Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日韓関係雑感

 釜山総領事館前に慰安婦像を設置したことに対する日本政府の反応に、韓国内は上へ下への反応を見せている。今回の政府措置に対する私の評価は「妥当である」というものだ。十分に抑制のきいた、しかし明確に日本としてのメッセージを発しているものだと思う。実際、朝日新聞毎日新聞東京新聞をはじめとしたリベラル系と目されるメディアでさえも、日本政府への寛容性(対応が厳しすぎると)を説きはするものの、韓国政府の対応には苦言を呈してる状況(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017010702000157.html)である。但し、私は日本政府はこれまでも既に十分配慮してきていると考える。

 かつて、私も幾度となく韓国や中国の反日について考えを書いてきた。
・韓国のサイレントマジョリティhttp://d.hatena.ne.jp/job_joy/20120910/1347217377
・韓国のせいで困った中国(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20120915/1347681389
反日の敗北(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20150618/1434634807
・希望と反日http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20150620/1434811739
 韓国の反日が、憲法にすら意趣が込められていることについては、既に多くの人が説明しているのでここでは触れないが、日本以前に実質的な支配を受けてきた中国に対しては日本ほどの反中姿勢を見せていないことに反日の本質があるのだろうと思う。
 確かに併合時(戦時)の記憶を持つ人たちが多く生きていた時代には、反日は個人の感情の集合体として強い意味を持っていたかもしれない。しかし、その後韓国の政府やマスコミたちは、寛容な日本からの譲歩を引き出すために反日を利用し始めた。反日教育と呼称されるものもその一つであろう。もちろん、日本からすれば反日教育と見えても、韓国からすれば「反日」などというラベルではなく通常の愛国教育ということになるので、反日など存在しないと強弁するケースは多い。
 私は韓国の反日には、かつては実体験や苦境からの感情的は反発に根付く反日があったが、今ではプライドと嫉妬の入り混じったかなり複雑な感情を根拠にした作られたムーブメントの側面が大きいと思っている。もちろん、親日を断罪するという社会的な空気がそれを圧し留められない異様な状況が存在した上でのことである。

 現在問題となっているのは、韓国をリードする権力者たちが自らへの不満を逸らす理由で反日政策(報道)を推進し、それを国民の意見だと外交上利用し続けたことの後始末である。反日をツールとして理解した上でハンドリングできていた時代には、外交上の押し引きの道具として活用できたであろう。だが、その期間が長すぎた。ある意味日韓の予定調和的な政治パフォーマンス(もちろん、共産圏に対する防波堤としての韓国の意味があるがため)だったものが、いつしか政治家やメディアが制御できない怪物として韓国政府並びに保守系のメディアに襲い掛かっているのが今である。

 数年前より、コントロールが効かなくなってきたことの予兆は見え始めていた。最初は権力者の正当性から目をそらすため、そして次は日本に圧力をかけるために用いてきた反日に対し、日本が抵抗を始めたことがある。そこには韓国の地政学的な価値の低下が最も大きな理由としてあるだろう。
 そこで、韓国は日本との二国間では圧力が上手く働かないと考え、世界から日本に圧力をかける試みを開始した。一般に朴大統領の「告げ口外交」が有名だが実質的にはアメリカ政府および国連を通じたロビー活動が主体である。実際、それにより日本は道義的な責任という形で圧力を加えられている。もちろん、そこには日本国内の現政治体制に不満を抱く人たちも大きく関与している。
 だが、この段階に来ると単純な反日行動はもろ刃の剣となり始めた。道義的な責任の追及では、追求する側に道義的な正当性が求められる。過去の問題を焦点にすることで現時点での正当性を曖昧にできるという利点はあるものの、暴走が始まればそれは自分たちに跳ね返る。まさに今、韓国政府が苦慮して実質的に日本政府に泣きを入れているに近い状況は、自らが巻いた感情という種を制御できなくなってきたことがあるのだ。

 表だって行動は出来ないものの、実質的に反日的な活動を側面から後押ししてきたのは韓国政府であり、そこに北朝鮮あるいは中国の力が大きく後押しして問題を大きく拡散している。今後韓国政府が取れる方策としては、慰安婦問題などの活動の裏に北朝鮮勢力の暗躍があった、、、という形にして収拾を図ることしかないのではないかと私は思う。もちろんそれでも、これまで韓国の権力者たちが安住するために取ってきた行動のつけは十分支払わなければならないだろうが。
 今回、日本政府は反日慰安婦像の設置)に対して経済的なカードを切った。それが通貨スワップ協議の中断とハイレベル経済協議の延期である。韓国政府としては両者ともかなりの苦境に立たされるものであることは間違いない。元々ローカルカレンシーであるウォンの後ろ盾はハードカレンシーたる円を発行している日本であることは周知の事実である。現実に韓国の経済危機の時には常に日本が協力・援助してきた。もっとも、韓国が公式にそれを評価したことはほとんどない。

 中央日報(http://japanese.joins.com/article/424/224424.html)によると

宋寅昌(ソン・インチャン)企画財政部国際経済管理官(次官補)は「現在保有中の通貨スワップが終了したわけではないため大きな影響はない」とし「通貨スワップ満期が昨年終了したマレーシアと事実上延長に合意したほか、アラブ首長国連邦(UAE)とも延長の協議をしていて、通貨スワップ規模はまた増えるだろう」と述べた。
(中略)
宋寅昌次官補は
「今後日本が望むなら通貨スワップ協議を再開することができる」と述べた。

と報道しているが、これは無理からぬことで通貨スワップ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%9F%93%E9%80%9A%E8%B2%A8%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%97)を結べないと苦境に陥るなどと正直に話せば、世界中のハゲタカからカモにされるのは言うまでもない。それこそ国家的な危機の引き金にもなりかねないことを正直に話すわけもなかろう。
 だが、アメリカが韓国とのスワップから手を引いている現在、日本のみが韓国がドルにアクセスできる唯一のチャンネルである。だから、本来通貨スワップは両国の通貨で行うものであるにもかかわらず、韓国側は日本にドルを要求している(http://www.recordchina.co.jp/a153352.html)のである。
 すなわち、日本政府の本気度は大使や公使の一時帰国で国際的には示しているが、実質的な圧力は経済的な部分といえる。問題は、韓国政府が経済的な苦境を公式に認めることはないため、国民がその重要性を正しく認識できていないことであろう。

 どちらにしても、ボールは韓国側に投げ返された(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170108-00000015-jij-pol)。韓国メディアは強弁するが、少なくとも現時点では日本の立場の方が優位である。おそらくは、今後トランプ政権へのロビー活動を通じて日本への圧力をかけるべく動き出すと思うが、こうした手法は日本政府も当然想定していると思われる。少なくとも、大統領不在の現状では本格的な動きはできないだろうから、何も決められない状況が当面続くのではないかと思う。
 日本政府側としては、日本の立場をアメリカにきちんと伝えて妙な圧力をかけられない状況を作り出す状況になるだろう。リベラル系日本メディアも、この問題で韓国政府がアクションを起こさない限り擁護できないので、当面こう着が続くのではないか。韓国経済界は忙しくなりそうだ。