Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

武士道はゲリラに負ける

 慰安婦問題はアメリカ政府自身にも火の粉が降りかかることが見えてき始めたので、政府としては口をつぐむことになってきた感じである。日本の敗戦後に、アメリカだけでなく当時のソ連も多くの強姦や殺人を行っている。同時に、当時日本に残っていた朝鮮人も数多くの同様の行為を行っている。
 この事実に触れたくないからこそ、多くの国家はこうした行為をまるでなかったもののように扱うのだ。これは、朝鮮戦争時代の韓国でも国内的に同様のことが行われているし、ベトナム戦争時代に韓国軍が悪逆の限りを尽くしたことはライダイハン(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%8F%E3%83%B3)という言葉を調べればすぐにわかる。
 それでも、政府は語らずとも個人に語らせる状況は今後も続くであろう。国連の委員会等を含めたありとあらゆるロビーが繰り返されると思うが、日本としては感情論に流されることなく客観的な事実に基づいて対処行動しなければならない。これは、単純な正義の問題ではなく情報戦争の一環である。

 戦争時の悲惨な行為をお互いさまという言葉で済ませてしまうことは決して良いことだとは思わないが、現代の価値観で過去を裁こうとすれば必ず問題が現実との齟齬が生じてしまう。この悲惨な過去は許されるべきではないと私も思うし、それを繰り返さないために現代においてできることをすべきなのも間違いない。ただ、日本のみが悪かったように性奴隷(sex slave)などという言葉により辱められることについては、やはり日本人として看過できるものではない。
 さらに言えば、本当の問題に目を向けるつもりがあるのであれば、いまだに世界中で子供や女性が売買されている実態に触れるべきではないかと強く思う。今でも世界中で何万という数の女性や子供が誘拐され、売られ、悲惨な状況に置かれている現状がある。あるいはチベットで行われている人権弾圧や北朝鮮国内での国民の悲惨な状況をもある。こうした現在進行形のものに触れることなく、70年前の過去の方が大きく取り上げられ重要視される状況は、正直言って異常に感じている。

 さて、かつて日本は日本人のメンタリティに基づき自らの非を認めれば許容されると考えて、事実認定の曖昧さを知りながらも河野談話を発表した。その評価には様々な意見があると思うが、異論が噴出するということはそこに認識の大きな違いがあることを意味する。
 繰り返すが、慰安婦の方々が大変な人生を歩まれたことについては本当に悲惨で可哀そうな出来事だと思う。ただ、この件については韓国内では2007年に成立(2010年改訂)した「対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者など支援に関する特別法」があり、韓国政府が補償を行うことになっていると聞く。それは韓国政府が日韓基本条約を順守する義務を負っているからでもある。逆に言えば、日本から補償を勝ち取るといった動きは韓国内では正式に言えばこの法律に反することでもあろう。

 それでも、現状日本は世界的には不利な状況に置かれている。情報戦に正直に立ち向かっているのがその理由ではないかと思う。これは武士道(あるいは騎士)がゲリラには勝てないことと似ている。自らにルールを課すものは、ルールを無視する者たちには一対一では通常は勝つことができない。むろん、力に圧倒的な差がある時にはそれでも勝てるかもしれない。そして、漫画や映画の世界では恒常的にこうしたことが可能かもしれず、またその強さに多くの人は歓喜する。
 だが、おそらく大部分の場合には武士道はゲリラには勝てない。この場合の勝つ負けるは個々の戦いのことを言っている。戦術レベルでは、武士道スタイルはゲリラスタイルには敵わないのだ。だからと言って、ゲリラスタイルが総合的な優位性を誇っているとも言い切れない。国際社会において、信用は何よりも大切なことでもある。ゲリラスタイルはこの信用を勝ち取れない。だから、短期的な個々の勝利を収めることは可能かもしれないが、だからと言って総括的な勝利を得ることは困難である。

 日本は、ゲリラスタイルの攻撃に対して日本全体が同じように応じる必要はない。政府はこれまでのように日本の価値を貶めない冷静な対応が必要である。業を煮やした韓国などは、政府そのものまでがゲリラスタイルに加担しようとしており、おそらくそれを続ける限り世界的な信用を勝ち得ることはないだろう。
 ただ、戦術レベルでの劣勢を跳ね返すためには、今回の橋下市長をはじめとする政府以外の人間が言うべきことを言っていくというスタイルは一つの方法論なのかもしれない。むろん、日本のメディアも叩くだろうし、世界的にも反発するところは多い。しかし、日本の発信力のある一部が強く問題のおかしさを主張し続ければ、感情論だけではなくその根拠について調べるところは増えてくる。日本は昔から感情論ではなく事実関係で判断すべきだと主張し続けてきた。ただ、それが取り上げられなかっただけである。
 間違ってはならないのは、政府はこのたくらみに関与してはならないことだ。仮に内心は同意していたとしてもだ。

 それにしても、韓国はいったい何がしたいのかが全く読めない。日本の経済力を必要としているのは韓国の方なのに、相変わらず日本を責め立てることで援助を引き出そうと続けている。潮目は明らかに変わった。その戦法は彼ら自身の首を絞める。加えて、世界に慰安婦問題での戦線を広げていけば、一時的には誰もが同情するがその先にはどこの国もがふれたくない内容が広がっている。その結果が、最後の非難がどこに向かうかは明確ではないか。仮に日本を貶めることに成功しても自国の価値が高められることなどありはしない。短絡的にはわかるのだが、長期的な戦略が見えてこない。すべての戦略は日本側が引くという前提で組み立てられている。
 これまでのように日本が沈黙を保つうちは感情論のみで攻められるであろうが、一旦日本が反論を始めれば自らにも火の粉が跳ね返ってくるのだ。世界に国々からすれば二国間の争いから火の粉をまき散らされることは迷惑千万だろう。橋下氏はアメリカへの火の粉を広げようとした言動でミスをしたと思う。迷惑さは韓国側から広げさせるようにすればいいのである。日本側は、それなら過去のすべての類似の事項に話を広げるよと裏側で囁けばいいのだから。