Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

電力会社混在案

発送電分離がよいとか、自然エネルギーの活用をすべきとか、あるいは東電は未だに給料増額にボーナスUPがどうのこうのと電力関係をめぐる議論は全く尽きない。別に議論を揶揄するつもりはないのだが、それでも議論の内容に若干の違和感を感じているのも事実である。
私としては、発送電を分離するよりも単純に電力会社の地域独占を減らすだけでいいのではないかと思う。もっとも地域独占を無くす事イコール新規の民間企業がどんどんと参入できれば良いという訳でもない。なぜなら電気は今の社会インフラの根幹でもあるからだ。それは一種、国家の安全保障の一環をも担っている。だから、私は拙速な電力自由化論議には結構懸念を抱いている。

それにしても、そもそも現在の電力会社を巡る議論は論点がごちゃ混ぜになりすぎていると思う。私が考える論点は、
原発事故を起こした東電の責任(給与・報酬問題も含めて)が如何にあるべきか。
・日本の電気料金を供給安定性を確保しながら、如何に下げるか
脱原発という大きな流れをどのように実現していくのか
この3つが大きな論点だと思っている。この3つは関連していそうではあるが、必ずしもリンクしない内容であると感じている。それぞれ様々な立場からの自由な意見があっても良いと思うのだが、ただそれを同列で論じてしまうことにより問題の認識と対処が曖昧になり、感情論が幅をきかせる事となっているような気がするのだ。

私はどちらかと言えば原発容認派である。もっとも、大きな流れとしての脱原発を図る事自体については反対ではない。気になっているのは夢と現実をごちゃ混ぜにして良いのかという部分のみだ。脱原発を図るのであればそれを実現する明確なロードマップが無くてはならない。現状では、その指針なしに感情的議論が先に立っているように思うのだ。
まあこの論点はこれまでにして、発送電分離の議論に触れてみよう。今良く言われているのが送電を分離して、発電に新規事業者の参入を容易にしようというものではないかと思う。民間企業ではあるが、公共企業でもある電力会社がぽんぽんと参入を許されるモノであっても良いのかと考えると、正直少々心許ない。例えば、同じような公益事業として水道があるが水道管維持業者を決めて、そこに自由に民間業者を参入させるということを許容できる人はどれくらいいるのだろうか。
現状では、中国が日本の水源地を買いあさっているという事自体が大きな問題となりつつあるが、人々の生命を左右する事業に容易な参入を認める事は難しい。電気の場合も審査を厳しくすればいいという事になるのだろうが、結局審査を厳しくすれば既存業者以外の参入は難しくなる。そもそも、現状でも地域独占の電力会社以外にもいくつかの電力供給会社は存在する。参入自体は今でも不可能ではない。ただ、地域全体をカバーできるような会社の参入は資本的にも実質的にはあり得ない。
歴史的にも、かつて日本国中で電力会社が乱立して停電などが頻発したと言う経験を経て、現在の9電力体制が確立したというのも見逃せない。もっとも、それにあぐらをかいての現状があるのもまた事実であって、現状を変えなければならないのもあるであろう。

そこで、非常に勝手な提案であるが少ししてみたい。例えば、電車の相互乗り入れのように、例えば60HZ地域では、関西電力北陸電力中部電力中国電力四国電力九州電力のどこからでも電気を買うことができるものとする。現実の電力は関電の発電所が作っていたものとしても、それを九州電力が仮定に販売できるとするわけだ。同じように50HZの地域間でも行えばよい。
ちなみに、電力の融通自体は多の電力会社の圏内で販売した場合、その電力会社に販売した電気量を販売した料金に応じた費用で送ればよい。原発事故後に電気の融通の議論がさんざん為されたのであるから出来ない話ではないだろう。
もちろん、電力会社同士が完全なカルテルを結んでしまえば別であるが、それを排除する仕組みは行政的には不可能ではあるまい。その上で管内の送電網の維持は担当電力会社の義務とすればよい。それを怠ることへのクレーム処理機関も用意する。その結果、電力を上手く売れない電力会社は自社のテリトリーを他の電力会社に奪われる。それは結果的に電力会社間に競争を生み出し、料金の引き下げに繋がる。

こうすれば、発送伝の分離などをしなくても競争の原理は導入できるし、現状の電力安保体制も維持できる。そして、原発反対派の人は原発を利用していない電力会社から電気を購入すればよいという自由も与えられる。
こういう議論を寡聞にしてあまり聞いた事がないのだが、なぜなのだろうか。

「急激な改革は興味をかき立てるが余分な波風も生じさせる。現状の良いところを利用しながらの方法もあっても良い。」