世界が違う(https://mobile.twitter.com/levinassien/status/922232689981132802)」と言ったりしてしまう。だが、現実に見えている物は同じであり、見えないのは見えないようにしているからに過ぎない。

 確かに理想論は甘くて美しい。私も愛国主義の行き過ぎた言動はくだらないと思うし、それを賛美したいとは思わない。だが、同時に甘い幻想に溺れたくもない。それは一種、原理主義に陥ることに等しいからである。自分が正しいと考えることは容易でかつ甘美である。だが、常に自分の思考と現実の差違を認識し考え続けるとすれば、仮に理想の姿とは異なったとしてもそこに至る過程として現実を受け入れなければならない。まあ、私の考える理想は左派思想家や識者のそれとは異なるのだが。
 世界は徐々に統合に向かっていると私も思う。だが、そのためにはまだ何十年、いや百年以上の時間が必要だと私は認識している。それくらいに、文化や習慣の違いは世界中で大きい。融和を抱えるのは悪いことではないが、融和を強制したり前提に掲げるのは現実的なステップを考えると誤りだと思う。
 多くの人が考える考える以上にずっと世界は複雑で、それを平滑化するには時間が必要なのだと私は考える。少なくとも私が死ぬ前にそれが容易に実現するとは思わない。人間とはそれほどに単純なものではないのだ。

 さて、メディアが報じる支持政党を見ると若年層では自民党が多いと出ている。以前より書いているが、現在のリベラルを自称する(あるいはマスコミが呼称する)政党は、私からすればむしろ旧主派に見える。現状をあまり変えたくないメンバーである。現状を変えないようにしながらも、夢だけは語り続ける。その夢に至る具体的な道筋は語らないままに。
 そして、そのような曖昧な方法論はネットにより数多く論破されている。若者たちは、一部間違いながらもメディアの喧伝する心地よい言葉には惑わされなくなっているのが現状であろう。少なくとも、彼らは情報入手の選択肢を持っているのだ。そしてBESTではないと理解しつつもBETTERを選択する。それを消極的支持と認識する限りにおいて、メディアは現在手放ている民意を再び手にすることはないのだろうと思う。