Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

アメリカとイラン

 以前より、アメリカとイランの関係は非常に険悪である。その大元は、イスラエルとイランの関係性に起因すると言われるが、阿倍総理のイラン訪問は表面的にはこうした対立を交渉するには至らなかった。

 メディアの報道に依れば、トランプ大統領は攻撃開始の10分前に取りやめた(トランプ氏、イラン攻撃を10分前に中止 ツイッターで明らかに - 産経ニュース)との話もある。そして、その後もホルムズ海峡の警備問題が議論されており、アメリカ艦船がイランの無人機を撃ち落としたとの話も出ている(アメリカ軍がホルムズ海峡でイラン無人機を電子攻撃で撃墜(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース)。これは、以前アメリカの無人機が撃ち落とされた事(イランの無人機撃墜がアメリカにとって重大な理由 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)への報復という意見もある様だ。

 イランはホルムズ海峡での妨害行為を続けていると報道されている(イランの精鋭部隊、英石油タンカーを妨害 ホルムズ海峡で - BBCニュース)が、このあたりは情報戦があり正確なところは良くわからないでいる。日本のタンカーも攻撃され、アメリカがイランによる攻撃だと断定していたが、これも最終的な結果は有耶無耶の様であった。私はアメリカの報道も必ずしも信用出来るとは思わないが、イラン内部の統制が取れているかも疑問はあり、現状では何とも言い難い。

 

 さて、ほんの少し前にNHKでイギリスのタンカーがイランに拿捕されたとのニュースが出た(イラン イギリスのタンカーを拿捕 | NHKニュース)。以前より、イランがホルムズ海峡の閉鎖を念頭に脅しをかけているのはよく知られた事実である。それに対抗して有志連合による保安警備の話も出ており(原油高騰とタンカー危機、混迷するイラン情勢の行方を読み解く2つのキーワード | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)、そこへの参加についてイランが敵対行為と反発している(参加しない様に警告している)状況がある。

 

 この地域の緊張が原油価格の高騰につながるのはよく知られた話であり、中東依存度の高い日本にとっても看過出来る話ではない。一方で、原油価格の高値維持をしたいOPECやその他の産油国にとっては、緊張関係の高まりが原油価格の上昇に結びつくことは悪い話ではなかったりする。世界経済の落ち込みや、アメリカのシェールオイルの増産により原油価格は低迷方向に移行していただけに、それに国家財政を依存してる国家(例えばサウジアラビアやロシア等)としては悪い話ではない。

 

 イラン問題が難しいのは、こうした複雑な思惑が絡んでいるため、事実関係を把握するのが非常に難しいことだと思っている。更には、アメリカの大統領選挙もここに絡んでくる。世界景気が減速に傾いているのは、アメリカのFRBが好景気にもかかわらず利下げに言及せざるを得ないことや、EUも金融緩和の方向に舵を取り始めている(欧州中銀、金融緩和は必要 専務理事「道具ある」 - 産経ニュース)ことからも予想出来る。オーストラリアは既に6月入り下げを実施した(豪中銀、約3年ぶり利下げ 過去最低の1.25%に - ロイター)し、日本との葛藤が大きいため見えにくくなっているが韓国も利下げを行った(韓国、電撃の利下げ 景気減速に危機感あらわ :日本経済新聞)。いずれも過去最低水準の利率(あるいはその直前)である。過去の例で考えれば、相当の景気後退を予測している状況である。

 もちろん金融緩和慣れしてしまった世界経済の実情があり、一種の緩和競争をせざるを得ない側面はある。特に通貨防衛のために本当は政策金利を下げたくないが、経済事情がそれを許さないというのは深刻な状況でもある。どちらにしても高株価と経済状況が良好であることを売りにしているトランプ大統領としては、景気悪化は自分が評価されている面を消し去ることになるため、容易には見過ごせない。中国との貿易戦争も一気に進められないのはこのあたりの状況があると見た方がよい。

 

 さて、中国との全面戦争はさすがにアメリカとしては被害が大きすぎて行えないが、これがイランとの局地的なものであればどうだろうか。かつてより、悪を行う国家との戦争は大統領支持率に大きな影響を与えてきた。経済的な低迷から目を逸らすためにはこうしたインパクトが必要である。

 これは私の妄想に近い想像ではあるが、イランはそのためのカードとしてずっと持ち続けられているのではないかと考えている。カードとしては北朝鮮よりもずっと使いやすい。北朝鮮アメリカに届く大陸弾道弾を持てば大きな影響ではあるが、東アジア地域の安定を損なうという意味で戦争を行うメリットがどれだけあるかは微妙である。

 

 しかし、イランに関してはそうではない。きちんと状況証拠を積み上げ、やむを得ないという雰囲気を作り上げることができれば、丁度良い標的として使用出来る。もちろん、イランが可哀想な人身御供にされていると言いたい訳ではない。国際政治は様々な要因で状況が決まり、その中での立ち回りが求められる。日本も、かつては韓国の尻拭きを散々させられてきた。それをはね除ける力がなかったからである。その上で、それでもアメリカが日本を脅威だと見ていた時代には、理不尽な責め苦を負わされてきた。 ルールの範囲での反撃はできたが、ルール外のパワーゲームには屈さざるを得なかったのである。

 

 このあたりの思惑がどのように進行しているかは正直分からない。ただ、何らかのシナリオが進められているのではないかという感触を抱いている。これが陰謀論や妄想と片づけられると良いのだが。