Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

地盤のひずみを人工的に解放する

 スロースリップ地震http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97)というものがあるが、これはマグニチュードが大きくとも人々はほとんど揺れを感知することはない。ただし、人々が関知できなくとも巨大な津波を引き起こす可能性があると言うことでは、注意すべきものでもある。

 地震にはいくつかの種類があるが、非常にアバウトに分類すればプレート境界部分で生じる巨大地震と、プレート内部のある断層のずれにより発生する直下型地震になる。プレート境界は、よく模式図により示されるような線であらわされるものではなく、面により構成される。その接点は海溝と呼ばれる深い沈み込み部分を有しているが、太平洋(フィリピン海)側から日本列島の下に向かって沈み込んでいると考えられる。その接点(実際は面の一部)において生じるのが東日本大震災や東海沖・東南海・南海地震と呼ばれ警戒されているものになる。
 さて、マントルの対流により地殻を構成するプレートは常に動き続けており、異なるプレート同士の接する部分に摩擦力が生じたまったひずみが解放されることで巨大地震が発生すると考えられているが、上述のスロースリップなどはこのひずみの解放が急激ではなく時間をかけて行うことから巨大な地震にはなっていない(津波はそれでも生じる可能性がある)。
 要するにゆっくり動けば日本列島も地震の脅威を考える必要がないことになる。

 さて、阪神淡路大震災中越地震などにみられる内陸における直下型地震は、こうしたプレート境界型の地震とは発生機構が異なるが、プレート内にたまったひずみが断層を突き動かして地震に至るという意味でいえば、原因は同じようなプレートの移動に帰着できる。
 もちろん非常に複雑な地盤構成があるので、仮にプレート内のひずみが大きく増加しなくても地震が生じないとは限らない(火山活動等によっても地震は生じるし、地盤内へのひずみもたまる)。しかし、それでもプレート境界におけるひずみの蓄積が大きく減じられたとすれば、直下型地震の発生確率も大幅に低下するのではないかと思う。

 これまで、私たちは地震の発生を可能であれば予測して、そのために建物や橋などの社会インフラの耐震性を高めるというところに努力をしてきた。無論、日本という自然災害の多い場所ではこうした体制を敷くのは至極当然のことでもある。
 ただ、現状に至りこれまで考慮してこなかったような断層への配慮や、複合巨大地震への配慮まで行うようになり想定時地震のインフレが生じているような気もしている。最大の地震に対応することは当然なのだが、もはや地層としても判別が容易ではない数十万年前の断層まで加える判断を考えたとき、過去の直下型地震の半分以上は未知の断層で発生していることを考えれば断層探しのいたちごっこが生じるのではないかと思う。もちろん、リスク軽減のためにこうした調査は必要だろうし意義を認めないわけではないのだが、日本列島のどこに安全と言える場所があるのかという神学論争に突入してしまうのではないかと考えるのだ。

 私は地震学の専門家ではないが、ふと思うのはすべての原因がプレート間の摩擦力によりたまってしまうひずみの蓄積にあるとすれば、それを徐々に開放するという方法論は検討に値しないのであろうかという点だ。もちろん、現在の技術や知見ですぐにできるとは思ってもいないが、こうした研究を進めることで地震軽減が図れないかを検討する価値は現状高まりつつあるのではないかと思うのである。
 人工地震などと言えば陰謀論としてよく出てくるが、現実には爆弾等で容易に地震を引き起こせるわけではない。ひずみがたまっている部位を明確に特定して、ピンポイントにそれを実現できなければ難しいであろうと思うし、仮にそれが特定できても地震の規模との違いは非常に大きい。
 しかし、別の知見でいえばプレートの沈み込みがあっても地震がほとんど生じていない地域も存在する。その理由として海水が潤滑油の役割を果たしているという考え方もあるようだが、正確なところはわかっていない。爆破によりひずみを開放するというのは現実ではないが(http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/case311/home/docs/earthquake/1104081432/index.html)、粘性体などを地盤内に注入することで徐々に地盤内に蓄積しているひずみを時間をかけて解放していくという手法はとれないのかと思う。その素材として海水が想定されて研究された事例もあったと聞く。
 もちろん、これが原因になって巨大地震が誘発されるようなことがあってはならないので、詳細な研究や検討を踏まえての話であることも言うまでもない。

 あくまで個人的な思い付きレベルであり実現性があるかどうかもわからないのだが、1000年に一度の地震を想定してガチガチに防御しても被害が軽減できないような想定が出るのだとすれば、その根本原因を100年単位で軽減するという対策があっても良いと思うのだがどうだろう。