Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

モイーズと朴槿恵

 別にこの二人に何か含むところがあるわけではないが、立場上引くに引けなくなっている状況が似ているようにも感じており、その境遇に同情を禁じ得ない。モイーズとは、サッカー日本代表香川真司選手が現在所属しているイギリスプレミアリーグの雄である、マンチェスターユナイテッド(以下「マンU」)というチームの監督である。今シーズンから指揮を執ることになったが、香川選手をはじめとする一部の選手の起用方法で物議を醸している。自ら信じるサッカースタイルが現時点ではチームと馴染んでおらず、思うような結果が残せていない状況である。
 ここ数試合は調子が良いようなので一時的にはバッシングも止みつつあるようだが、少し前には他のチームのサポーターから絶大な支持を得ていた。要するに、昨年の優勝チームである強豪マンUが弱体化することは大歓迎という意味である。この状況を覆すには、監督としての力量を発揮してチームの勝利を積み重ねるしか方法はないが、現状はまだまだ先行き不透明な模様だろうと感じる。

 後者は言うまでもなく韓国の現大統領である。父親も大統領であったが、元日本軍の軍人であったということから親日的ではないかと厳しい評価を受けており、それを覆すためには日本に対する一切の妥協ができない状況に追い込まれている。
 それが全てではないかもしれないが、日本の安倍総理が対話の扉はオープンであると常に公表していても、日本側の姿勢が変わらない限り対話の必要はないと言い続けている。それを日本に向かって言うのはまだわかるが、アメリカに行って話し欧州に向かい持ち出す(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131104-00000024-jij-kr)。こうした日本との対話を拒む行動には、反日の先導を仕切っている韓国マスコミからも懸念の声が上がっているが、今さらスタイルを変更できないという思いもあるかもしれない。
 笑ってはいけないのだが、それでも面白いのはこうした朴大統領の行動を非常に好意的に評価しているのが、日本の一部ネットにおける意見であることだ。このまま朴大統領が会談を拒否し続けてほしいという意味である。「日本から摺り寄る必要はもはやない」というのがこうした言論スペースの主流な意見となっている。

 いずれにしても、敵から評価されるというのは屈辱以上のものではないような気もするが、自らの存在義意を際立てようとする行為が評価対象なだけに何ともやるせない。前者はそれでも信念を貫いて結果を出しさえすれば展望も開けるのだろうが、後者にはその展望も見出しにくいだけに徒労感が甚だしい。これはまでは、表向きは強硬な姿勢を見せていても、裏側では日本に媚びることでバランスをとってきたが、そのスタイルはここにきて破綻の様相を見せている。
 日本側からすれば、中国に近づきつつある韓国に対して助け舟を出す必要性がかつてと比べれば大きく低下していることもあって、韓国のヒートアップと比較していたって冷静に会話のチャンネルは開かれていると繰り返すだけでよい。当然欧米各国に対しても非常にわかりやすい言葉で状況を伝えることもできる。加えて、金融危機からの立ち直り状況にある欧米からすれば、現在の日本経済の復活は非常に望ましいことでもあって、わざわざ日本を叩かなければならない理由もない。
 すなわち、朴大統領の試みは大した成果を上げることができないであろうことが容易に推測できる。

 私の素直な感想であるが、チキンレースを挑みかけているが日本は無関心でそれに乗ってこない状況のように映る。無駄な努力どころか、欧米諸国は日本にむしろ同情的になるのではないかと感じる次第なのだ。朴大統領の微妙な政治的立ち位置は理解できなくないが、韓国の反日を主導するメディア以上の強硬路線は、一時的に民心を買うことができたとしても副作用はかなり大きくなると思う。裏からは、平昌冬季オリンピック等への経済協力打診の噂も絶えないが、現状では日本の世論が露骨なそれを許さないであろう。
 別に日本に摺り寄れとは言わない。ただ、IMFによるストレステストの結果はまだ公表されていないようだが、政府の借金は隠れ借金を加えるとGDP比率で130%近いことは既に韓国の中央日報が記事にしているし、逆に日本の場合には資産を差し引けばGDP比100%を切ると言われている。日本の政府の借金を揶揄することが多い韓国メディアではあるが、現実には韓国の方が苦しい事情なのである。
 こうした現状を直視したならば、関係改善に動くべきなのが本来のあり方であろうが、どうやら朴大統領にとっては国内批判の方が随分と怖いようである。そして、日本の嫌韓的なネット言論はそれを見て楽しんでいるのである。

 まあ、ネタとしては今後の新たなる展開を期待したい。