Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ヒット間違い無しの商品

こんなニュースがあった。「NHK、受信料7億3700万の支払い求めホテル3社を提訴(http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120727/ent12072719120016-n1.htm)」
NHKの受信料については放送法に規定されており、NHKの放送を受信できる受信機(要するにテレビ)を持つものは法律上必ずNHKと契約しなければならないことが定められている(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/NHK%E5%8F%97%E4%BF%A1%E6%96%99)。なお受信料は家庭では世帯ごと、事業所では部屋ごとに支払わなければならないとされており、上記のニュースにおける請求額はそれを考慮したものである。ただし、事業所の場合に部屋ごとというのは日本放送協会放送受信規約(http://pid.nhk.or.jp/jushinryo/compliant_1.html)により定められたものであり、法律そのものではないことには注意が必要だろう。もちろん、この規約が総務大臣の認可を受けていることから制度上は請求に間違いはない。

とは言え、多少疑問も残る。NHKの作成した上記の規約についてどの程度議論が尽くされているかという点だ。何が言いたいのかと言えば、規約をNHKが作成しそれが総務大臣の認可(行政手続きのみ)で決められているということである。実際には放送法の改正時に国会のチェックを受けていると言えなくもないが、あくまで審議は法案そのものについてであり現実に規約の中身まで議論されているとは思えない。仮に底まで議論されるとすれば、規約の中身が社会的な問題にまでなった場合ではないだろうか。私の想像が正しいかどうかはわからないが、もしそうだとすれば規約の中身が社会問題にならない限りはNHKとそれを所管する総務省との間で決定されていると言うことになる。
さて、ホテルが実際に受信料をどれだけ負担すべきかについてはなかなか難しい。個人的には上記規約にある事業所の設置場所(部屋)ごとに全て支払えと言うのは厳しすぎるように感じる。おそらくは、ホテル業界の状況まで考慮して決められている規定ではないのであろう。それは、法律や告示という国会の議論を経なかったという面も関係していると思う。
現実にホテルが全てこの受信料を支払っているのかどうかを私は知らないが、いくつかの情報ではNHKが受信料未払いのホテルに裁判を起こそうとしたケースがあったり(ちなみに裁判前に支払われたらしい)、あるいは稼働率を考えてホテルの部屋の5〜30%で受信料を支払っているなどの情報があるようだ(これも正確なところはわからない)。率については集金人とのやりとりで決まっている部分も少なくないようで、これまでは少しでも集金できればよいと言った感じであったのではないかと想像できる。近年の受信料裁判などの強硬路線を受けてのNHKの方針転換とも受け取れなくない。

さて、受信料はNHKを受信できるTVであることが必須なので、ホテル業界などでは仮にNHKが受信できないように作られたTVを導入すれば受信料を支払う必要はない。ところがベンチャー企業などでそれをするところが出てこないのは、チャンネルが地域により異なるためNHKのみが映らないテレビを作ることは難しいためであると言われている。もっとも、法的な解釈は別にして地域別の受信パッケージプログラムを作成し、地域限定でNHK放送をブロックするシステムは技術的には十分可能である(その他にもデジタル化のメリットを使ってNHK放送を特定する方法はいろいろとあるのではないかと想像するが、検証する術を持たないのでここでは可能性のみの提示にしておく)。地域設定方式のブロックでは別の地域の設定を使用すれば確かにNHKの受信が可能となるが、地デジ化に伴い物理チャンネルが多様化しており(http://www.geocities.jp/bokunimowakaru/misc-ch.html)チャンネル設定がガタガタになるので、NHKを見るためだけにそんな使用をする実質的なメリットはほとんどない。極端なことを言えば地域限定のテレビを販売しても良い。使用地域の制限をかけるのである。個人に販売する場合であればいろいろと問題もあるだろうが、ホテル業界などでは原則として移動(引っ越し)の可能性がないわけだからそうした販売は考えられるし、無店舗で受注生産なら地域限定品も十分に対応可能であろう。そしてホテル業界という固定客を得られるとすれば、小規模なビジネスとして間違いなく軌道に乗る。テレビには地域限定NHKフリーシールが貼られることになり、NHKの集金人に提示するための証明書も添付される必要はあるだろう。生産体制についてはOEMでどこかのメーカーに作ってもらってもよい。NHKとの関係を考えると既存メーカーがそれを大々的に売り出すにはいろいろと支障があるかも知れないが、国内メーカーが難しければ国外メーカーでも構わない。
ホテルの客室数は、統計データなどによると約8万室存在するとされ(社団法人日本ホテル協会(JHA)および社団法人全日本シティホテル連盟(JCHA))、統計データはないが旅館などを含めればもっと増えるであろう。加えて、NHKを見ないという個人への販売も地域限定を個人の責任として確認した上で行えば販売数は格段の増加を見るだろう。

なお、アンテナを付ければ受信料を支払わなければならないという意見もあるが、放送法第64条第1項によれば「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」とされているので、これをそのまま捉えれば仮に地域限定とは言えど善意の利用者が受信できない設備の場合には、法律を根拠に契約しなければならないと断言するのは難しいような気もする。もちろん、その限定を外した(地域外)使用をしたり改造をした場合には契約しなければならないのは当然のことである。
ただし、こうした受信機が広がりすぎると公共放送としてのNHKの役割の完全な否定に繋がるし、現実にはNHK総務省側より新たな規制が導入されるかも知れないが、少なくとも今以上にNHKの受信料のあり方についての議論がNHK側主導の論理のみではない形で深められると思う。