Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

コンフェデ日本対ブラジル

 力の差を見せつけられた試合であった。その差は余りにも大きく容易に埋められるものではない。と言ったことは多くのマスコミが書いていると思うが、私は日本の攻撃の引き出しが少なくなったことが今回の結果を生み出したと思う。ここ1年くらいの日本代表は決して調子が良いとは言えない。W杯予選でも中東の格下チームに敗れているし、その他の試合を見ても一時の好調なチーム状態とは程遠いように見える。しかし、これはチームとしての攻撃の引き出しを増やすことができなかった結果に過ぎない。
 日本代表チームの個人レベルの力でいえば過去とどちらが強いかは様々な意見もあるだろうが、現状も決して弱くはないと思う。むしろ数多くの選手が海外でプレーしている現在の方が、経験という面では優れている。もちろん、だとしても個人レベルでブラジル代表の選手に個々が勝てるとは誰も思っていないであろうし、私も歴然とした差があるのだと思う。
 むしろ、かつての日本はチームとしてのプレイの幅でよい試合をしようとしてきた。個々の力で劣ることをを認めた上で、それを以下にカバーして差を埋めるかに腐心してきたのだ。

 今回の試合では、ブラジルの攻撃力が予想通り高かったこともあるが、それ以上に守備力の高さが目を引いた。日本の欠点は最近の試合では(というか少し前から)ずっと、早いチェックに来られた時に攻撃の形を作ることができていないことにある。加えて、今の日本代表には速攻というスタイルがほとんど見られない。これは、日本代表個々のレベルが上昇したからという面もあろう。弱い相手に対しては、自分たちのオーソドックスなスタイルを貫くだけで勝てる力を得たのである。
 だから、アジアレベルでは当然そのような試合展開になる。ただ、それでも素早いチェックから攻撃の起点をつぶしに来られた時には常に苦戦している。こうした守備に対する攻撃の形がまだ全く出来上がっていない。

 かつては、アジアであっても優位さを保ちきれなかった日本は、その戦いを勝ち抜くうえで様々な攻撃バリエーションを使い分けることで、戦略を優位に進めようとした。今は、個人の能力が平均的に上がったのかもしれないが、攻撃のバリエーションが極端に少くなった。いや、前線までボールを運べればその先のバリエーションは豊富なのだが、そこに至るまでのパターンが少ないのだと感じている。だから、いつも同じような形でゆっくりと攻撃を組み立てている雰囲気が感じられる。
 これはある意味では王様サッカーであるが、それを格上のブラジルにぶつければ負けるのは当然であろう。弱い側は弱い側なりのサッカーをしなければ勝ち目はない。今回の敗戦は、そのことを実感させられる結果となったと思う。

 前回のワールドカップでも、日本の前評判は決して高くはなかった。逆に言えば日本と対戦する国々は、日本の攻撃を封じ込めるような戦いではなく力でねじ伏せる戦い方をしてきた。今回のブラジルは結果的には力で日本を叩き伏せたようにも見えるが、日本の優位な部分を確実に抑えにかかっていた。
 個のレベルで高いブラジルの選手が、早い段階から激しいチェックをして日本の長所を消してきているのだから、日本が苦戦するのは当然のことだと私は思う。

 昨年フランスで行った親善試合でも日本はブラジルに4対0で大敗した。結果でいえば今回も似たようなものだが、私は中身としてはかなり異なると見ている。日本は、当時よりは明らかに善戦したと個人的には思う。しかし、前回戦い方を少し変えればもっと近づけると思ったであろう判断はまだまだ甘かった。日本は戦い方を変えきれていないし、保有する攻撃のバリエーションも広げられていない。

 最初から勝てる相手だとは思っていなかったが、相手と自らの立ち位置に関する認識が甘かったというだけであろうし、それは攻撃のパターンを広げきれなかったザッケローニ監督についても言える。
 日本代表は確実に強くなっている。それは間違いない。ただ、まだ王様のゲームをできるようなレベルにまでは達していない。その当たり前のことを確認させられた試合であるし、そのことを甘く見ていたことを反省させられた試合でもあろう。

 日本は、DFからのボトムアップにおいて攻撃の組み立て方のバリエーションをもっと広げなければ、日本対策を真面目にしてきた国には敵わない。ましてやそれが強豪国となれば勝負にすらならない。今日本に不足しているのは意外性と変化であり、それを実行できる選手であろう。