Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

今こそ内部留保を活用せよ!

 コロナウイルスを起因とする経済悪化は、サウジアラビアとロシアの対立により引き起こされた原油の下落(サウジの無謀な行動で急落した原油相場の行方 | 素材・機械・重電 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)により加速している。原油安は、一般国民にとってはメリットもあるが、経済全体を見るとデメリットも少なくない。特にアメリカにおけるシェールオイルの開発には多くのジャンクボンド(ハイイールド債)が投入されており(米大統領、原油大量購入を表明 市場混乱で、業界支援の狙いも:時事ドットコム)、原油価格の下落によりデフォルトの危険にさらされている(原油相場でパニック売り続く、協調減産が無理ならシェールオイル潰し再開か(小菅努) - 個人 - Yahoo!ニュース)。それらを購入した投資家は損失を被り(債務問題への飛び火懸念 エネルギー社債下落―米:時事ドットコム)、別の投資資金を引き揚げて損失に充てる。私は以前より書いているように、エネルギー関係の債権が崩壊したあと、それが不動産バブル崩壊に連鎖する可能性が低くないと見ている。もちろん、政府の救済が入る可能性もあるが、政府も神様ではなく全てを救済することはできないのだ。

 最優先に救済されるのは、基本的に経済の血液を扱っている金融機関となる。すなわち、バブル崩壊時やリーマンショックの時と基本的に同じである。その上で、それ以外の企業には融資やその繰り延べ資金が提供される。これ以外に民主主義のもとでは政府が打てる手はない。あとは、自粛等により低迷する経済全体の底上げのために、金利引き下げ並びに減税や給付などを行うこと。その他細部を考えると様々あるだろうが、取れる手は限られている。

 問題は、減税や給付を乱発することはできないこと。どのタイミングでどの程度を対策を行うかが現在行われている議論の中心だと予想する。戦力の逐次投入は悪手であるが、一方でタイミングを間違えばハンドリングの手段を失ってしまう。今回の景気悪化は、これまでのように社会の一部(不動産バブルや金融機関の危機)ではなく、ほぼ全ての業界に同時に影響が及ぶ。あと忘れてはならないが、もう一つ異なるのは有効なワクチン等の対応が為されるまでの時間限定の危機であることである。この時間限定という要素が、ニュースなどでほとんど話題に上がってないのは少々気がかりだ。これは決して小さくない内容なのに。ただ、ワクチンの使用を急ぎすぎてはいけないことは、ここで触れられている(焦点:新型コロナ・ワクチンに潜むリスク、開発焦れば逆効果 - ロイター)ので注意してほしい。拙速な使用が害になるケースもあるのだ。

 

 さて、正義の味方である「ワクチン」マンが登場するまで如何にウイルス禍により広がる経済の低迷を抑止できるか。これが現在私たちに与えられている社会的命題と考えるのが妥当だと思う。その上で、企業が保有している内部留保内部留保 - Wikipedia)の活用(企業の「内部留保」史上最高の500兆円突破で起きること(磯山 友幸) | マネー現代 | 講談社(1/2))に考えを及ぼすべきだと思う。日本企業が内部留保に勤しむようになった最大の原因はバブル崩壊にあるが、その時のトラウマが貯蓄(あるいは投資)に走らせた。逆に言えば、この留保は今回のように予想外の事態(危機)があった場合に使うためのものである。

 問題は、これら内部留保を嫌々渋りながら使用するのではなく、それを活かして国内景気を維持することが求められる。内部留保とは言えど、中には確かにすぐに使えない資金はあるだろう。だが、全体として日本のGDPに等しいほどの留保があるのだから、荒っぽい意見だがこれを利用すれば日本は1年間何もしなくとも食つなげる。まあ、これはかなり極端な物言いではあるが、それくらいの余裕があるということを皆が認識すべきなのだ。

 景気は一旦悪化してしまうと、再度浮上するのが容易ではない。政府が如何に旗を振ろうとデフレから脱却できなかった過去の日本を見れば誰もがわかるだろう。だから、元の日常が戻るまで少しでも長く経済を維持し続ける。それも政府債務をやみくもに増やすのではなく、大企業が中心になって内部留保基金化して、その活用方法を考えるのだ。時間限定の災厄であることが、ここですごく効いてくる。中小企業の給与補償、母子家庭の援助、その他考えられることは多い。基金に拠出した企業は一定の法人税を免除され、あるいは寄付の様に損金計上ができる。これを政府の施策と住み分けながら共に行えば、当分の間は日本経済が大きく壊れることはない。

 

  アメリカでは、NBA選手がバスケット関係の従業員への援助を行うという話が出ていた(アデトクンポらNBA選手、シーズン中断で給与失う本拠地従業員を援助 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)。また、サッカーのスーパースターであるクリスティアーノ・ロナウド選手も自分が保有するホテルを病院として提供するとしている(C・ロナウド、ポルトガルに所有するホテルを病院として無償提供 - サッカー - SANSPO.COM(サンスポ):3/16追記:この報道はフェイクだという情報も出ているので注意が必要)。要するに、これらの大きなバージョンである。もちろん民間だけではこのミッションを全て行うことはできない。政府の強制であってはいけないが、政府と協力しながら取り組む内容を経団連等が率先して議論すべきだと思う。その上で、調整役を政府が担えばよい。

 ソフトバンク孫正義氏がマスクを配布する(孫正義氏「マスク100万枚、介護施設と開業医に寄付」宣言 既に発注済み - ITmedia NEWS)という話があった。マスクをどこから調達するのかという問題は気になるが、これ以上に社会貢献できる大きな機会である。そして、共に生き暮らしている日本国民という顧客を守る崇高なミッションにもなる。

 世界経済は、今後非常に大きなダメージを受ける。これは金融施策だけでは防げず、財政政策には限界がある。その中で、こうした方法が取れるのは日本をおいて他にはない。細かい方法論や、法律上の問題、あるいは私が気づいていない問題は具体的に考えれば他にも数多くあろう。だが、それでも一考の価値があると思うがいかがだろうか。