Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

事大が生み出す新たな断絶

予想通りの結果と言って様だろうが、韓国は靖国神社放火犯を日韓の犯罪人引渡条約を無視して中国に引き渡した(http://sankei.jp.msn.com/world/news/130104/kor13010414190006-n1.htm)。
事実関係のみから言えば、上記引渡条約は例外規定として政治犯を認めているが、放火犯という実際の事件を起こしているこの犯人を政治犯と認定するのはかなりの荒技である。政治的にそれを求めることができなかったため、裁判所という司法の手を借りてその認定を行った。韓国の裁判所(あるいは担当した裁判官)がどれだけ世論や政府の圧力に影響を受けたかはわからないが、司法は政治犯の認定を行い犯人は中国に送られた。
むろん、普通の状態で韓国がこのようなとんでも無い判断を下すはずもない。現実に、中国政府が犯人を日本ではなく中国に引き渡すように露骨に韓国に圧力をかけていたことがある。それは、一種の踏み絵を韓国に迫ったとも言えなくはない。条約をねじ曲げて解釈してでも中国に従うかどうかと言うことである。韓国は正当な判断だと強弁するであろうが、国際的にこの判断が支持される可能性はそれほど高くない。単に政治的な主張のみで日本から追訴されている訳ではないからだ。
政治的な問題を抱えていたとしても刑事事件を起こしている場合は、普通に考えればそちらが優先する。そして、そもそも政治事件としているがあくまで犯人の勝手な主張(祖母が慰安婦であった)によるものであり、その事実関係すら明らかにはされていない。司法の手で政治問題だと認定するとすれば、本来このあたりが明確になっていなければならないはずだが、この点において犯人の供述が唯一の証拠として認定されてしまっている。考え方を変えれば、原告である日本政府の意見を無視して被告である犯人の供述のみが採用されたと言うことだ。これが正当な裁判を経て政治犯として認定されたと言い切るのが苦しい一つの理由である。

さて、愛国無罪は日本で犯した罪にまで及ぶことを今回の韓国の判断は明確にした。日本で罪を犯しても、祖国に逃げ帰れば許されるのだという認識を多くの人に植え付けたのである。もちろん、それを支える愛国的な(あるいは彼らの言う政治的な)背景が形の上だけでも必要なのはその通りだが、その真実性については追求されないのだからあまり意味を成すものでは無い。そして、今回の犯人はおそらく中国に帰ると英雄的な出迎えを受けるであろう。もちろん、それは一過性のものでこの犯人の将来が保証されるものでは無いが、多くの中国人は売名のメリットに気づくはずである。
韓国としては形式上は中国の脅迫に屈した形ではあるが、結局日本と中国を天秤にかけて中国を選んだに過ぎない。その上で、今回の出来事は李明博大統領の竹島上陸など以上に日本側としては恐れを抱くに余りある事実だと言えるだろう。なぜなら、彼らは制限付きではあるが愛国無罪を日本で行う先行事例を得たのだから。
日本としては国内の安全を確保するためには、中国や韓国人に対する警戒を高める他はない。もちろん、それが人権侵害や差別だという声は高まるかも知れないが、このような事例がまかり通れば警戒をせざるを得ないのは間違いない。なぜなら、国と国が結んだ条約が守られないのである。その他の約束事が守られるという保証が一気に現実味を失ったのである。
とりあえず、それがビザの厳格化などの方向性で出る可能性があると思うのだが、日本にとっても観光客の減少により経済的なマイナスはあるが、おそらく中国や韓国にとってもそれ以上に厳しいものとなる。日本という一定の地位を持つ国が、中国や韓国は信用できない国だと認定するのだから。
信用できないという意味では興味深い記事があった(http://wpb.shueisha.co.jp/2013/01/04/16399/)。知っている人には当たり前の話でもあるが、日本にある古美術が盗まれて韓国で売られたり国宝認定されたりしているというものだ。出典は朝鮮半島由来の美術品ではあるが、正規の方法で日本人が所持することになったものがほとんどである。盗まれたことを訴えて鑑定を依頼しても、警察も関係団体もまともに取り合わない状況は、結局のことろ韓国社会の歪んだ心情を露呈していると言っても良い。この内容についても、政府を通じて公式に抗議(あるいは調査依頼)すべき問題だと思う。

今回のケースで中国としては、自らの影響力を韓国というテストケースを通じて確認した程度のことであろうと思うが、今回の出来事が引き起こすと考える内容は決して軽微ではない。特に韓国にとってはこのダメージはじわじわと効いてくるのではないかと思う。
条約を守れない国だというレッテルを貼られるのだから。